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ライトノベルから始まる……

 勉強の合間に休憩は必要だ。

 体力的な話だけでは無く、モチベーションの維持という観点から見ても休息が重要なのは言うまでもない。

 ただ、その休息をきっかけにダラダラと休んでしまう……と、何の為に休憩をしているのかと言う本末転倒な事になる人も居るのだが、ソレについては横に置いておこう。


 さて、そんな休息の間に何をするかと言う話だが、会話をする人もいれば、ゲームをやる人、漫画を読む人と休みの使い方など人それぞれ。

 そして、ここ最近の渡と紬の休み時間の使い方は、もっぱらライトノベルを読むという事。

 読み始めたら時間が……となりそうだが、それに関しては確りと時間を区切って読んでいる。……まぁ、少し気になるなぁなんて思いも出て来る時があるが、それは次の休み時間のお楽しみと言うやつだ。


 で、何故ライトノベルなのか? と言うと、渡の語る異世界生活を考えると、異世界転移が起きた際にライトノベルの主人公や登場人物みたいな行動が出来るかどうか? と言う考察が割と楽しいらしい。


「で、実際こう、モンスターをいきなり討伐するとか出来る?」

「俺の体験からして無理だな。ゴブリンは弱いという扱いが多いみたいだが、あのゴブリン達の悪知恵はとんでもないぞ? 森の中に隠れながら奇襲、剣や矢には糞尿を塗られていて怪我をしたら大変な事になる、自分達が勝てないと解ると直ぐに逃げ出し、森の中に居る強敵が居る場所に誘導するなんて事もするからな」

「あ、悪質だなぁ。って事は、物語みたいな戦いは出来ないのかな?」

「そうなるな。昔どこぞの国の騎士が正々堂々と戦うのだ! とゴブリンの集落に突撃し、ゲリラ戦を仕掛けられ敗走したなんて話もあった」


 ゴブリンとは言えモンスターだ。甘く見るなと言う話。

 と言うよりもだ、モンスターは弱ければ弱い程その戦い方は冒険者のモノに似ている。何が何でも生き残る戦い方だ。

 逆に、高ランクのモンスター程驕り高ぶっているのか、それとも絶対の自信からなのか正面衝突を好んでいる。


「じゃ、じゃぁ……僕達のクラスが転移した場合は?」

「んー……どういう状況下にもよるけど、良くて数人がこっそりと生き残る。最悪だと俺と紬以外は全滅だろうな」


 異世界転移だヒャッハー!! などと突撃しようものなら即死だろう。

 戦うのなんて怖い! という態度で戦場に出れば、全てが後手になり生き延びる事など無理だ。


「異世界の人とこっちの人では精神状況が違うからな。戦いに対する覚悟や意識がどうしてもネックになる」

「あー……でも解るかな。大型犬に吠えられただけでも怖いからね」


 だからこその、界渡りの研究だったりするのだが……それはさておき。


「でもでも! チートを手に入れたらまた違うんじゃないかな」

「チートか……ソレは俺のリード魔法と変わらないんじゃないか? 入力しただけで使いこなせるモノでは無いだろう」


 そして、此処でもネックになるだろう事は、やはり先程話した覚悟の違い。

 結局の処、戦うと言う意味を、状況を、結果を知る事が無い子供達に、戦い抜けと言うのは酷と言う物。例え、チートが有ろうとも。


「あー……だから、良くて数人生き残るかぁ……」

「ま、それも転移した時の状況が良ければと言う話だな。こっちの作品みたいな、国が学生を洗脳するパターンとか、これだともう生き残れないと思うぞ」


 体は生きても精神は奪われている。ただただ戦うためのソルジャー。

 そんな存在になって、果たして生きていると言って良いのだろうか? もはや死んでいると言っても過言では無い。そう告げる渡。


「むむむ……やっぱりこういうのは実際に起こらない、作り話だからこそ面白いって事だね」

「だな……ただ、異世界が有ってこういう話を作る人が居ると言う事はだ。この話の中には、幾つか実際に有った出来事なんて可能性も有るだろうな」

「うへぇ……出来ればハッピーエンドな話だけにして欲しいなぁ」


 渡と紬のラノベから始まる異世界談義。こっそりと耳を澄ませて聞いていた武もまた、うんうんと首を縦に振りながら異世界怖い! と思っていたとかなんだとか。


 ともあれ、二人の休息時間と言うのは、普通では考える事など無い内容を話しながら過ごす事となった。

体験したからこそ話せる渡と、色々質問をする紬ちゃん。

休みの合間は常にこんな二人です。

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