塔の館‐LV2怠惰怠慢的な死にプレイングの日々
馬鹿みたいに、己の内心とは異なる、清清しい陽光降り注ぐ、
眼前に広大な塔を仰ぐ、噴水があるだけの、庭園のベンチ、にて
彼女が言うには、
ここからは、この塔の、巧妙に練られた謎解き、みたいなモノを解き、最上階に至らなければ、
出れない、脱出できない、、、らしい。
聞き手をオモンパカラナイ、マシンガントークに辟易して、あちゃっみたいに顔を覆って天を仰ぐ。
こんな絶望みたいな状況下なのに、憎らしいほどの晴天、だな、
こんな無理ゲーみたいな、最近のフリーゲームみたいなシチュエイション、やってられないんだが、
しかも、即死エンドがあると、先ほど簡単に証明されてしまい、その心の傷を抱えて、
てかなんだ、この晴天は、馬鹿にしてんのかと、こういうゲームは大体において暗闇っぽい雰囲気だろが
「さあさあ、制限時間ありますから、行きますよー」
制限時間? 聞いてねえぞ、おい!
その後、未探索の部屋に入り込もうとしたら、初見では絶対に避けられない、
断頭台トラップに嵌り、首を撥ねられた。
「あらあら、微妙に、私との会話が、あのトラップを暗喩してたのにねぇぇ?」
クソが、能天気なてめぇーとの会話なんて、適当に聞き流してたっつのぉ!
またその後、典型的な謎解きをしてたら、しくじったのか知らない、変な鎧兜が動き出し、
指を全部切られて、ほうほうの体で逃げていたら、先ほどの部屋に入ったと気づかず、馬鹿みたいになった、
「もうやだぁ!!! 死にたくない! 死ぬの痛いよぉおおおおおおおおおおお!!!」
精神が臨界越えたのか、知らない、俺は発狂していた、何時ものと、おなじみ感すら漂い出した庭園ベンチで、
「へえぇ~それじゃーどうするんですかぁー?」
「知るか、知らんわ、もう、このまま、一生、、、ここに居ればいいだろうがぁ!」
「ほえほえぇえ、確かに、それなら、死にませんねぇー」
すっとぼけたコイツの反応、もう知らんと見捨てて、俺はベンチに横になって、眠りだす。
どれくらい寝たか、知らない、時間の感覚が無い、
「腹が減った」
「そりゃ、そうですよ、ループモノですけど、ループしなければ、空腹は無くなりませんよ」
「餓死か」
「そうですよぉー、餓死ですよぉー」
ふと疑問に思った事があった、
猫みたいに両手で猫耳ポーズを気取る馬鹿みたいな奴に、およそ質問を、尋ねるのが、馬鹿らしい話だが、
「おい、てめぇーは、どうして俺に付き纏う? 傍にいる?」
「知らないですよぉー、
それでも、想像するに、
私みたいな面白系美少女が傍に居れば、精神的に発狂死するのを防げて、ゲームバランスが保たれるぅ?とかぁ?」
「そうかよ」
最初から明瞭な答えを期待しない分、失望感は軽減されていた。
さらに時間がたった。
「おい」
「はい?」
「おまえ、食っていい?」
腹が減って、死にそうだった。
「それってぇば、もしかしなくても、性的な意味ですか?
だったら、だめですょー、私にも一応人権ありますからぁー、
もし本気なら、ちゃんと精神的に私を攻略してから、順序踏んでくださいねぇー」
食う気をなくした、こんな奴を食って生き延びるくらいなら、俺は男らしく餓死することを選ぶね、うん、
「あ、いい忘れました」
「なにがぁ」
ベンチに横になって、最大限の延命を図っていたら、
俺を覗き込むように、中腰になって、奴が言う、
「制限時間が過ぎると、隕石がピンポイントに飛来して、死にます」
「おい」
「はい、いま、、制限時間切れですぅー」
ぎれですぅ、のアクセント・イントネーションがウザ過ぎだった、隕石が俺の腹を貫いた、
地獄の苦しみで、のたうち回る俺を、こいつは「ねえ悔しい?ねえ悔しい?」とか、ホンキで煽りにかかる、
もちろん、俺は涙して涙して、助けて助けてと喚き散らして、なにか、介錯のような事を望んだんだ、
しかし、コイツ一切合財無視、最初から最後まで、面白おかしく眺めてくれたよ、本当にありがとうございました、
ということで、何週目か分からない、今。
「とりあえず、腹の減りが無くなった」
「はいはい、ぷふぅっ、」
俺は頭抱えた、そりゃそうだろ、死にたくない、でも、何もしなければ、先ほどの二の舞だ、どうすりゃいいんだよ。
俺はベンチに座って、頭抱えていたんだ。
「ぷふぅつっぷふっ、元気出してください、よしよしぉ」
間違って、こいつ優しいんじゃないかって、想ってしまう。
そりゃそうだ、弱ってるときに、こんな風に、女の子に頭撫で撫でされて、よしよしみたいな感じに、慰められる、
吊橋効果じゃないか、ストックホルム方面で、コイツにときめかないと言えば、それは嘘だ、
最悪な話だが、今の俺には、専属で頼れるのは、本格的に実務的に頼れるかは知らないが、コイツだけっていう、
しかも、見た目は美少女、幾ら見ても、とりあえずは飽きない程度には、圧倒的に美少女だ、
ならば、こんな局面、精神的に弱ってる人間が、逃すはずが無い、
俺は、情けなくもみっともなく、コイツの胸に縋って、嗚咽漏らして泣きに泣いた、
「さてさて、回復したら、次いってみましょう!」
そして今、さんざん泣いて、少し経って、コイツは当然のように、次を迫る、
ゲームの進行役なのか知らないが、余計な世話だ、それは俺の判断することだからだ、
「行かない」
「ふえぇええ! どうしてですかぁ!」
「死にたくないから」
「ふええええ! でもでも!何もしなくても!隕石のインパクトで! 死にますよぉ!」
うっせええな、叫ぶな寄るな、いや寄るのは、ひょっとしたら、良いのかも知れないが、
てか唾が飛ぶんだよぉ、いやまてよ?
てか、唾が飛ぶのを別にいいやって想う神経が、もうなんかメンヘラっぽくてヤバイな、
辛いのに発狂しないのが、コイツの明るさで、無意識に洗脳されて、コイツに対する好感度が上がってる兆候だぜ、最悪、最低、
「知らん、寝る」
俺は横になる、眠れれば、辛い現実から逃避できるから。
「あ、ちなみに、制限時間ってのは、だいたい、どれくらいだ?」
「ふえ、今回は24時間ですよ」
「おい待て、今回ってのは、どういう意味だ?」
「ぶーぶー、教えません、なんでも教える便利キャラって想われるのは心外ですから、今回は教えませんんん」
クソが、どういう位置づけで存在してるか分からない、意味不明生命体の癖に、いっちょ前に自我を持ちやがって、
もし仮に、コイツが無自我系統の奴だったら、ここぞとばかりに犯してるつーに、
「時計」
「はい」
俺は、コイツの腕時計を確認する、だいたい23時間、経った。
「どうするんでうか? 今更、もうクリア絶望的なんですけど、TASしますぅ?」
「死ぬんだよ」
俺は、手首を、そこら辺に落ちてた鋭い石で、掻っ切った。
「おお、それはそれは、」
頚動脈が深く切り刻まれて、溢れ出るように真紅が、俺の生命が、その辺の石畳に吸い込まれていく。
「でも、本当にそれで、そんな、いいんですかねぇ~?」
「知るかよ」
「もしかしてぇ! クリアしたら私と一緒にいられないから、永遠にゲームをループする気なんでうかぁ!」
「勘違いすな、俺は、もう痛い感じに死ぬのは、御免なだけだ」
「そうでうかぁー、まあ、それもいいんじゃないですかねぇ、
死ぬのに飽きるまで、そうやって、続けるのも、まあアリっちゃアリでうから」
「つか、その、でう、、ってのは、、、なん、、、なんだ」
「それはですねぇ」
そこで、意識が途切れた、白で塗りつぶされるような死に型だった。
「その場のノリです」
「しってたわ」
腹も元に戻り、抜けた血も戻って、それでも気力は微妙に初期より下がって、また始まった。




