知②
「ここですねぇ。世那まりかのご両親が住んでいるはずの、マンションです」
二人が到着したのは、古めかしいコンクリート造りの七階建てのマンションだった。
世那まりかの両親が住んでいるのは、このマンションの五階、505号室だ。
エントランスに入り、備え付けのエレベーターで目的の五階まで昇っていく。
(連絡の取れない夫婦か……嫌な予感が当たらないといいんだが……)
「進藤さん」
「なんでしょう、朝倉刑事」
「嫌な予感がします。覚悟はしていた方がよろしいかと」
「出来ればその予感が外れていてくれるといいんですけど……」
「それはごもっともだ。失礼しました」
「いえ……」
「心強いですねぇ。おっと着きましたね、向かいましょう」
先を進む朝倉の後に識も続く。
そうして、世那まりかの両親が借りている部屋まで着いた二人は、視線を合わせ、朝倉がインターフォンを鳴らす。
一回。
二回。
三回……。
「出ませんねぇ、留守……と認識するには、現状を鑑みると不審すぎます」
「そうですね。朝倉刑事、このマンションの管理者と連絡は取れますか?」
「えぇ、訪れる前に一報は入れてありましたが……改めて連絡しましょう。この部屋のマスターキーを持ってね……」
****
しばらくして、このマンションを管理している管理会社の担当者がやってきた。
名を佐々木と言う三十代くらいのやや太めの体格をした男性は、冬だというのに額に汗を浮かべていた。
「急いで来ていただいてありがとうございます、佐々木さん」
「い、いえ! とんでもないですよ、刑事さん。私達の方でも、何件か隣室等の方から連絡が入っていましたので」
「連絡……確か、不審人物の目撃情報や騒音でしたよね?」
「そうです、刑事さん。それで私からも世那さんご夫婦に何度か連絡させていただいたのですが……」
「でも繋がらなかったんですよね? 我々と同じく」
「はい……なので、警察に相談しようかと思っていたところで、刑事さんから連絡が来たものですから……驚きました」
「それはそれは……驚かせてしまい申し訳ありません。では、話も一区切りついたところですし……鍵を開けて頂いても?」
「あっ、はい! 今すぐに!」
佐々木が、手にしていたマスターキーで鍵を開けた。
扉が開くと、室内は真っ暗だった。
人の気配も全くと言っていいほどしない室内へ、朝倉を先頭に足を踏み入れた――
2DKの室内全てが、真っ暗な部屋の中を……。
****
結論として、室内に世那夫婦の姿はなかった。
(どこに行った? いや、何があったんだ……?)
嫌な予感が確信に変わるのに、そう時間はかからなかった。
朝倉が呼んだ鑑識官達によって……争った跡を隠蔽した形跡が見つかったのだ――




