第115話:ブレンド
どもどもべべでございます!
最終決戦! 完!
どうぞ、お楽しみあれー!
ブレンドすることで本来よりもずっと美味しくなる場合もある。それは既に、ヤテン茶が証明してくれている周知の事実です。
最近は、羞恥攻めも良いんじゃないかと思い始めている私がいる事も、既に周知の事実でしょう。
つまるところ、この世界樹の葉もまた、美味しくなる希望があるという事です。
あまりに完成され過ぎたが故に、ほとんど味がしなくなってしまっているこの茶葉。素材としては一級品かもしれませんが、私からしたら味が悪けりゃ毛ほどの価値もありません。
「2人とも~、大丈夫そうですか~?」
「茶渋さん、定着に成功しました! これより浄化を開始しますっ」
「わかった……2人で抑え込もう!」
「はいっ」
うん、大丈夫そうですね。
というか、私のこと眼中に無いですね。
仕方ありません、一旦一人で作りましょうか。私は早速、作業を開始しました。
前にも作りましたが、この葉っぱをお茶に加工するのはかなり大変なのです。じっくりと時間をかけて、じわじわと成分を抽出していきましょう。
……うぅむ、たとえ精神世界の中においても、容易にはいきません。こんなに加工しづらくて、かつ美味しくないなんて、世界樹は本当にお茶としては不合格ですね。
ですが、そんなお茶でもけして見捨てず美味しくする方法を模索していくのが、私に課せられた使命なのでしょう。諦めませんとも。
「これで……終わりだ!」
「いえ、茶渋さん! 離れてくださいっ」
「これは……不浄が集合して、巨大化した!?」
くぅ、レジストの間をすり抜けて、成分を抽出して……なんと、更に奥に純粋なエキスが存在するのですか!?
これは、本腰を淹れようじゃありませんかっ。柔肌の乙女をエスコートするが如く、繊細に……!
「茶渋さん、私は既に貴女に根付いています。……私の力を全て貴女に注ぎ込みますので、その手で決着をつけるのです!」
「わかったよ……ボクは、負けない!」
「……ふぅ、完成しました。精神世界で作ったからか、余計に不純物がないですねぇ」
出来上がったお茶は、完全な無色透明。結界を破壊した時よりも純度が高いって事なんでしょうね。
純度100%の世界樹エキスとか、完璧な不老不死できちゃいそうですねぇ。まぁ、味がないと意味ありませんが。
あとは、この世界樹茶に世間樹ちゃんの淹れたお茶をブレンドして、美味しいお茶にするだけですね。
「……せっかく美味しいお茶が飲めそうなのに、誰かと一緒に飲めないのは悲しい話ですねぇ」
問題は、そこですよねぇ。
なんか、2人とも取り込み中ですし。お茶とか飲んでくれるような感じではなさそうです。
では、どうするか。
「……ゴンさん~、聞こえますか、ゴンさん~」
『ぬお!? この声は……ちんくしゃか!』
おぉ、やってみるものですね。
世間樹ちゃんが根付いたとかなんとか言ってたから、今ならできるかなと思ったのですが、見事に成功です。
彼女の根っこを通して、外にある世間樹ちゃん本体を電波塔のように扱い、ゴンさんに声をお届けしてみました。これなら、ゴンさんとここで会話できますね。
『おいちんくしゃ。先ほどから、こやつの体に凄まじい不浄が纏わりついては消えておる。貴様が散らしておるのか?』
「あ、いえ、やってるのは茶渋さんご本人と世間樹ちゃんです。彼女はもう、自分の意志で元に戻ろうとしていますよ」
『……そうか』
安心したような声色。ゴンさんもなんだかんだ言って心配だったんですね。
「それよりゴンさん」
『なんだ。こうして連絡を寄越したからには、何かあったのだろう? 我が手伝える事か』
「えぇ。お茶飲みますので、こっちに来ませんか?」
『……あぁ、馬鹿であったな。失念していた』
突然の馬鹿判定に混乱が隠せません。私はお茶にお誘いしただけなのに……。
あ、なんか不浄が薄れていきますね。これは余計にお誘いしやすいです。
「いえ、私がお手伝いしますので、ゴンさんの精神をこっちに連れて行きますよ~。さっきまでは茶渋さんの理性が不浄で囲まれていてできませんでしたが、世間樹ちゃんが根付いたので今ならできそうなのです」
『出来ると言うならば前言は撤回しよう。しかし、何故ここで茶会なのだ』
「いえ、茶渋さん達がちょっと忙しくって、私だけ手持無沙汰で……」
『ふむ、貴様が何もしなくていい程、余裕があるのだな?』
「まぁ、見た限り余裕そうですね」
なんかお父さんイルミネーションが巨大化してますけど、茶渋さんが巨大熊さんモードになってがっぷりよっつで組み伏せてます。
世間樹ちゃんもいい感じに根付いて、その力を茶渋さんに流し込んでますねぇ。これはもう、茶渋さんの勝ちなんじゃないでしょうか。
『……ふむ』
そういうことならと、ゴンさんは私のお誘いを受けてくれました。やはり愛し合う2人は求め合うものなのですね。
ふふふ、外に繋がってる世間樹ちゃんのルートを使って、ゴンさんの魔力を探します。
見つかったら、あれですよ。なんかの宇宙生物が脳みそチュルチュルするみたいな感覚で、ゴンさんの精神をこちらに引きずり込みます。
するとあら不思議。ゴンさんを茶渋さんの精神世界にご招待する事が出来ました~。
『凄まじく気色悪い感覚を覚えたぞ……! まるで頭の中を啜り出されるような……!』
「うぇへへ、背徳的ぃ」
ちょっと興奮しました、ゴンさんをチュルチュルするの。また精神世界に来れたらもう一回しよう。
「さ、それよりお茶にしましょうか」
『うむ、茶に……ってぇ、なんだあれは!?』
え? 何って、あれは茶渋さんとお父さんイルミネーションですよ。
お父さんイルミネーションの必殺ライトアップが茶渋さんの目を焼いた瞬間、世間樹ちゃんが回復させて反撃の一撃を食らわせたところですね。
『ところですねではないわ! 今まさに最終戦闘の佳境ではないか! というかなんなのだお父さんイルミネーションって!?』
「いや、私戦力外通告くらったので、お茶でも飲んでようかなって……」
世界樹のエキスを紅茶とブレンドしてたら、ゴンさんからゲンコツをいただけました。
精神世界でも脳内に響き渡る重低音! これがないとやってられねぇ!
『たわけか! 貴様が今手を貸せば終わる話であろうが!』
「い、いえ、私はちゃんとお茶で時間を稼いでその間に浄化しようと提案を……」
『不浄に清めの茶が飲めるか! というかそれ以前の問題だわ!』
「まぁまぁ、それよりもお茶飲んでくださいよ。丁度自信作が出来た所なんですよね」
『まったく懲りんな貴様……まぁいい、これを飲んだらすぐにでも加勢に行くからな』
「とりあえずお茶を優先するあたり、ゴンさんもゴンさんですよねぇ」
そんな所も大好きです。
お茶を受け取ったゴンさんは、私へのツッコミ疲れか何も言わずにゴクリと一口飲みました。
『……美味いな。だが、ここが現実世界だからか満足感がない。味が最高なだけにどこか虚しい……』
「そう思って世界樹混ぜたんですけど、やっぱりダメですかねぇ」
『ふむ、紅茶の味しかせんな』
「うぅん、味も無味なのか……やっぱり世界樹はダメですねぇ」
『……マテ、イマナントイッタ?』
「世界樹ブレンドですけど?」
あれ、ゴンさんが固まりましたね。
なんか、プルプルしてますね。
あれ、凄い魔力が溢れてきましたね。
「グルアァァアア!」
「茶渋さんいけません! それ以上は貴方の理性が持たないかも……」
『っ……世間樹ちゃん……私、貴女に会えて、良かった……!』
「ちゃ、茶渋さぁぁあん!」
あれ、なんか茶渋さんがお父さんイルミネーションに抱きついて、そのまま自爆しようとしてません?
ちょちょちょ、自爆したらダメじゃないですか。私の計画が……
「……グオオオオオオオオオ!!」
わぁ、ゴンさんが叫びましたね!?
そのまま茶渋さんの所に突っ込んでいきます!
『え? べアルゴン?』
「え、なんでいるんですか」
「ガアアア!」
ご、ゴンさんが! 茶渋さんを引き剝がしぃ!
ゴンさんがぁ! イルミネーション捕まえてぇ!
ゴンさんがぁ! 画面端ぃ!
反撃読んでぇ! まだ入るぅ!
ゴンさんがぁ……
「ガアアアアアアア!!」
『「す、凄い連打だ!」』
「グゥル……グアアアアア!!」
ゴンさんが……決めたぁぁぁああ!