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アディマライド~英雄のツヅキ~  作者: 多神 久郎
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第八話 新たなる目的

戦いを終えて眠りに落ちるコウ。

そこでイベントが起こるのです。

「おはようおはようおはよう……」

 同じリズムと音程でずっとおはようを言われ、

気持ち悪くて目を開けるとまた黒の中に僕が一人で佇んでいる。

また精神体だけを引っ張られたのか。

その上まだおはようおはよう気色の悪い声が続いている。


拷問かこれは……。


そう思っていると、上の方から光がふらふらと僕の前に来た。

そこから現れたのは、あの薄気味の悪いリアルな兎の顔をして

燕尾服を着たやつだ。


こいつは手に懐中時計はもっていない。


ほっそりした体型でもない。


ホントに兎を二足歩行にした上に無理やり燕尾服を着せて、

無意味なくらいリアルな顔をしている。

もっとこうファンシーに出来ないものかね。


「うふふふふふふふ。愚かものだね君は」


「……なんだと?」


「アディマライドオン! アディマライドオン! きゃはははははは!」


 おちょくる様な口調でそう言いながら

僕の周りをぴょんぴょんと跳ね回る。

……宜しいなら見せてやる。

僕は兎を睨んだ後腕を交差させ


「アディマライド……オン!」


 と叫んだ。だが何も起こらない。

もう一度同じ様にやるも反応しない。

ウィンドウも開かない。


どうなっているんだ!?


「本当に貴様は馬鹿だな!? そんなんじゃ駄目なんだよぉぉおおおおっ!」


 急にその薄気味悪い顔を近付けて来て肩を掴まれ揺さぶられる。


「意味が解らないのかい!? あんな力は力でしかないんだよぉああっ!」


 兎は口から涎を垂らしながら首を左右に振り目で訴える。


「そんなんじゃ救えない。あの娘は救えない。きっと殺される。

君が殺す君に殺される君も殺される君を殺す君も

……君も死ぬうぁあああああっ」


 背筋が凍るとはこのことだ。

薄気味悪くて仕方が無い。

意味が解らない。

あの娘って言うのはアイリの事か?

 

「良いかい一度だけ言う。大陸で一番大きな都市を目指せ。

そこで月が満ちるのを待つんだ。時は来る」


 僕に抱きついた瞬間、右耳に口を寄せて

そうさっきとは百八十度違う声で言った。


何だこれは。


最初と今さっきが変てこだったのでいまいち信用が出来ないが、

嘘のトーンではないような気がする。


「余計な事はいい。頼むぞ」


 そう言うと距離をとり、兎っぽく四足歩行になると


「うひょう! はぶぁないすでーぃっ!」


 そういってけたたましい笑い声と共に去っていった。




「……ゥ……ウ……コゥ……コウ!」




 僕はがばっと上半身を起き上がらせると、

腕を交差させて防御のの構えを取る。

暫くして落ち着くと、自分が何か良さ気なベッドで寝ているのに気付く。

そして確かに女の人の声が聞こえた気がするのだが、

この場には誰も居ない。


左の窓からは激戦を繰り広げた海が見えた。

しかしどこかで聞いた事のある声だったような。

僕は汗ばむ額を側に有った布で拭いながら、

記憶の片隅を探してみるが出てこない。


なんだろう……この痒い所に手が届かない感じ。

兎人間のイベントといいゲームに引き戻される時の声といい、

普通に起こしてもらいたい。

自分の手を握っては開いてを繰り返す。

無意味に現実的な部分があってステータス九十九にも拘らず

筋肉痛の上に手には血豆、更に頭が歯でも削っているような

感じでガンガンして痛い。


「あ、コウおはよう! もう平気?」


「アイリおはよう。うん、もう平気」


 苦笑いをして返す。

本当は結構しんどいけどこのままここで悩むよりはマシだと思い、

ベッドから出てドアを開けて顔を覗かせているアイリの元へ行く。


「そういえば、お父さんがコウに港に来て欲しいって」


「分かった」


 しかし困ったもんだ。

このしんどい状況を改善する魔法とか無いんだろうか。

時間が空いたらそれっぽい施設に行ってみよう。

とにかく言葉と効能さえ解れば、

こちとら天下のチートステータス様よ。

あっさり習得して使いこなしてやる。


……それにしても頭がガンガンする……。


 外に出ると、今日もカンカン照り。

海風は癒しどころか、あの波揺れを思い出させてくれる。

なんていうか引篭もりと外ってだけでも敵対関係なのに、

引篭もりと空と海って勝ち目が見えない。


意識が朦朧とする中、港へと歩く。

景色の中に妙なでかい黒い影が映っている。



船じゃない……なんか微妙に動いた……見覚えがあるぞあれは。



「お、おい小僧! 早く着てくれ! さっきからこいつ動かないんだよ!」

 目を擦って前を見てみるとアイリの親父さんと、

水面から目玉が一つ出ているのが横に居る。

マジかよ……信じられない。

エクラノプランがぷかぷか浮いている。

何の冗談だろうか。

僕は引きつった笑顔で恐る恐るエクラノプランに近付く。


「キュォオオオオッ」


 海と陸のギリギリまで近付いた瞬間、

エクラノプランの目が笑ったように見えた。

そしてひれで水面を叩いたことで起こったであろう海水の雨が、

僕をずぶ濡れにした。

どうしよう風邪を引きそうだ。

風邪って魔法で治るのかな。

情緒も糞も無い状態の僕の目の前に光り輝くものが、

小さな虹と共に現れた。


「クキュキュキュキュキュ」


 なにかイルカのような鳴き声を出しているエクラノプラン。

これを取れって事なのだろうか。

僕がその光に手を伸ばし掴むと、

それは一枚のカードに変わる。

なんとそこには某ファンタジーRPGの絵のような感じで

エクラノプランが、海と空の間を泳いでいた。


「番号2番エクラノプラン……属性水……効果が書いてない……」


 なるほど、よくこういうゲームだとモンスターから

カードが出る事があるな。

しかし確立は恐ろしく低い。

しかもボスとなればトンでもなく低い。

何年やっても手に入らない人も居る。

それに課金くじの景品で何十万積んでも出なかったりと、

とんでもない代物だ。


「あ、ありがとう」


「キュアキュア」


 通じているか不明なのでカードをズボンのポケットに閉まった後、

海に膝まで浸かりエクラノプランの顎だと思われる部分をさすると笑っていた。

これが彼の本来の姿なのかと思うと複雑だった。

僕は最初彼を殺そうとしていたのに……。


「誓うよ。僕は僕の戦い方を貫く」


 去っていくエクラノプランの背中に僕はそう呟いたのだった。

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