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スク水とメンズ・ブルマ

 誰でもいいから早く来て!


 ……と願ったものの、意外な事にその後のスク水は大人しく注文した物を貪っているだけで、人中で凶行に出たり変態的な発言をする事はなく、長くも短くもない平和な時間が過ぎた。


 ――ので。

「無事かピンクッ! スク水はどこに居る!」

 突然の声に店の入り口に視線を向ければ、そこには示し合わせて来たかのようにレッド、グレーちゃん、アイリアちゃん、果麺ライダーさんの全員が姿を揃えていた。


 あのバカっ! そんな声上げたらスク水にバレるじゃない!


 ……と叫びそうになったけど、よく考えたらラスボスの事は私達が勝手にスク水と呼んでいるだけだからギリギリバレる事はないか?

 ――と思っていたら。

「むっ? スク水とは私の事だが?」

 えええええっ! バ、バレてるーッ! な、なんかスク水がこっちとレッド達を交互に眺めながら眉をハの字に曲げてるけどなんでバレたのっ?

 ってな事はお構いなしかレッドは気前よく。

「そこかっ!」

 と言って全員を引き連れてこっちに来てくれる。向こうに逃げようか迷ってたけどみんなが来てくれるならとりあえずこのままでいいとして……。


「ほぅ? お前がスク水か……」

 もう隠す気も隠れる気もないか。どちらかと言えばやる気マンマンといった感じで私とスク水の間に立ち塞がるレッド。――に。

「如何にもだが……お前達は?」

 と。スク水からすれば突然の来訪者である私達に困惑した表情を浮かべていると。

「あれっ? この方……私達が探してるスク水じゃないですよ?」

『えっ?』

 このグレーちゃんの一言にグレーちゃん以外の全員が驚く。そんな中でグレーちゃんは冷静にスク水を指差し。

「ほら、この方は確かに両腕に包帯を巻き、頭にも包帯を巻いてますけど隠している眼が左眼じゃなくて右眼です」

 うぇ! そういやスク水って左眼隠してるとか言ってたっけ? うわっ本当だ……この人隠してるの右眼じゃん。

「えっ……でもそこに差異ってあるの? ファッションならその日の気分で隠す方替えたりするんじゃない?」

 とグレーちゃんに訴えてみるものの。グレーちゃんはスク水から視線を外さず。

「確かにその可能性もありますが――ですが。この方他にもネクタイ……着けているのが普通のネクタイじゃなくて蝶ネクタイです」

 ええっ! 確かにネクタイって言い方してたけど蝶ネクタイじゃなくて普通のネクタイって事なのっ?

「むっ? 言われてみれば確かにこいつ……履いているふんどしも越中ふんどしじゃなくて六尺ふんどしだぞ!」

 お前はなんでパッと見だけでそれがわかるんだよレッド! やはり同じ穴のムジナかっ!


 ――んでも。


 確かに私はずっとこいつの独り言を聴いていた。でもただの1度も『左眼が疼く!』とか『腕が熱い!』とか『股間がムレる!』というラスボスのヒントとなるセリフは聴いていない……。それもそもそも腕が熱い以外のセリフは隠している眼が違うし、着けているふんどしも違うから出てこないと言われればそれなりに得心が行く。


 つまりこいつはスクール水着の偽物って事!?


 いやそもそもラスボスも本物のスクール水着じゃねぇし!


 とセルフツッコミを入れていると。そんな私達のやりとりを見兼ねてかスク水(偽)が両腕を組み頻りに頷きながら口を開く。

「なるほど。話の流れから察するに、お前達は私に似た格好の人物を探しているようだな? 良かったら事情を話してみないか? 実はその人物に心当たりがあり、場合によってはその人物がどこに居るか教えても構わんぞ?」

 この言葉に私達は1度顔を見合わせると――特に反対する理由がないのでとりあえず話に乗ってみる事にした。


 ――そんなワケで全員でスク水(偽)の席に着席。


 開口一番はもちろんスク水(偽)。

「それで――。まずさっきも訊いたがお前達は何者なのだ?」

 まあ、そりゃ向こうからしたら当然の疑問よね。ラスボスのスク水なら急に正義のヒーローが来る事も想定してるだろうけど、この変態ひとが別人で一般のスク水ならそんな想定や覚悟はしてないハズ。……という忖度が働いたか珍しくレッドが冷静に答える。

「俺達は日朝にちあさに悪の怪人と戦っている戦隊ヒーローのおかず戦隊ごはんですよ(仮)だ」

 うん。若干メンバーは違うけど今そこを細かく説明する必要はないしそれでよし。

「俺達は悪の怪人を生み出す諸悪の根源となる男……つまり端的に言うとラスボスを追っているのだが、その男の特徴がお前にそっくりなのだ。だからお前を見付けラスボスと勘違いして今に至るという訳だが――お前が何かラスボスについて有力な情報を持っているなら是非教えて欲しい」

 レッドがまともに会話している事に違和感を覚えるけど、とりあえず茶々を入れずにスク水(偽)の言葉を待つと。

「ほぅ。そういう事か。因みに言ってなかったが私の名は『スク水ぬぐ』という」

 いやそんな温水さんみたいな……。てゆーか本当にスク水って名前だったんかい。

「そしてお前達が探している男。その男の特徴が私に似ているというのであれば、それは私の双子の兄である『スク水きる』でまず間違いないな……」

 双子の兄! どうりで同種そっくりな変態が2人もいるワケだ。

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