二宮浩太郎からの挑戦状 其の四
「ねえ、さっき部屋に来た男の子って何だったの」
林原記念病院の病室のひとつ、一〇九号室の寝台で点滴を打たれながら横になっている入院患者の大川千尋が、自分のいるベッドの傍に置いてある丸椅子に座る二宮に尋ねた。
二宮はそんな千尋の問いかけに答えず、静かに手帳のようなものを眺めていた。
「ねえ、無視とかそういうの、良くないと思うよ! 教えてくれたっていいじゃん!」
「うるさいなあ。病人なんだから病人らしく大人しく寝ていなさい」
二宮が冷淡な返事をすると、部屋に県警勤務の若手刑事である堂本渡巡査が入ってきた。彼は刑事である千尋の部下であり、二宮とも過去にとある事件で関わったことがある。そして今回の事件では捜査指揮を務めていた。
「どうも、失礼します。大川先輩、調子はどうですか」
「うん、もう大丈夫。ひとしきり吐いたらすっきりしちゃった」
元気そうにそう答える千尋に渡るは愛想笑いをすると、彼は手に持っていた鞄から一枚の用紙を取り出して、それを二宮に手渡した。
「二宮さん、これが頼まれていたものです。学校のほうでコピーを取ってもらいました」
二宮は渡から渡された紙を眺めると、どこか嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、とても助かりました」
「恐縮です」
恭しくそう答える渡だが、そんな彼のシャツの裾を千尋がベッドから引っ張った。
「ねえ、何がどうなってるの。教えてよ」
「いえ、別に先輩が知らなくても大丈夫ですよ。今はゆっくり休んでください」
「ちょっとさあ堂本くん」
千尋がもう一度渡のシャツの裾を引っ張った。
「あたしはきみの上司なんだよ。部下には上司への報告義務っていうのがあるんじゃないかな」
「大川さん」
二宮がぴしゃりといった。
「堂本刑事のいう通りだよ。また気持ち悪くなって吐いたら周りに迷惑がかかります。だから大人しくじっとしてなさい」
二宮に言いくるめられた千尋は、ベッドに縮こまって拗ねてしまった。
「堂本刑事」
「どうしました?」
「もうひとつお願いしたいことがあるんです」
……さて、幸運なことに今回は死者を出すことなく事件を終えることができそうです。
しかし殺人にならなくとも犯罪は犯罪です。ここは針山の罪を洗いざらい暴かなければいけません。
では、どうやって僕は彼の罪を証明するのか。ぜひ考えてみてください。ヒントは芹澤さんの手帳です。
それでは解決編をお楽しみに。二宮浩太郎でした。




