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襲来—1

授業も終わり、昼食の時間になった。


 そのころ、私たちはすでに異世界から魔導士達がこちらの世界に来ていることはつゆとも知らず、三人で肩を並べてお弁当を食べていた。

「なあ、そういえばいつになったらファルの兄がせめて来るんだ?」

眞が不安げに口に出す。


「そういえば……」

 最近、何事もなくすごく平和だ。

もうすぐにファルの兄が攻めてくるとは思えないほどだ。

「でも、平和なのはいいことじゃない?」


「そうですよ。平和なのはいいことです。」

ファルが私に続くように言う。

「こうやって静かにお弁当を食べてる時間が一番なんだよ。」

 友達と一緒に弁当を食べることが少なかったため、正直かなりうれしい。

これほど平和なのはファルに勉強を教えていた頃以来ではないだろうか。


だが、またしても私の平和を邪魔するものが現れた。


「おい、でもあれ見ろ。」眞が指さした先には、美和子が立っていた。

こっちを睨んでいるようにも見える。


(うわ~。またか)


 昔は美和子の機嫌を窺いながら生きてきたため怯えながらついて行ったが、魔法や友達を手に入れた今となると正直めんどいとしか思わない。


「大丈夫ですか? 羽月さん」

「俺も一緒に行こうか?」

 眞とファル心配そうに私を見る。


この不安げな顔は本当に二人ともそっくりだなと思う。

二人で並んでいたら双子のようにしか見えない。


「いや、一人で大丈夫。すぐ戻るから二人とも待ってて」

私は建物の中からこっちを見る美和子の方へ向かう。


「なんの用?」私は校舎の中に入り、美和子に聞く。

 美和子はいつものにやにやした顔でこっちを得意げに見ていた。


「お前、最近炎使えるようになったからって調子乗ってるでしょ。でも、私も炎を使えるようになったから。あまり調子に乗らないでよね」


その指先からは息をほんの少し吹きかけただけで消えそうな弱々しい炎が見える。


きっとファルの促成魔法の効果が本当にわずかながら作用したのだろう。

確か前に半径一キロまで効果があるとか言っていたような気がする。


「はぁ。それで?」

私がどうでも良さそうな返事をすると、美和子は虚を突かれたような顔をした。


「は⁉ 私も炎が使えるようになったのに、び、びびらないの?」


 そのいかにも攻撃力がなさそうな炎を見て、怖がる人間なんていないだろう。

マッチ棒を取り出して脅した方がまだ効果がありそうだ。


すると、美和子が脅すように指先の炎を突き出して来る。


「……なに?」

正直かなり困惑する。何がしたいんだか分からないが、邪魔だ。

私の時間を奪わないでほしい。


すると、風が吹いて来て美和子の指の炎が消えてしまった。


可哀想だが、これは私のせいではないだろう。

「……どんまい」私が励ますと、美和子は負けじと反論してくる。


「ち、違う。これは今日の天気が悪かっただけ。なんか今日、妙に風が強いし?仕方ないでしょ。」


美和子の炎が消えた理由はどうでもいいが、確かに言われてみれば今日は風が強い。


いや、さっきまでは別にそうでもなかった。今、急に風が強くなってきた気がする。

私は何か、違和感を感じた。いったいなぜだろう?


「じゃあ私、ファル達の所に戻るね。」


 だが、返事は返ってこなかった。

私は後ろに振り向く。

 すると、美和子がいなくなっていた。


「えっ?」

 私がそう呟いた頃には、私の近くを取り囲む風が強くなっていることに気が付く。


そこで私は違和感の正体に気が付いた。


なぜ、校舎の中に風が吹いているのだろう?


(まさか、……風魔法?)


風の魔法はファルに習った。

まさか、この校舎全体を風で包んでいるのか。


私は慌てて外に出る。


「ファル‼ 大丈夫⁉」


校舎の外には霧が渦巻いていた。

こんな大量の霧が急に発生するなんてあるわけない。

魔法を使ったに決まっている。

ついに、異世界の人たちが攻めてきたのだろう。


「こんにちは。羽月さん、だっけ?」

後ろから声が聞こえてきた。


慌てて後ろを振り向く。

だが、誰も見当たらない。

「そっちじゃないよ。こっちこっち。」


声が、上から聞こえてきた。


上を見ると、紫色の髪に赤い目、そしていかにも魔女のような尖った帽子をかぶった子供がいた。


きっと、風で浮いているのだろう。


そして、その隣に美和子が見えた。


「美和子⁉」


美和子が空に宙づりになっていた。


足をバタバタとさせて、必死にもがいている。


きっと、口を風にさらされて、喋れないのだろう。


助ける義理なんてない。


あるわけもない。


それなのに、聞こえてしまった。

彼女は口をふさがれて、息もできない状態で必死にその言葉を言った。

「たすケて」……と。


「あ~あ。本当に仕方がない。美和子は本当に世話が焼ける」

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