第二話・私の未来は幸せか、不幸か。
10⚫️
そして獄参も声を張り上げる。「入れ、十三土、鈴子。」鈴子は意を決して襖を開ける。
「失礼します。」鈴子の視界に獄参が入る。筋骨隆々で王座の間に座っていた。
同時にあの日の悲劇、絶望、殺戮、火の海がながれる。鈴子の瞳が揺れる。
獄参はそれに気づく。しかし咄嗟に出て来そうな言葉を飲み込む。
獄参は切り替えるように目を閉じ、開けた。「何をしている、近くに来い。」
その瞳から強い光を感じた鈴子。その眼差しに鈴子は身を竦める。
しかし、鈴子も意を決する。「分かりました。」徐々に近づいて行く。
その度にあの日がまた脳裏に激しく流れる。しかし、ある感情に呑み込まれてはいけない。
「この度は、私を、選んで頂き、誠にありがとうございます。」言葉が詰まる。
私の本能は拒絶を示してる。しかし、花嫁になるという事も、私が決めた事。
9⚫️
そして暫くしてついに、その扉の前に来た鈴子。心臓が痛いぐらいに負の感情が訴えて来る。
全身、息を求めてる。痛みも無いのに本能は逃げたいと戸を叩く。
でも、私は十三土家として、私が今できる事を全うしたいのです。
-落ち着くのよ、鈴子。鈴子の隣には静かに見守るお菊。
その表情は、仮面を付けてるようだった。そして鈴子は意を固め口を開く。
「お待たせしました、十三土、鈴子です。」そしてその言葉は獄参の耳に入る。
-来たか。獄参は妙に高鳴る心臓がある胸に手を当てる。
しかし表情は苦さを感じ歪み始める。「俺には、そんな資格は無い、がな。」
8⚫️
「鈴子が行くのなら、父である私にも、挨拶をするべきでしょうか。」
父上の真剣な眼差しがお菊を射抜く。しかし、お菊は毅然とした態度を保っていた。
「いえ、獄参様は、鈴子様だけをお望みです。」さらに鋭い光を放つお菊。
それに婚儀が終わってからでもお会いになられますよ。」
優時も反論する。「それは、何故ですか。後でも行けるなら今でも良いでしょうが。」
するとお菊は呆れたように、溜息を吐く。「獄参様は、鈴子様としっかりと話したいのです。」
その言葉を言い切ると同時に強い眼光を二人に向ける。金時は沸々と怒りが込み上がった。
しかし、鈴子はそれを制止する。「父上、私は大丈夫で、ございます。」
すると鈴子の瞳に強い決意を感じる。それにはお菊も少し驚く素振りを見せた。
しかし女中の顔となる。「では、鈴子様、参りましょう。獄参様が、お待ちですから。」
7⚫️
鈴子は咲希子にそっと近づき、立てるように手を添える。咲希子は申し訳なそうにする。
「そっそんな、奥様になられる方がっ。」その言葉に鈴子の心に刺さる。重く、痛く。
それは別の意味でもお菊に刺さる。しかし、鈴子は咲希子の背中をさする。
「そんなの、気にしないで下さいね。」咲希子にまた笑みが咲き返す。
-本当に、素敵な笑み。鈴子はまた何だか救われた気分になる。「いつまでそこに突っ立てるの。」
しかし、お菊は水を差す。咲希子は消え入りそうに謝罪を口にする。
「鈴子様。」するとお菊が水を掛けるように鈴子の名を口にする。
鈴子は妙に緊張した。「あ、はい。」お菊は先程よりも更に冷たい顔で口を開く。
「獄参様が、お呼びでございます。」-そう、だよね。私はあの鬼、花嫁になるのだから。
何だか、息が、出来ないような、そんな感覚が私を襲うのでした。
すると父、金時は尋ねるようにお菊に口を開く。
6⚫️
私は咲希子さんの美しさと愛らしさに心を打たれました。まるでお砂糖のようです。
ここに来るまでの緊張が、何だか溶けていく感覚がするのです。
そしてお互いの挨拶を済ませ咲希子さんはその場に立ち上がる。「きゃっ。」
すると両足が痺れたのか、そこから動けなくなった咲希子。まるで足をすくむように。
私達三人は一斉に心配をする。「大丈夫ですか!?。」咲希子は恥ずかしそうに視線を落とす。
「申し、訳ございません。本当に、私ったらっ。」
するとお菊の声が響く。「何をしてるのですか、咲希子。」
咲希子は怯えるように申し訳なそうに頭を下げる。「お菊様、大変申し訳ごさいません。」
-本当に、うるさい子。咲希子は厳しい言葉を続ける。「私に謝るのでは無く。」
するとお菊の視線は鈴子へと向けられる。「鈴子様、その家族ですよ、咲希子。」
一気に場に緊張が走る。しかし、鈴子は咲希子を庇う。「私は、気にしていませんから。」
5⚫️
すると水を差すように襖の向こうから声がした。
「申し訳ございません、婚儀の準備が整いました。」
お菊では無く別の女中のようだ。「はい、分かりました。」
女中は続ける。「私の名は咲希子と申します。失礼ですがここを開けても宜しいでしょうか。」
私は笑みを咲かせて応じた。「はい、勿論、私もさせて頂きたいです。」
そこには癖っ毛の強い長い髪の毛をしながらも幼さを感じさせる青年少女がいた。
その女中は大輪の笑みを咲かせて頭を下げるのだった。「これから、宜しくお願い致します。」
4⚫️
そして襖が開く。遅れて到着した父、金時と優時は余り美しさに目を奪われた。
「鈴子、綺麗だよ。」その言葉に視線を二人に向け笑みを咲かせる。
しかし、どこか悲しそうに切なそうに影を潜めていた。その表情に金時は胸を痛める。
暫く三人に沈黙が訪れる。三人とも何か無いかと会話を脳裏で編ゆんでいくが。
鈴子が口を開く。「まぁ、この姿を二人に観せれて本当に良かった。」
金時は笑みを咲かせて応える。「あぁ、本当に私にとっても大切な日だ。」
それから三人の会話が咲いていく。父のここまでの道中の話。
「それでな、向かいのお婆様も、お前が婚約するのを、心から喜んでいたよ。」
私は照れと溢れそうな笑みを手で抑える。「まぁ、本当に、嬉しいわね。」
3⚫️
そして門の先は美しい光景が広がっていた。鈴子も優時も予想と違い酷く驚く。
もっと悍ましいと思っていた。それに経った一年でここまで修復出来るとは。
鬼がしたのか、はたまた人なのかは分からない。けど今の景色はただの気休め程度だ。
それから城の中に入っていく。どうやら形だけは歓迎模様だ。
多くの鬼、人が正座し頭を下げている。そしてそこには獄参の左右腕がいた。
私に凄まじい緊張が襲う。-この二人は左算と右斬。
そんな二人も正座し頭を下げる。「お待ちしておりました、鈴子様、優時様。」
後退りしたい、鈴子はそう思うが動揺してたまるかとなる。-ダメよ、私。
息を整え口を開く鈴子。「表を上げて下さい。」鈴子は膝を下ろし頭を下げる。
「此方こそ宜しく、お願い致します。」優時もまたそれにならう。
右斬と左算も先程の鈴子のように声を掛ける。しかしお菊は口を開く。
「では、あちらでご準備をさせて頂きます。」右斬と左算はそんなお菊を非難するが。
私は笑みを咲かせそれに応えた。今日中に終わるならそれで良い。
2⚫️
しかし、この女性からは鈴子は歓迎されてないと感じた。
女性の表情からも瞳からも強い光を感じる。-それも、その筈よね。
元々はお互い敵同士なんだから、あくまで契約でしかない。
でも、いつまでもつべこべ言ってはいられない。私を意を決し、笑みを咲かせる。
そして頭を下げる鈴子。その女性は少し面を食らうが頭を下げる。
そして鈴子達は馬車から降りる。同時に鈴子は母と兄に祈りを捧げる。
お母様、お兄様、私を観ていて下さい。いつかこの命が尽きた頃に、沢山お話ししましょう。
そして私が地に足を付いたと同時に女性、女中が声を掛けて来た。
「お待ちしておりました。大変の長旅、ご苦労様でごさいます。
私の名はお菊と申します。いつでも、お菊とお呼び下さいませ。」
お菊の声音は何処か冷たく感じる。そんな氷に負けてたまるかとなり光を照らす。
「はいっ、宜しくお願い致します、お菊さん。」そして私はまた頭を下げる。
同時に優時も頭を下げる。それに対してお菊は思う。-何回、頭を下げるのよ。
獄参様にお屋敷、身内、従者を殺されたのにね。私なら、でもっ。
何だか言いたそうだったがお菊は直ぐに女中として切り替える。
「では、参りましょう。」鈴子、優時の瞳が揺れた。
1⚫️
優時の怒った顔が小さい時の顔と重なり私は更に笑みを咲かせた。「うふふ、私が、悪いわね。」
すると馬車が停まったのです。その反動で身体が宙に浮く感覚。
それは風のように直ぐに収まる。けど全身に緊張が伝う。
花嫁という現実が私に迫って来てる。自分にもっと素直だったら、逃げ出してたと思う。
私は馬車にある窓で観える限りの朱桜城を見渡す。-大きい。
多分、今住む屋敷よりも遥かに大きい。同時にあの日のあの日までの屋敷を奪われた気分だ。
すると優時が口を開く。「ここが、朱桜城、ですか。」優時も緊張してるようだ。
それもその筈だ。何の為に、私を、花嫁にしたのか、それ以上に...。
すると目の前にある大門が開く。その先に思わず目を心を奪われる、鈴子。
そこには一輪の花が咲いてるような一人の女性がいた。-あっ。その女性と視線が重なる。
何て綺麗な方なんでしょう。この方が、この方を花嫁にしてくれたら、良いのにっ。
私の未来は本当に、幸せなのでしょうか、それとも、不幸になるのでしょうかっ。
ご拝読、誠にありがとうございます。




