表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七神剣の森【全年齢版/完結】  作者: 千艸(ちぐさ)
七神剣の森
105/105

七神剣の森

そして、神話の始まりの日。

魔女タナルキアの報告を受けて、剣の仲間達が久々に(そろ)った。

大樹の(うろ)のひとつに、地下へと(つな)がる穴が出来ているというのだ。

移民船は戻らず、人々の()らしは大樹の(みき)の上ではこれ以上の発展が望めない。それならば、地下に新天地を求めてみるのも良いかもしれないな、とレオンは考えた。ラストリゾートで調光してやれば、地下だって快適な空間になるだろう。問題は、どんな規模(きぼ)の穴なのか、ということだが。


「…入り口は大したこと無かったですが、これは深そうですね…。虚の位置までの高さの倍は下に続いていそうです」

「そんなに…!?」

セルシアの言葉に、仲間達は気を引き()める。

一行は(ぎょく)(けん)の背に乗り、(ゆる)やかに下降していった。


何キロメートル下降しただろうか。やがて、大きな空洞(くうどう)に出た。大樹の根はその空洞を意に介さず、更に下に伸びている。闇は深く、お互いの姿すら見えない。

「〈調光〉」

レオンがラストリゾートを(かか)げると、その空洞に光が満ちた。

「これは…!」

そこに広がっていたのは、青く(かがや)洞窟(どうくつ)。大地と壁面は黒く豊かな湿(しめ)()(ふく)み、所々で玻璃(はり)や水晶結晶が見える。それらが(きら)めいて、夜空に青い星を散りばめた様になっていた。

空洞上空から全体を見渡すに、広さは十キロメートル四方は下らないだろう。高さは一キロメートルあるかどうかの様だ。想像以上に、巨大な地下空間だった。

「良いね、ワクワクするねー!」

クリスがココを()って飛び出す。

「こりゃ(すご)い、これ全部土か!?」

インカーが床を目指してぐんと下降する。

「インカーさんの街も巨大な地下都市でしたが、此処(ここ)に都市が出来たらもっと大きなものが出来そうですね。確かにこれは、心(おど)るなぁ…!」

セルシアも目を輝かせる。フィーネは壁面を伝う水を調べていた。

「んー、残念ながら塩水ですね…。でも、大樹の根の付近は真水があると思います。その辺なら…」

「移民出来そう、って話かね?」

魔女が(たず)ねる。フィーネが花開く様な笑顔を見せた。

「はい!リオンさん、サンリアさん、これはお()(がら)ですよ!」


やがて全員が地に降り立ったレオンの周りに集まった。

「皆に提案がある」

レオンの挙手に、一同は(うなず)いた。

「ここを全部都市にしてしまうことも、確かに考えたんだけどな。多分それだと環境的に()(たん)すると思うんだ。だから、俺はこの数十年見ていなかったものを、ここに復活させようと思う」

クリスがその通りだと言いたげに頷いた。

「ラストリゾートを、この空洞の天井に()して封印する。それで光を全体に行き(わた)らせて、海水から真水を作って雨を降らし、風を(じゅん)(かん)させる。熱の調節もしてもいいかもしれない、太陽みたいに」

「新しい世界を…ここに作ると?」

アザレイが半信半疑でレオンに問うた。

「そうだ。そして、ここを森にしたいんだ。俺達が旅した危険な森じゃなくて、人の生活に確かに()()ってくれる、豊かな森に。

 都市は小さな街レベルのものを作ろう。それで足りなければ、他に空洞が作れないか探す。森は減らさない。後はそのうち、草原と、砂丘と、()(れい)な湖が欲しいかな。それを森で(つな)げて、維持(いじ)したい。俺達が海に()れて忘れてしまう前に、人の色んな()らし方を思い出して、守っていこう。

 賛同(さんどう)して、手伝ってくれるか?」

それを聞いた時、皆が思い出していたのは、自分達があの数ヶ月間で(めぐ)った、実に多様な世界と深く広い森の様子。それらに対する(ぼう)(きょう)の念は、皆の一致するところだった。いいぜ、やろう、面白そうです、と皆から賛同の声が上がる。


「有難う、皆。俺の思いつきに付き合ってくれて。

 ──それじゃあ、取り戻そう…いや、新たに(つく)ろう。七神剣の森を」


夜明けの神は、(おわり)の剣で天を切り(ひら)いた。




──完──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ