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アディマライド~英雄のツヅキ~  作者: 多神 久郎
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第一話 始まり始まり

 僕は常々思っていた。英雄とはなんだろうかと。勿論最初は幼稚園の時みた

ヒーローものが発端だった。その登場人物のように強くなりたくて、

両親にせがんで、少林寺拳法を習わせて貰う。丁度その登場人物の一人が

やっていたので。

そのヒーローものが終っても少林寺を続けつつ、新しいヒーローものを見ては

自分を鼓舞し続けてきた。


 そんなある日曜日の早朝。テレビの前で五分前からいつも通り待機していた。

そしていつものオープニングが終わり、本編が始り毎度おなじみの流れで

止めを刺す場面になった。が、何か様子が可笑しい。ヒーローの必殺技が

決まった筈なのに敵は倒れず、さっきまでどう考えてもなかった武器を担いで

ヒーローに乱射。結果ヒーローたちは全滅して、最後は地球が黒く染まって

終了というドギツイものだった。


 今見れば意外性が有って面白いのかもしれないがヒーローを妄信的に信じて

修行してきた僕の心はブロークンハートになったのだ。


 高校へ上がると同時に僕は立派な引篭もりネットゲーマーになる。

中学まで純粋に少林寺の未来を背負って、そこからヒーローになる夢を

追いかけていた。それが今ではギルドの期待とゲームの未来を背負って、

そこからネットゲーム世界のヒーローになる夢を追いかけている。

格好つけているが、何の自慢にもならない。怠慢に身を委ねているだけである。

生きるのも飽きたが、死ぬのも面倒っちぃ。御袋には死んだ魚の目をしていると

言われ、オヤジには虫けらだと言われ妹にはキモいといわれ。

そんなに憎いなら殺してくれれば良いものを。

そう思いつつ今日もネットへログインして、その世界では強敵と言われている

敵を薙ぎ倒していく。その一瞬だけが僕の心を癒したのである。


「ゆーがっとあめーる」

 何かのおまけで付いてきた音声付メールソフトが、メールの到着を知らせる。

画面端をクリックして開くと、新たなる世界へのご紹介と書いてある。

普通なら開かないだろうがそこはネトゲ世界のヒーローを目差す僕様なら

当然押すのである。押して開くと、WANNINGと書いてありこれを承諾すると

元の世界には戻れませんと出て来た。こけおどしも良いところである。

こんなもので幾ら金を取ろうというのか。暇つぶしに実況でもしたろうかと

思い目を輝かせて、マウスのホイールを回して下の方へ行く。


するとアディマライドと言うタイトルが出て来た。

どんな意味だかさっぱりわからないが、クリックしてみると

警告のウィンドウが出て来る。勿論OKを連打する。

元の世界なんかに現時点で未練はない寧ろ進んで死ぬべきだ。

のうのうと生きるよりなんだったら未知の世界で、大暴れした方が

死ぬときも清々する。


 暫くすると、ダウンロードが始りインストールが完了するともう一度警告が出る。

ご親切なことで。頬杖を着きながらクリックを連打する。するとそこには僕の名前と

歳が入力されていた。ステータス画面は当然一。だがポイントは山ほどあった。

なら勿論全てに限界値までぶち込むまでだ。そして全て九十九。

ヒットポイント及びマジックポイントは九百九十九。後はスキルか……

選択肢が多すぎだ。変身スキルか……これを使うと能力が大幅アップ。

ヒーローになりたい貴方にお勧め、とか書いてある。良いだろう、僕の心の傷を狙った

単語だ。受けて立つ。そして、銃スキルに剣スキル。回復スキルっと。

うわぁマジ鬼畜だ。攻撃魔法までは流石にやり過ぎかなぁと思ったが、

ここは手ぬるい事はしてもしょうがない。魔法全部だ! と思いクリックしたが

何か違う所を押してしまったらしく部屋の電気全てが消えた。

そして部屋の中をバンバンというラップ音が走り回る。暫くしてそれが止むと、

ほっとした僕の目の前に大きな手が現れ顔を掴まれてパソコンの画面に押し込まれる。

恐怖のあまり抵抗するが、嫌にリアルな兎の顔が僕の右耳に近付いてきて言った。


「ヒーローになりたいんだろう? 僕たちを助けてよ!」


 最初は優しいトーンだったのに、助けてよのところは絶叫した。

耳が痛いよりも恐怖のあまり僕はそこで気を失った。



「ちょっと!」

 そう怒鳴られ目を覚ます。辺りを見回すと、古臭い格好をした人間がうろうろ

しているではないか。映画村かなんかに来てたか? と思う様な雰囲気である。

「なんすか」

 元々コミュ障なんで不貞腐れたように返事をする。ただ予想外なのは現実だと

舌打ち程度で済むはずなのに、ボディブローが飛んできた。しかも鳩尾にきっちり

叩き込んでくる辺り手馴れた奴だ。これでババアなら殴り返してやろうと思って

蹲りながら顔を上げるとそこには、中学生くらいであろうそばかすの糞ガキが

立っていた。これは殴り返していいはずだ。許せん目上の人間に対して。

人として粛清してやる! などと偉そうな事を思っていたのも束の間。

次は顎にアッパーカットを食らわせてきた。顎を押さえつつゴロゴロと床を転がる僕。

もう許さん例え女のガキだろうと手加減抜きだ!

「このガキ!」

 多分昔の感覚なら確実に捉えていたであろうが、引篭もりの腹には自家製重石の

贅肉が付いており、息も簡単に上がるというポンコツであるのを忘れていた。


「ふん」

 今度は肝臓辺りを打ち込んできた。こいつ何なんだ!? 嗚咽を履きながら地面に

転がる。そしてその時気付いた。自分も周りの連中と同じ古臭い格好を

して居る事に。ど、どうなってるんだこれは……。目を丸くしている僕を尻目に、

糞ガキは僕の前髪を引っ張り上げる。

「あんた、アタシたちが弱小ギルドだからって舐めてるんじゃないでしょうね」

 そう言うと手早く僕の顔から眼鏡を引っ手繰った。眼鏡掛けてきたっけ!? 

パソコンやる時は外す癖があったのに……。


「兎に角契約したんだからしっかり働いて貰うわよ。成功報酬は人数で等分で」

 そう言うと僕の眼鏡を戻して素早く襟首を掴むと、引き摺って歩き始めた。

一体何の冗談が始るのだろうか。僕は死んだのか!? それにしては全く優しくない。

それにあの兎はどこへ行った!? この糞ガキと関係有るのか!? 訳が解らん!

 こうして僕はこの世界での一歩目を他人の力によって歩まされる嵌めになった。

どこまで行ってもこうなのだろうか……。


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