第108話:ドライアドさん、一番の騎士
どもどもべべでございます!
おかげさまで前よりもテンポを上げていけてますね。三日でご投稿です。
個人的に、心和ちゃんとノーデさんは初期からやべぇ化学反応してると思ってたんですが、ここまで極まるものなんだなぁと感慨深いです。
もう戻れないなぁw
ではでは、どうぞお楽しみあれー!
轟く2つの咆哮。
ぶつかり合うモフモフ達。
間に挟まれたいSYO☆U☆DO☆U。
そして、それらを軽く凌駕する胸の疼き。
「頑張りましたねぇ、ノーデさん」
私の手は、自然と彼の額を撫でていました。
キースさんがえっちらおっちらと抱えながら、この場を離れようとしてくれています。その横で浮きつつ、ボロボロになったノーデさんを見ていますが……いやぁ、本当にヒドイもんです。
まぁ、時間稼いでって言ったのは私なんですけどね。だってノーデさん、死なないんですもの。
死なずにいてくれて、茶渋さんの足止めしてくれる人なんて、私は2人しか知りません。だからこそ、当たり前のように彼に託しました。
ですが、それは間違いだったのかもしれません。いえ、成功はしてるんですけどね?
ただその、デノンさんがすっごくお怒りだったもので……あまりにも一つの命を冒涜しすぎているって、言われちゃいました。
『今後、俺がアンタに関わる時は、最大限の警戒をさせてもらうからな! 命をなんだと思ってるんだ!』
……う~ん、命をなんだと、ですかぁ。
まぁ、心和の記憶があるから、尊いものだという感覚は理解しますが……言ってしまえば世界の歯車ですからねぇ。
時と場合を考えて使い潰していかないと、それこそゴミ廃棄場に入りきれなくなった不燃ゴミみたいに世界を圧迫するだけなんだよなぁって。
けど、私はその時と場合が妖精よりの考えみたいです。あまりにも軽い扱いらしいんですよね。
「ごめんなさいね、ノーデさん。私は貴方を、軽く扱い過ぎてたみたいです」
欲しいから手元に置いた。
だから好きに使う。
それだけでは、どうにも通らない道理があるんですね。オベロン様も、こういうのを気にしてお仕事してるんでしょうか。
「……いえ」
ふと、そんな私の言葉に反応したノーデさん。
意識を失っているかと思っていましたが、どうやら体の修復が始まっているようですね。それで起きたんでしょう。
「いいえ、管理者様……異なこと、異なことにございます……」
「あぁ、ノーデさん! 今すぐお茶を用意しますので、少し待っててください」
「……なんと勿体なき、お言葉……。ですが、この傷は、騎士の誉れにございますれば。……それに、この傷も、後から必要になりましょう……?」
朱に染まる顔に笑みをたたえ、ノーデさんは言葉を紡ぎます。
なんと澄み切った笑顔でしょう。痛みの中でこんな顔ができるのは、素直に少し怖いです。
「この大陸を……ここに住まう全ての生命を、守る為のご命令。……このノーデ、騎士の本懐にございます。なれば、管理者様のご意志に報いる事こそが、この命の存在理由……どうか、その胸中に陰りを落とさぬよう、お願い申し上げます……」
「ノーデさん……」
「どうしても、と言うのであれば……謝罪よりも、褒めてくださいませ。この身、この命を賭してなお、茶渋様の足元にも及ばぬ未熟者の、あまりに身勝手な願いですが……管理者様から賜るならば、そちらの方が……」
……やはり、この人は素晴らしいですね。
私が彼を欲しがったのは、あくまで美味しいお茶を淹れてくれるからです。
ですが、彼のこの人間性……いえ、非人間性こそが、決定打になっているかもしれません。
彼は、どこまでも他者の為に在る存在なのです。何者かに尽くすという行為を、当たり前にこなすことができる存在なのです。
それは、まるで私達妖精や、精霊のよう。
世界の一部、誰かの配下として、その一生を何かの管理の為に費やす事ができる存在。それが当然であり、常識である者。
私のように、芽生えた自我に引っ張られてそれをやめる者もいますが……昔は私だって、それが当たり前だったのです。
彼の在り方は、そんな私達と同等かそれ以上。なにかしらの共通認識が、彼を手元に置きたかった一番の理由だったのかもしれませんね。
「……えぇ、見事でしたよ。妖精の従者、ノーデ」
「っ……」
だからこそ、私は彼に報いましょう。
「貴方を讃えます。よくぞ私の命令通り、茶渋さんを一ヵ所に抑えてくれました。その忠義と献身を、私は誇りに思います」
心からの尊敬を持って、真っすぐに彼を認めましょう。
そして、改めて誓いましょう。
「決めましたよ、ノーデ。これからも、私は貴方を使い潰します。私の一生をもって、貴方を縛り続けます。けして離さず、誰にも渡さず、貴方に頼り貴方を欲します」
「あぁ……あぁ……!」
「貴方はただ、私の為だけに在りなさい。その忠を王に、信を精霊に捧げた貴方のまま、ただ私の手元に丸ごと存在していなさい。絶対に、私の元を離れることは許しません……逃がしません。たとえ体が使えなくる程に壊れても、絶対直してまた使い潰します」
それを望んでいるのでしょう?
でしたら、お望みどおりに。いままで通りに。いままで以上に。
もっともっと、可愛がってあげましょう。依存してあげましょう。
「あぁぁ……! なんと、勿体なきお言葉……!」
「さぁ、だから今は休んでください。貴方の言う通り、その大怪我にはまだ仕事があります。その時がくるまで、我慢できますね?」
「えぇ、えぇ。もちろんにございます……! このノーデ、永劫を管理者様の為に……!」
んふふ、良かったよかった。
ノーデさんがそれで大満足ならば、これで解決大団円ですね。
……ですが、そうですね。なにか別のご褒美もあげた方がいいですよね?
「ん~、そうですね。それじゃあ、今回の一件のご褒美に、私の事を名前で呼ぶ栄誉を与えます」
「な、なんと……あまりに不遜では」
「はい、もうあげたご褒美です! 貰わない訳にはいきませんよね~?」
あぅ……と、ノーデさんが顔を隔そうとして、片腕が無いことに気付いてわたわたしてます。
……可愛いな。もう二時間くらいねちねちイジメたいですね。
「そんな、こと! より!」
っとと。
今まで空気を読んで黙っててくれましたが、キースさんをタクシー代わりにしちゃってましたね。
ご苦労様です~。
「はひ、ひぃ……お前、本当に、いいんだな?」
「あ、はい。いいですよ~。キースさんが走ってる方向がそうなんですね?」
「あぁ……ドゥーアの防衛拠点だ。今頃、怪我人で溢れかえってるだろうさ」
うんうん、良い感じですね~。
ゴンさんとねーちゃんが茶渋さんを足止めしてる間に、ドゥーアの皆さんにご挨拶といきましょうか~。
「はぁ、はぁ……なぁ、ノーデお前が運べよ……! 飛んでるんだからよ……!」
「私、ノーデさん抱いたら理性が飛ぶ自信がありますよ?」
「……俺が運ぶよ、畜生……!」
さてさて、いよいよ大詰めですかね。
ヴァナの里には、グラハムさん達がコンタクトを取ってくれているでしょう。この両方が上手くいけば、私達に敵はいなくなります。
そうすれば、後は茶渋さんに集中するのみ!
うぇへへへ……誰にも邪魔はさせません。全員纏めて、友達になっていただこうじゃないですか……!




