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ドライアドさんのお茶ポーション  作者: べべ
最終章:ドライアドさんのお茶ポーション
112/126

第104話:鬼と獣(第三者視点)

どもどもべべでございます!

最終章という事で、今まで触れなかった方々にもご登場願います。

はたして彼等は、国を守る事ができるのか!?

乞うご期待!

 

 鬼人族、ドゥーア。

 獣人族、ヴァナ。

 この2種族は、この大陸において最も血気盛んな種族である。

 邪獣の生み出した文明が離散した後、率先して他国を侵攻し統一しようとしたのが彼等だ。ピット国のフィルボやアーガイム国のヒュリンが平和を訴えても、けして手を取り合うという事はしなかった。

 否、ヴァナに関しては、ヒュリンと金銭的な取引はしている事はある。しかし、それは主にドゥーアとの戦に備えての準備に過ぎない。


 戦乱の大きな元凶となっていたこの2種族は、森の管理者の情報を得てもなお、接触をひたすらに避けていた。

 理由は単純に2つ。1つは、自分たちが森に侵入するためのエリアに、コカトリスが大量発生したが故の自粛。

 そしてもう1つは、管理者と対になっている森の守護者に手を出し、国力を削るような事態を避けるためである。

 いずれ大きな戦が発生し、各国が戦火に包まれる。その時、天災たる森の守護者もまた動くだろう。

 その時までに、自分たちだけの力であの怪物を討伐し、更には周辺諸国を飲み込み、全てを得るための戦力を蓄える必要があった。

 それ故の我慢。そのための沈黙。彼等は爪を磨き、喉元に食らいつく機を待っていたのである。


 そして、ついにその時は訪れる。

 サイシャリィに潜んでいた内通者が、最後の連絡を寄越した。その情報を元に、女王が不在のタイミングを把握する事が出来た事により、背後から強襲される心配がなくなった彼等は、ヴァナの国へと一斉侵攻をかけるべく戦力を集中させていたのだ。


 だが、その努力はあっさりと打ち破られる。

 全ての準備を整え、いざ戦果を上げんと行進しようとした彼等を、一匹の獣が襲ったのである。

 かの者の名は、邪獣。

 エルフ程に寿命のない彼等にとっては、薄れつつある伝承の存在。しかし、100年という長いようで短い期間の中では、けして消えなかった記憶。

 そんなうっすらとした脅威が、己の国に突貫してきているという情報が、伝令により伝わったのだ。


「巨大な熊? 森の守護者か!」


「あ、あまりに禍々しく、凶悪な様子でした!」


「いかん、すぐに戦力を防衛に回せぇ!」


 しかし、かの者が邪獣であることは、現場では当然把握されない。

 巨大な熊といえば、森の守護者が真っ先に浮かぶのだ。あの災厄が、なんの因果か自分たちに牙を剥いたのだと、責任者は判断した。

 結局、侵攻の為の兵力は、防衛のための壁として使われる事となった。

 邪獣との接触まで、残り僅かな時間。

 その間に防衛線を引けたのは、戦の準備が整っていたというタイミングの良さと、彼等が根っからの戦士だからだと言えるだろう。





    ◆  ◆  ◆





 ドゥーアの国と隣接しており、戦を繰り返していたヴァナもまた、同じ様に防衛の姿勢を見せる。

 鬼人が戦力を集結させていた情報を得ていたのならば、当然彼等も兵を揃えていて然るべきだろう。いつどこから鬼が襲ってきても良いように、ドゥーアの国から森に面しての防備を整えていたのだ。

 隣国には宿敵ドゥーアと、腑抜けたヒュリンしかいない。アーガイム側に戦力を集中しなくて良いというのは、肉体面の強さで劣るヴァナにとっては追い風であった。


「も、森の守護者が乱心! 北上して来ています!」


「狙っているのは、ドゥーアか? それとも我らか!?」


「なんにせよ、来るのなら迎え撃たねばならん! 戦力を森側に集中させろ! 援軍も呼べ!」


 防衛を任されていた責任者は伝令を走らせた後、持ち寄れる戦力を森へと集中させる。

 ヴァナの強みは俊敏性だ。防衛拠点が国境沿いに点々と離れた距離にあるとしても、僅かな時間で集まる事ができる。

 屈強な獣人が防衛線を引き、来るべき獣に備えた。この段階で、ドゥーアとほぼ同じタイミングで、2種族が邪獣に対しての戦闘準備を整えた構図となる。


「鬼も獣に備えて防備を整えたようだな」


「獣も流石に防衛の構えか」


 距離があるとはいえ、ここまで派手に兵が動けば互いの動きは丸裸だ。

 両指揮官は、互いの陣営が邪獣に向けての防備のみを考えているという事を、既に察している。

 森の守護者と勘違いされているとはいえ、最大の脅威だと認識している点は間違えていない。宿敵とはいえ、互いに警戒し合う余裕はないのだ。


「あ奴らに擦り付けられれば最高だが……」


「そうもいかん可能性もある」


 両指揮官は、戦線を見つめながら伝令を走らせる準備を整える。


「もし協力することで奴が討てそうならば、そうしよう」


「その為にも、奴らに文を送る。気骨のある奴は名乗り出ろ!」


「「守護者を迎え撃つために、一時的な共同戦線を構築する!」」


 互いに語り合っている訳でもあるまいに、彼等の心は一つとなっていた。

 それはひとえに、明確な脅威から国を守るため。その為には怨敵とすらも手を組もうと、現場の人間は判断できるのだ。

 今日この日、一回限りの共闘がなされた。この大陸で随一の戦闘国家達が見せた、最強の軍隊。

 かつては共にあり、バラバラになった文明の、争いという部分が濃縮した存在だと言える。彼等がこの状態で仲良くできるなら、すぐにでも大陸の覇権を握れたことだろう。


 数刻後。連合軍と最強の獣が接触する。

 彼等は祖国を守らんと、災厄を相手に一歩も退かぬ覚悟を秘めていた。

 その覚悟は……あまりに脆く、崩れ去る事となる。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] さあ、みんなで幸せ(不幸)になろうよ こうですね分かります
[一言] モブA「オイオイオイ」 モブB「死ぬわアイツ」 メガネ「ほう、あれが伝説の邪獣ですか……たいしたものですね。邪獣の力は凄まじく、たった一匹で国を滅ぼしかけたといいます」 モブA「なんでも…
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