紫の魔女
長い廊下の先に、地下への階段があるので、二段飛ばしで降りるサトケンは、風のよう。
葉っぱの使い魔が来ては、バケノジョーがくすぐり、サトケンはマントを振るう!
もうすっかり、使いこなしているわね。
「!」
辿り着いた先は、パープルの秘密の部屋。
壁には、昔のアイドルらしきイケメンのポスターが張られ、グッズもいくつかある。
そして、本棚の難しそうな本の数々だ。
そして、床には魔方陣が描かれ、真ん中にはハコちゃんが、縛られ立たされている。
その横には、紫の魔女。パープル=ブルーベリー。
自分の秘密の部屋での儀式は、パープルの必死さを窺わせる。
「ハコちゃん!」
「サトケン、みんな!」
近寄ろうとしたサトケンは、パープルの魔力の球に、慌ててマントで弾く!
「小賢しいマントだこと」
「ご自慢のマントさ!」
「やかましい!しかし、サイアスが負けるなんてね」
「ハコちゃんを返して!」
「光の巫女か………嫌だね。リア充は、眩しくて忌々しい!」
今度は、氷の球……を、ミカちゃんは、光の矢で、撃ち落とす。
「お腹、空きました」
つむじは、なにか食べ物がないかと探す。
「そこの猫!空気読みな!」
今だと、サトケンはダッシュ!つむじののほほんさに、気をとられてるかと思いきや、サトケンは、地面から生えた腕に掴まれる!
「!」
「ヒヒヒ、馬鹿な坊やめ!さあ、貴様の肌も乾燥させてやろうか?それとも、ぬいぐるみにしてやろうか?」
維持悪く、不気味に笑うパープルは、意地悪い。
昔は、綺麗でモデルとか言っていたけど、時の流れと共に、ひねくれてしまったのか。
「街の人達に何で、そんなことするんだ!」
「ふん、人間は残酷だからね」
そう言って語りだしたのは、紫の魔女の過去。
昔々、王都に、誰もが羨む美しい娘がおりました。
求愛する貴族は、数多くいましたが、中身に魅力を感じる者はおらず、断り続けていました。
ある時娘は、モデルにスカウトされ、季節ごとのファッションショーに出ては、身分関係なく絶大な人気を集めていました。
娘が何時までも、変わらず美しいのは魔女だから。
しかし、それは隠したままです。その美しさを妬んで、酷い目にあったから。
それに魔女は、どこか不気味に思われていたからです。
その魔女は、ある日帰り道、悪いやからに狙われましたが、一人の男が割って入り、助けてくれたのが王国の貴族でした。
その男の爽やかさ、後、爽やかさ、やっぱり爽やかさに、不覚にもハートがズキュンと撃ち抜かれたのですが、慎重になる魔女。
しかし、民からも慕われ、貴族も平民も分け隔てなく優しい。
毎回、ファッションショーを見に来てくれるので、初めて自分からアタック!
男は、魔女の愛を、受け入れてくれたのです。
それからと言うもの魔女にとっては、幸せな毎日。
泉のほとりで、ピクニックしたり、馬で遠乗りしたり、パーティで躍り狂ったり、魔女にとっては幸せな日々。
そんなある日のことです。街中で、男とその連れの女性が話してるのを聞いたのです。
「あなたの恋人、魔女だって、知っているの?」
「もちろんさ。魔女と付き合えば、その絶大な魔力を自分の物に出来るだろう?」
「そのために、付き合っているなんて、あんた酷い王子だね」
「ははは!僕はね、君みたいな鼻からパイプの煙を出す、くたびれた女が、大好きなのさ」
「うふふ、あんたやっぱり、変わってるねぇ」
去っていく二人を見ながら、魔女は怒りと悲しみに、打ち震えました。
私のことが、好きではないと言う怒りと悲しみ。
自分の愛した人への失望感。魔女は、呪いをかけました。
女には、ありったけの煙が、鼻から出る呪いを。
男には、心の醜さと比例して、肌が乾燥する呪いを。
魔女は、地味で嫌な呪いを、得意としていたので、二人にはストレスの毎日。
男は、魔女を捕らえさせて、古い洋館に閉じ込めて、国の宮廷魔術師に封印させたのです。
しかし、魔女にとっては、安全な場所。強力な封印は、外からも内側からも解けず、安全に呪いを掛け放題でした。
国の人々を、地味な呪いで困らせていましたが、呪いは帰って来るもので、自分は、やたらと乾燥肌の醜い老婆になってしまったのです。
そして、長い月日の後、ハコちゃんのことを知ったのでした。
つづく




