シャルとリリー‐二度目の、、、
雷が雷鳴している。
落雷。
「首を切り落とされて、無様に死んだ」
暗闇のなか、少女は一人ごちる。
「そして、結果として、わたしの死により、世界は終焉を免れた。
もう、彼の望む、完全なる人類の終末は、果てが無いほど、遠のいた。
この全宇宙に拡散し尽くした人類を、壊滅させるのは、難しすぎるから」
天空から垂直に落ちる、稲光。
それを幾筋も放射するのは、黄金の長髪を靡かせる丈夫。
凛々しくも麗しい、豪胆さと繊細さと美しさと、様々な矛盾を内包する容貌。
それは今、滾る闘争心と戦闘に狂った体熱によって、灼熱の戦場を彩るに値する。
「なにを一人で呟いているの? くだらない。
わたしは人類の救済も破滅も、至極、どうでもいいのだけれど?」
それは黄金の女の、紛れもない本音。
彼女は人類の救済も破滅も、どちらも望まず、どちらも興味が無い。
しかし、彼女は過去、歴史において、人類の完全なる救済を頓挫させ、崩壊を防いだ存在として、歪に存在する。
「ハートの女王という名の、魔女、お前には何もかも、無意味な価値観にしかみえないのだろうな」
せせら笑いの嘲笑、何よりも甘やかなる微笑。
女王は、何もかもを、一つ形容するなら、価値観のようなモノを、超越する存在。
ゆえに価値観を突き崩すことには、彼女は快楽を禁じえない。
「価値観、ねえ、また崩してあげるわ。
貴方の大事に大事に暖めてきた、心の奥にある思いも願いも、なにもかも、壊して綺麗に生まれ変わらせてあげる。
強制的に、わたしによって殺されて、より美しく生まれ変われるのよ? ねえ? 嬉しいでしょう?」
「くっ、、、、を!」
昔年の恨みを思い出した事で、激しく動悸を高鳴らせ、胸を片手で抑えながら、もう片手を握りこむ。
その仕草、表情に、もろん喜ばない黄金の少女ではない。
胸を高鳴らせる少女に習うように愉悦的に「クックックック」っと込み上げるものが抑えられないかのようにしているのだ。
「しかし、、、もう、負けない、負けない為に、進化した、真に至った」
「ふっふ、やっと、舞台が整ったわ。
時間をかけて、遠回りをして、一度は全てを放り捨ててまで、甲斐があったわ」
二人は、眼前を睨みつけながら、呟く。
「全てで対して、全てで砕く、覚悟」
「ふん、いい度胸だわ。」 睨みに睨みを返して、大上段から切り伏せるかのように見下す。
「 宣言してあげるわ。」 一時後、言葉の重みがさらに高まる
「 ”この戦場で、わたしは、彼女の掛け値なしの全てを、ぶっ壊して抉り潰すことができるわ”」
そこには、嘘偽りのない全貌があった。
実際に未来を見てきたような、掛け値なしの確信に満ち溢れた、断言であった。
普段の口調とは一線を画す、感情のまま吐いた言の葉でもあった。
「その彼女とは、わたしの事ですか?」
地上に現われる影が言った、頭上で破壊の光を乱舞させる敵に言う。
暗闇に包まれた、暗い場所から、ようやく声だけでなく姿を現す。
紫の長髪に、どこまでも純粋に純潔な瞳。
「そうよ、わたしが手ずから、殺してあげるの、感涙に咽び泣きなさいよ」
相手の言葉に眉一つ動かさない。
理的な、だがその瞳にも、対の相手と性質を異にしない、闘争の焔が閃き揺らめいている。
およそ戦場には、余り似合わない、清楚な女だ。
だが、彼女は、客観的に見て、酷く戦場と一体化した、超直感的に此処でこうあることが、自然体と見える。
なぜなら彼女自身が、そうである事に、自己のアイデンティティーすら超越した、運命を感じ、頑なに信じているから。
その確信に満ち溢れた心は、常に常在戦場、生涯現役の、己が戦場において、そのような生粋の戦士、である事を望む。
そのような二人から、複雑に合わせて、生み出されたかのような、何か。
雰囲気とも空気感とも分からない、とにかく、戦意を高揚させるアレな何か。
一際強烈な落雷が、迫る。
直撃の手前で、何かの力場に阻まれて、幾百の筋に拡散される。
煽りを受けて、うちひしがれた尖塔群。
そこから火花がスパークか花火のように飛び散って、凡百の窒素分子をじりじりと焦がす。
弛緩した空気はない、気を抜けば、一息に距離を詰められ、殺害が決まる、その間合いである。
お互いに上下に瞳を向け合い、緊張を保ったまま、力みを解放するトキを狙い計っている。
開幕は済んだ。
黄金の女丈夫が、細剣、レイピアを抜き放ち、喉元目掛けて突きかかった。
対する美女は、同時に迫り来る雷の本流を、手元の銃器から迸る同質同量の光で打ち払いながら。
キンと、甲高い音。
レイピアと銃器が鍔ゼリ合う音だ。
「シャル、貴方は、もっと馬鹿でかい、それこそ、刀身ばかりアンバランスな長モノを使っていたはずではぁ?」
空気が張り詰めすぎな空間でも、平素に無感情に響く声。
「ああ、こんな細モノ使うのは意外でしょう、でも貴様をやるには、これが最良!」
そう言いながらも、行動は言葉通りでなく。
一旦距離を取ってから、彼女はどこからともなく、巨大な大剣出現させる。
それを片手に持ち、まずはその、余りある質量の方を叩きつけようとする。
「愚かな、遅すぎます」
言葉通り、美麗なサイドステップだけで難なく交わして、懐に飛びこもうとする。
だが、予想を超えた切り返しによって、たたら踏むことになる彼女だ。
「ちぃ、おしかったぁわ」
「なるほど、見た目だけのハリボテですか、何となく重量感に掛けると思ったら」
言葉が終わる前に、黄金の彼女は接近す。
レイピアと長モノ、重量バランスの噛み合ってない獲物で二刀流を繰り出す。
その余りの蛮行に、多少戦慄しそうになる紫の彼女。
変則的な攻撃方法は、無限に多様性を誇る正攻法に最終的に負ける、しかし初見で見切るまでは脅威だ。
「つぃ!! やりますねぇ!!! ですがぁ! これなら!」
紫の彼女は、自身のモードを根源的なレベルで切り替えた。
機動的なハイスピードムーブディメンション高度実体剣術。
脳の機能を過剰酷使し、やっと実用レベルで駆使できる業、これによって彼女の防壁を崩すには至らない。
「くっ! わかっていた! ならば、これは不要! 冥土の土産よ!」
振りかぶって投擲。
紫の彼女は、余裕をもって、何十の防壁で威力を殺ぎに殺いで、から、獲物で横向きに抱き飛ばす。
そのあまりに威力の篭った衝撃を受けた長モノは、空中でへしゃげ、遥か彼方雲散霧消するように見えなくなった。
「はぁ、これでは勝負がつかないわ、一旦引くわ」
言いつつ、黄金の彼女は初めから引く気だったのか、既に離脱を始めている。
紫の彼女は追おうとしたが、足を引っ込める。
向こうには、闇夜に浮かんだ、巨大な空中城塞。
多数のトーチカに、要塞周辺の砲撃陣地、すべて此方に指向を据えている。
滑走路まで幾つも擁され、既にカタパルトでは戦闘機がスタンバイされているだろう。
見た目はメカメカしい、装甲で防護された鉄の大地だ。
だが空に在るには、実に不似合いな程度には、石造りの場所が所々見える、そんな城が虚空に聳えている。
色彩が蒼と黒で形作られた、純帝国製の、特別で特殊な、戦艦などとは違う、対地戦特化機動空中要塞。
その青銅と鉄製の尖塔に、再びの落雷が降り注ぐ。
彼女は供給したエネルギーによってか、要塞の前方固定の巨大な主砲に火が入る。
「くぅ!! これはぁ!!!」
「はっはぁ! 死にたくなければ、今すぐ消えることねぇ!」
その直ぐ、主砲中心的に集まった不吉な稲妻が、拡散するように奔流する。
妙にけばけばしい極彩色の閃光をもって、地上スレスレを滑空し、すべからくの視界を焼いていった




