真紅の瞳
あの日、結局僕の結婚式は中止となった。
そりゃあ、そうだ。
花嫁がいないのだから。奪われたのだから。
サーシャはマルケルを選び、彼の手を握って去った。
彼らは用意していた白馬に乗って逃走、そのまま行方を眩ませた。
花嫁の消えた式場は重苦しい空気に包まれ、最悪だった。
親類には気を遣われ、知り合いには笑い者にされた。
僕の明るい現実と未来は簡単に壊れてしまった。
そして、心も破綻した。
眠れなくなり、食事も取れなくなり、働けなくなった。
花嫁を奪われたあの日から僕は約3年の月日を家に閉じ籠って過ごした。
悲しみに苦しみ、寂しさに咽び泣き、悔しさに狂う日々の中で僕の瞳はいつしか真紅に変色していた。
そして、その様を鏡で見た日から僕は奈落のような失意から立ち直った。
趣味の狩猟を友人と再開すると、僕は僕の真紅の瞳の力を認識するようになる。
この瞳が狙った獲物には矢が必中するのだ。
どれだけ大きなミスをしても、射貫くと心に決めて放った矢はまるで獲物に吸い寄せられるように対象を射貫く。
確実に絶命させるのだ。
そして、僕はこの真紅の瞳の力を自覚してあることを思いついた。
復讐だ。
僕から花嫁を奪った男と僕を裏切った花嫁に復讐する。
強く決意した。
これだけ僕を壊したのだ。
復讐は許されて然るべきだろう。
そう強く思ったのだった。




