観測者と毒電波少女たち
都市での祭りまで、三日前。
俺は家から歩いて五時間くらい、此処に居る。
某あややは、何か警戒でもしてるのか、一人で帰ってしまった。
おいおい、五時間一緒にいられると思ったのに、至極残念だ。
それにしても。
「人が少ないなぁ」
大都市ってわけでもないのか、
夕日に染まる、広大な坂道を下りながら、思う。
俺の住む家周辺に比べたら、大都市だと思い込んでいたのかもしれない。
それにしても五時間かぁ、
まあいい、時間なら売るほどある、気長に歩こうじゃないのか。
ふと、アレの気配に気づく。
そうアレ、殺人現場特有の、微に粘つくような、あの気配。
俺の特殊な能力に、一つ、過去の殺人現場の様子を見る、というのがあった。
そうだな、暇を潰す一貫として、使うか。
能力行使。
そこは、今と同じ、夕日に染まる坂道の頂上だった。
アングルは、俺が最もドラマチックに見やすいように、常に都合主義に調整、最適化されている。
犯人は、坂道の頂上で、自転車に乗っているようだ。
そして、スタート。
カゴに事前に入れてある、大量のナイフ、大型のモノだ、を取り出す。
そして、坂の中間あたりの標的に、思いっきり、投擲したのだ。
それは距離が離れすぎていたため、外れた、犯人は近づきながら、次のナイフを取り出す。
標的も気づいたようで、逃げ出す、後ろを見ながら。
犯人が投擲をフォームを取る、標的は避けられないと思い、隣を偶然歩いていた子供、
なんと、盾にするように抱えたのだ。
グサ。
ナイフが微妙に頭を出すほどの威力、標的は子供を抱えたような体勢で、尻餅をついてしまう。
立ち上がる暇も無く、、グサ、、、グサ。
子供は、既に死に体で、口から血の泡を吹かせて、ぼうっと虚空を見つめている。
ついに、犯人が標的に追いつく、
子供を抱える標的に向って、ナイフを投擲、眉間にヒットし、確認後、すぐさま逃走。
能力が終了すると、雨が降っていた。
これは、能力発動後の代償、プラスかマイナスの効果があるのか今一不鮮明な、それの結果だろう。
俺は、ここが何時か分からない、だが此処が、都市の唯一の大学、その構内であることは分かる。
とりあえず、時間を確認しようか、俺は座っていたベンチから立ち上がる。
直ぐ近くだ、
高速道路が十字になっている、その真上の高架線広場、
その植え込みの中心に、レンガっぽい外装の、時計塔があった。
それを見た後、大学近くの、行き付けの喫茶店にでも寄る。
さらに、都市を歩き回る。
正直に言えば、なぜか疲れていた。
だから、ここから五時間も掛けて家に帰るのは、しんどいのだ。
知り合いは見つからず、しょうがないので、ずぶ濡れに濡れ濡れな身体で、帰路につく。
能力を発動した、坂道に来た。
ここで、あの惨劇があったのかと、何か感慨深い気持ちになりつつ、歩く。
都市の近く一部だというに、この道はまばらな人通りだなぁ、などと思いつつ。
の時、隣を二人の女性が通る、学生だろうか? よく分からない風体だ。
普通に通り過ぎるのだが、一人が一旦、振り返り、
一人を先に行かせたまま、こちらに歩み、近くで俺を見てくる。
不可思議に思っている間に、奴は興味を無くした様に、もう一人に追いつく。
大きな声で。
「こんな雨の日にとぼとぼ歩いているような、そのまんまの見た目だった」
と、それだけ言って、先を歩いていく。
俺は、そうか、と思っただけだ。
すこし距離が出来て、また、奴はこちらを振り返り、歩み寄ってくる。
「ちょっとちょっと、お尋ねしたいんだけど」
「ああ」
「寒くない? 死なない?」
そりゃそうだろう、普通なら死ぬ、まあ俺は大丈夫なのだが。
彼女、エミリという、俺を救ってくれない知り合いは、
こっちに近づいてきた、もう一人の同様知り合い、ニアコ、と何か語りだす。
そして、あーだこーだ合って、「ちょっと面かしな」とエミリが、俺を連行しだす。
都市の方面に。




