兄
やっと眞もファルから離れてくれて、私たちは気を取り直して魔術の練習を始めていた。
今のところ、使えるようになった属性は雷、風、水、炎、の四種類だ。
「羽月さんはすっごく上達が早いですね。僕なんて、一生かけても一属性も習得できなかったんですよ~。」
ファルは少し寂しそうに言った。
「え? でも促成魔法は使えたんでしょ?」
「それは僕のオリジナルの魔法なんです。皆それぞれオリジナル魔法を持っていて、それに加えて何属性かの魔法を習得します。だけど僕はひとつも習得できませんでした…。」
ファルは今にも泣き出しそうな顔をした。私はファルの頭を小さく撫でた。
ファルは少し顔を赤くして目をそらした。
「そろそろ休憩にしようか。もう空が暗くなってきたし。」
「…はい。」
いつの間にか辺りは暗闇に包まれていた。
ファルは、昔のことを思い出していた。
僕には、兄が三人いた。
昔は、三人とも優しい兄だった。
三人で鬼ごっこをして遊んだのが僕にとっての一番古い思い出だ。
だけど、三人とも少しずつ僕から離れていった。
一番上の兄は、忙しいのかいつも研究のことばかりになり、構ってくれなくなった。
上から二番目の兄は、ある日突然しゃべらなくなった。何かから逃げるように。
僕の一つ上の兄は、ある時から突然僕のことを嫌うようになった。
今でも、なぜだったのか分からない。
でも、僕に向けられる鋭い、睨むような視線を今でも覚えている。
僕は今でもなぜあのような視線を向けられていたのかが分からない。
(なんで兄は、僕のことを嫌っているんだろう。 )
兄にだって、理由があったはずだ。僕のことを嫌う理由が。
ちゃんと兄とも、向き合ってみたい。
そう思った。
ーー
「おい、魔法陣の準備ができたぞ。」
俺は二人の兄に向って言った。
ちなみに、片方は精神操作の異能を持っていて基本的に研究のことしか考えていない。
そのさらに上の兄は居場所探知の能力を持っていて無口だ。
正直なことを言うと、この二人の兄は何を考えているのかいつもよく分からない。
簡単に言うと、理解不能だ。
ちなみに、俺が今言った準備というのはファルメールを捕らえるための準備のことだ。
ファルメールは俺からすべてを奪った、憎き弟のことだ。
あいつを絶望に陥れ、殺すために俺は知り合いの魔導士を全員集めた。
「ついにファルメールをこの手であの世に送れる。この日を俺はずっと、待ちわびていた。」
その言葉を聞いて、俺の一つ上の兄がこちらを睨んだ。
そして、俺が想像もしていなかった言葉を言った。
「おい、ファルメールを殺すつもりか? やめろ。」
「は⁉」俺は兄を見る。
兄はさらに俺を睨んでいた。
「ファルメールにはいろいろと利用価値がある。特殊な魔術も持っている。これ以上の実験材料はない。あれを実験に使わない手はないだろう。」
「そんな理由で……ファルメールを殺さないだと? 何のつもりだ?」
「お前こそ、何のつもりだ? ずっと前から思っているが、お前がファルメールに感じている恨みはどう考えても異常だ。いったいどんな理由がある?」
「理由? 決まっているだろ? あいつは俺の母を殺した。それだけじゃ理由が足りないとでもいうのか?」
兄はつまらなそうな顔で俺を見ていた。
「そうか。ではゲームをしよう。」
「ゲーム?」
「ああ。俺が先にファルメールを見つけたら、ファルメールは俺がこの国に連れて帰る。お前が先にファルメールを見つければ、煮るなり焼くなり好きにすればいい。」
「ああそうかよ。なら好きにさせてもらうぜ。」
俺は魔法陣を出す。そして、部屋の外で待っている魔導士たちを呼ぶ。
「では、行くぞ。」
俺は協力してもらう、魔導士たちに言った。
「わーい。楽しみだな。」
そう言ったのは、この国で最強と言われる魔女、『ルアファルナ=ディアローゼ』だ。
「めんどくさい。ぜーんぶ、めんどくさい」
後ろの方から空中を座るように移動しながら歩いてきたのは、魔導学園の首席、『ファイアルト=ラズアロ』だ。
「じゃあ行くか、あの国を滅ぼしに。」
俺は魔法陣の上に乗った。
『転移魔法、Metastasis,evil』
俺は魔法陣を起動させる。
着いた場所には、動く巨大な乗り物、巨大な建物、謎の技術で動く物がたくさん溢れていた。
「ゲームの始まりだ。」
名前とかノリでつけちゃいました。( ´∀` )




