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勇者の実家

「ここがタマキさんの世界なんですね」


 ジーンズに半そでのシャツを着たカレンが興味深そうに周囲を見回しながらタマキの横を歩いていた。


「ずいぶん違うだろ」

「そうですね、魔法は存在しないと言っても、まるで魔法のように見えるものばかりです」

「だよな」


 そう言ってうなずいたタマキはカレンと同じようにジーンズと半そでのシャツに、帽子をかぶってサングラスをかけていた。そして首から下げているアミュレットをいじくる。


「サモン、お前も面白いだろ」

「そうだな」


 周囲に聞こえないほどの小さな声だったが、何か満足そうな様子もあった。


「ところで、どこに向かっているのでしょうか」

「ああ、俺の家だよ。せっかくこっちに帰ってきたんだし、カレンを紹介しておこうと思って」

「ご家族にですか?」

「そう、まあ家族といっても姉ちゃん一人だけなんだけどさ」

「お姉さまですか。楽しみです」

「楽しいかどうかな」


 そうして二人は古ぼけた平屋の前に到着した。タマキが帽子とサングラスを取ってからチャイムを鳴らすと、中から三十歳くらいの女性が顔を出し、タマキの顔を見るとため息をついた。


「まったく、お帰り」

「ただいま」


 二人の挨拶には時間の壁は感じられなかった。そして、三人は居間のテーブルについていた。


「まずは自己紹介から始めたほうがいいか。あたしは高崎佐織、そこの環の姉」


 佐織がカレンに向かってそう言うと、カレンはゆっくりと頭を下げた。


「初めまして、カレンといいます」

「あんたのことは聞いているよ、うちの弟がお世話になってるみたいで、まず礼を言わしてもらうよ」

「いえ、私のほうこそタマキさんにはお世話になっています」


 その挨拶を受け、佐織は改めて目の前の二人のことをじっと見た。


「恵美ちゃんから聞いてたけど、これならまあ安心か」

「なんか親しそうじゃないか」

「まあね。というより、あの子が無事だっていうのはわかってたわけ」

「まあその話は聞いたから。それより、その感じだとしょっちゅう会ってたりすんの?」

「なんとなく気が合ってね。だから詳しい話も聞いてるけど、できればその前から話してもらいたいんだけど」

「わかったよ」


 それからタマキは一から異世界でのことを説明し始めた。


「なるほどね」


 そしてその説明が終わると、佐織は大きく息を吐き出した。


「色々あったわけだ。それにしてもカレン、まあそう呼ばせてもらうけど、あんたのおかげでうちの弟がずいぶん助かったみたいだしね。それにサモンだっけそっちもありがとう」

「礼には及ばん」


 まずはサモンが答え、それからカレンが口を開く。


「それは私も同じです。世界も、私も、タマキさんがいなければ、無事ではいられなかったはずですから」

「はあ」


 佐織はため息をついた。それからタマキとカレンの顔を交互に見て、もう一度ため息をついた。


「あんた達お似合いだよ。まさかこういうことで弟に先を越されるとはね。で、子供なんかは?」


 カレンはそれに微笑を浮かべた。


「いえ、残念ですが私は子供ができない体なのです」

「ああ、そうなのか。悪いことを聞いたね」


 佐織は頭をかいて少し気まずそうな表情をした。だが、カレンは微笑を浮かべたまま首を横に振った。


「いいえ、言ってなかったことですから。それに、タマキさんと相談したことがあるんです」

「ああ、これから色んな次元に行くことになるんだろうし、カレンと同じ力を持った子がいれば、引き取ってみたいなと思ってる。大体の場合は不幸なことになるみたいだから」

「そう。それならもしそういう子を引き取ったら、ここに連れてきてもらわないとね」

「そうするよ」


 その返事を聞いてから、佐織は立ち上がった。


「さて、しばらくは泊まっていくんでしょ。みんなで夕飯の買出しにでもいこうか」

「いいよ、行こう。カレンも見てみたいだろ」

「はい、是非」


 そうして三人は家を出てスーパーマーケットに向かった。

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