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僕の背後にナリスマシ  作者: 黒井 羊
16/22

欲望という名のラジオ

 妙高と周治はなぜ警察が自分たちを行動確認(こうかく)するのか納得できない。そこで一案を練った。警察をからかう訳ではなく自分たちの件は大事件が起きたら後回しにされる程度と判断したからだ。


 妙高は周治に携帯で送信した。

〈今日のお昼、青葉大橋の下でP-38を渡したい。〉

 周治からすぐに返信が来た。

〈分かったこれから行く。〉

 青葉大橋は河口近くにある主要幹線道路の橋で河原は野球やサッカーができるように整備してある。橋の下は駐車場になっているので日差しや雨が横殴りに降らない限りは防いでくれる。かと言って周りからは丸見えなので営業車のサボりには向いていない。


 妙高は橋の下の駐車場へ向かう途中、3台のパトカーとすれ違った。河原にもパトカーが1台停まっている。妙高が橋の下まで車を乗り入れると周治はすでに到着していた。妙高は周治の車の真横に自分の車を停めた。周治が車から降りてくる。妙高はリアのハッチを開けP-38(釣竿)を取り出した。そのとたん 先に河原に降りていたパトカーが赤色灯を点けて近づいてきた。堤防からもパトカー2台が赤色灯を点けて寄ってくる。どのパトカーからも警官が降りてきた。

 一番最初に近づいた警官が妙高に尋ねた。

「それ、何。」

「これ釣竿ですよ。見たら判るでしょ。梁井(はりい)君や羽舞鬼(はまいおに)嬢の魔法使いの杖にでも見えますか。」

 妙高は嫌みったらしく言ってみた。

「何ていう名前の釣竿。」

 警官が言った。

P-38(ワルピー)、パワー3m80cmの略ですよ。」

「何を釣る竿なの。随分長いね。」

 警官はまた質問を続ける。

(あゆ)竿ですよ。」

 妙高は答えた。何も疑問を感じない警官に周治が吹き出した。周治は警官が釣りを知らない素人だとすぐに分かったもののに〈こいつらバカか。〉という視線を向ける。

 警官は「あっそう」と言うとパトカーに乗り込んだ。3台のパトカーは河原から堤防へと上がり走り去った。

 妙高と周治はパトカーに向かってバイバイと手を振った。そして喋り始めた。

「俺たちの携帯が警察に覗かれているのは間違いないな。」

「これだけ早く行動に移すところを見ると誰か付きっきりで見てるんじゃないのか。」

「でも何で鮎竿って言ったんだ。」

 周治が妙高に尋ねた。

「鮎もヒラスズキも食べたら美味いだろ。それにP-38でも無理して鮎を釣ろうとすれば釣れるぞ。鮎竿でヒラスズキは絶対釣れないけどな。」

 P-38は磯で大型のヒラスズキを釣るための竿だ。


 翌朝、ラジオの放送で グリーンが〈僕には警官の知り合いがいます。〉と喋った。

 その日の夕方、聞いていた周治が言った。

「つまんねぇ言い方だな。脚本家志望だろ。

 妙高はそんな周治に言った。

「〈事を荒立てたくはないが、僕には警官の知り合いがいる。〉ならいいのか。」

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