騎士の苦悩二
イブキたちは、お化けたちに混じって、百鬼夜行をしていたものの、こらしめてもこらしめても、立ち上がる使い魔たちがいました。
「はぁ…はぁ…振られても立ち上がる、僕ちゃんみたい」
荒い息をつきながらイブキは、ニンジンの型の道具を構えます。
「苦戦してるようね、イブキくん」
軽やかな、ジャージ姿の猫かぶり姫が、執事とメイド達を連れてやって来たので、ウキウキイブキ。
「僕ちゃんのために、来てくれたのねん?」
「アホか!貴族として、市民を助けるのは、当然のことよ」
クラスメイトと、住民の安全は建前。
ホントは、セバスチャンナのため。それと、サトケンのことが気になるのです。
(サトケン……あんた、無事に戻って来なさいよ)
弓に矢をつがえて放つ!
「……て、うちのメイドを見て、鼻の下伸ばしてんじゃないの!」
イブキの耳たぶ掴んで引っ張るミナミ=ハルカは思う。
こんな時でも、胡座をかいてだらけているんでしょうね。
「サイアス!」
サトケンの前に現れたのは、尊敬してる騎士、サイアス。
助けに来てくれたのかと思ったのですが、違和感は、使い魔たちと一緒にいることでした。
仲良しになったんだなと、思っているのは、バケノジョーくらいで、つむじやミルクちゃんは、毛を逆立てている。
「………サトケン。ここで、引き返してくれないか?」
とても、悩んでるような表情で。
「サイア……ス?何を言っているんだい?
あの魔女は、僕の友達を捕まえて何かしようとしてるんだぞ!
どうして、邪魔をするんだよ!」
「僕は……パープルの味方だから」
剣を抜き構えるサイアスは、退く気が無いようだ。
強い意思をかんじるのを見て、膝を着きそうになる。
そして、使い魔たちに命令を出す。
「しっかりするバケ!どんな時でも、明るさがあればどうにかなるバケ」
「……バケノジョー」
そうだ。へこむのは後だ。ハコちゃんを、助けなきゃ!
マントを触り落ち着かせる。
わらわらと来る葉っぱの使い魔たちは、意味もなくけんけんぱをする。
最近の使い魔たちは、けんけんぱで遊ぶのが、ブームなんだって!
何とか、人間ともけんけんぱをしたいけれど、魔女の命令には逆らえないから、今、披露してるの。
そんなことは、知るよしもなく、サトケンが、意識を集中させるとマントがはためき、ぐるぐる捻って拳の形になって、使い魔たちをこらしめます。
「闇の戒め!」
ヒカリの影から人型が出て、使い魔達を捕まえる。
ミカちゃんみたいな、光の魔法を使いたいなと思いながら、闇の魔法の適正があるみたいで、やっぱり影だから?
闇の魔法は、暗いイメージがして苦手。
つむじも、ミルクちゃんも、ダプルネコパンチ!
更に、一呼吸に二発放つ、ネコパンチ・飛燕で、葉っぱの使い魔をこらしめるミルクちゃんは、怒らせない方がいいなと思うつむじは、早くもお腹が空いて来た。
(…ミルクちゃん家の駄菓子屋で、菓子パン食べたいのです)
「あ、ほいほいほい!」
バケノジョーも、愉快にお化け投げ!
自分の明るさに惹かれて、ヤミノモノが集まってた時期があったので、自然に上手くなったのです。
投げては返す。投げては返す。よくわからないことを呟きながらリズムに乗ります。
「サイアス!」
「僕も、譲れないんだ!」
マントの拳と剣が、ぶつかり火花が、散る!
意識するだけで、マントがその通りに動き、サイアスの剣を防ぐ!
全く、子供相手に本気にならないでよ!
そう思いながらも、騎士として手を抜かないと言うことか?
振り下ろしの斬撃を弾き、バランスを崩す!隙が出来たとこへ、マントで打ち込む!
しかし、それを剣で防御してからの鋭い突き!
マントの拳とぶつかり後ずさる二人。
本来、サトケンでは相手にならないのだが、マントの力でなんとか相手になっている。
これが、騎士の実力かと、身震いするのを止められない。
つづく




