ナルディアと真ナルコを見るシャルIF史実
高度物理現象が展開されていた。
観測者のシャルは、双方に逆観測されている自覚し、
且つ、その逆観測が、さらに高度に双方の己に対する、客観的観測率を高めることを自覚したまま、
お互いの強度が、さらに己の存在性を持って上乗せされることに自覚的なまま、お互いを最大限認識していた。
「幻想領域を、変換するわ」
「そう、、、飽きたの?」
混沌の盟主たるナルディアは、地平の向こうのキャッスル、その天辺に何となく適当に座るナルコに言った。
「いえ、ただ、わたしの混沌ほどじゃないと、確信できただけ」
別に切り口鋭い、侮蔑の言の葉では、それは無かった、だが。
「侮蔑だね」
「そう?」
「そうだよ、至高の概念を、低廉に否定されたのだからさ」
「へえ、本音はやっぱ、そうよね、ふっふ」
シャルは想う、二人は戦うのだと、何かが切れたのだと。
この世界は、概念、世界を覆うほどの概念に、七分割されて、力と呼べるリソースが分かれている。
そして、それを総取りするのが、概念体、ある意味で、世界と等価の絶対存在。
それが彼女達で、眼前の二人が、その七体の内の二人。
「ここは、僕のステージだけど?」
「ええそうね、だから?」
そう、ここは幻想領域である、真ナルコの直轄領域。
そもそもの前提として、ナルディアに勝ち目はないだろう。
この領域に、ナルディアという異物が、入り込めている時点で、勝機はない。
世界のリソースの七分の一のナルディア本隊が、此処に内包されるということは、ないからだ。
許容とは、それはすなわち相対的に矮小だから、許可される概念。
「余裕だね、だったら、僕も余裕出そうかな」
言うと、キャッスルの中から、機械の軍団がゾロゾロ進み出てくる。
それは、特異点だった、わたし、シャルロットという一個存在と同一の、この世の真なる外なる存在性。
世界の方向性に分類されない、オリジナル、何ものにも当て嵌まらない、その存在自体が奇跡染みた産物。
「デウスエクスマキナ、在り来たりだけど、神を越えた、機構の機械」
「へえ、神の如き性能に、人間性を内包させて、人間の意志で神の力を、間接的に操る、ね。
確かに、在り来たり、でも故にシンプルに強力だわ、」
ナルディアは、黒の渦を掌に発生させて、瞳が暗闇色に煌めかせる。
「それ、わたしの好み、頂戴よ」
「無理だね」
「なら、染めて、従わせて、奪うまで」
機械の聖なる力と、闇に等しい力が、ぶつかり合う。
シャルロット、わたしは、ここら辺が干渉時だと、進み出る。
「ゴルデミック、パンドラ」
黄金の禁忌、真に真なる絶望と、希望の本流。
眼前に収まる視界の、シャルが認識し感じる事象の全てが、己を含めないで飲み込まれていく。
パラパラに砕け散って消えた、視界のすべて。
シャルは虚空に立ち、完全に統べきっている己以外を、見回し告げた。
「油断した? 違う、所詮、貴方達は、わたしのようなイレギュラー、特異点に、成す術が無いから」
それを言うと、暗闇から、まるでチャシャ猫のようにコミカルに、
真ナルコが、本隊が、ここは幻想領域だ、それは可能だ、銀髪と一緒に紅に染まった美しい瞳を除かせた。
「特異点は、特移転でしか、排除できないから、やっかいだよね」
「ナルディアは?」
「知らない」
「そう」
特移転攻撃にのみ警戒して、わたしは待機する、ナルディアが掴めない、存在性を拡散させているようだ、
「特異点は、所詮、私達に認識されないと、存在すら出来ない」
「だから? わたしには関係が無いけど?」
「傲慢だね、だから鉱物種って僕はキライだよ」
外なる世界に飛ばされれば、特異点は存在できない、
だが、鉱物種は、存在の根底が、二重にあるので、この世界で消滅しても大丈夫なのだ。
「なにしに来たのさ」
「知ってるでしょう、黄金の解明は、阻止させてもらう、僅かでも可能性があればね」
黄金卿の手がかりが、ここ、幻想に内包されているかもしれない、
黄金の神秘と、その解明は、幻想と混沌が協同すれば、可能に変わる可能性が、あった。
だが所詮は、対立世界、協同などありえない、
混沌が幻想を貪り、それを阻止する幻想、その構図は見え透いていた、
まあそもそも、初源の神秘だ、
これは七分割された世界が、僅かでも読み解くのは、不可能だと、原理的には理性で判断しているが。
それに、黄金の技を見せ付けるのも悪くない、
世界に己を認識させれば、勢力全体としても、上手いがある。
芽は摘むに限るし、その動機さえあれば、無限に近く生きてても、能動的に動ける、
他の鉱物種が、黄金にどれほど迫るとも知れない、圧倒的力量と余力、余裕がある内が華、突き放せるだけ話すに限ると思う。
「来た」
遅い、ただ、遅いのだ。
一つに収束する、光速よりも尚早い、膨張と正逆の収縮、黄金の機動。
ナルディアは、形態を取り、黒の剣で向ってきた。
しかし、対象はわたしでなく、ナルコの方。
「ふん、君は弱いよ」
そして、難なく防がれる、銀色の鎌で。
わたしは、その首を切り飛ばすように、一直線に獲物を突き出すのみ。
「君も、まあ、まだまだ弱い」
幻想的な、わたしでも認知できても、そこに至る逆解答が導き出せない、美しき幻想機動。
分が悪いと直感、領域的にもステージ的にも、ナルディアの不完全さも合って、五分にもならない。
「わたしのモノになると、彼女に吸収蹂躙されるの、どちらが好みですか?」
「別にいいわよ、黄金の彼がどれだけ巨大になろうと、私には関係ないわ」
「何時か、追い抜いてあげます」
黄金と混沌は、相性が良い、融和、一つに解け合いやすい、この甘美な感触が、なによりの証拠だ。
無秩序な競争状態、その様は、世界の方向性は、ある意味で、一強が世界を収束させるように見える。
しかし、太っ腹だ、
さすが、大規模勢力どころじゃない、世界そのもの、絶対勢力だけある、清清しいほど滅私だ。
黄金卿を思い出すほど、この豪快豪胆さは、なにものも触れることすら叶わない、壁のような存在の振る舞い、圧力を感じる。
そうだ再実感す、世界とは、基本的にけち臭くない、
このように、与えられる機会があらば、そう機会さえあれば、無上に与えてくれるのだ、無論、権利と資格があればの話。
「そういうこと、出来ちゃうんだ?」
「そう、ハッキリ言えば、何でもできてしまう」
獲物に、ナルディアの属性が付与、光り輝く暗闇という、形容矛盾の有様。
「世界ごと、消し飛ばないといいですね」
「やってみなよ、不可能だからさ」
わたしは、獲物に内包されるナルディアを完全犠牲に、その場を最大限爆縮させた。
「はいはい、やめよやめよ、僕不毛なことキライだよ」
「そうですか」
幻想領域が、その内部構造単位で、完璧に独立、分離されて、爆縮は内構造だけで、無限に乱反射した。
結果としては、ナルディアだけが消し飛んだ形だが、この空間に残滓が、ある。
「不気味だよ、よくナルディアを御しきれるね、狂わないの?」
「はい、黄金は絶対ですので」
一瞬で、空間が幻想的なインテリア家具の置かれた広い一室になっている、
ナルコは、テーブルの銀食器に置かれたマカロンを口に放り、銀の杯に口をつけて遊ばせる。
「じゃあさ、僕と組まない? 遊ばない?」
「組みません、遊びません」
「ええぇ、どうして?」
「意味が無いので」
「ふーん、それじゃ、君には、どんな意味が他にあるのさ」
わたしは少し考えてから、その答えを教えてあげた。
「わたしは、己のルーツ、この世界に刻み付けられた、空間の記憶、歴史を辿るのに、割と熱心ですので」
ナルコは「ほえぇへ」と、言って、特に興味そそられないのか、それ以上問い重ねない。
そう、わたしにはやる事があるにはある。
この黄金体、転生体には、歴史がある、記憶がある。
だが、それは情報であり、実体験でなく、追体験、
わたしは、その追体験を、実体験にしたい、
そして初めて、わたしはわたしに、前のわたしを、より確実に、真なる意味で、
わたしとし、わたしの一部として実感し、わたしを感じる事ができる、その感覚が心地良く、ある、
それはわたしが以前行った場所に行き、旅行感覚で過ごすだけでいい、そういう何気ない事だけで、実感できるのだ。




