緊急遠征
「オカン、いっくぜぇっ!!」
ユービスは、そう直上にケティアを放り投げる。
「ファイアランス!!」
続け様に、エーシエが連続で、炎の槍をケティアに放つ。
「ママ!!C、A、B、C!!」
ケティアは、アイエルが指定された的へとファイアランスを弾き飛ばす。
炎の槍は、見事にC、A、B、Cの順で、割り振られた的を射抜いて見せた。
そのまま、ユービスは落下してくるケティアをキャッチする。
「だいぶいい感じね」
リンシデで使ったエーシエの精密射撃とケティアの反射防御の連携攻撃の応用版。
そこにユービスの投擲を合わせた上空からの、連続射撃。
地上の魔物の群れに阻まれる事無く、狙った獲物を狙い打てる連携攻撃。
「これは、使い勝手が良さそうですね」
「そうね、色んな状況にも対応出来そう」
ケティアは満足気に笑みを浮かべる。
リンシデでの負傷者の収容も終わり、チッチョルもようやく落ち着きを取り戻していた。
ケティア、ユービス、エーシエは町の郊外にて、演習に出ていた。
そこに、馬で乗りつけてきたのは血相を変えた、ジエスだった。その表情から、普通の用向きでは無いのは明らかだった。
「ケティア!!すぐに遠征の準備をしてくれ!!」
冬の遠征は、寒さで兵の動きがどうしても鈍くなる。ジエスは冬に遠征を嫌うのは、それが理由だった。だが、今回はそれどころではない、相当に差し迫った事態らしい。
ケティアは、ジエスの声は、焦りと苛立ちを感じ取った。
「今回は急を要する。出せるだけの馬を出す。早駆けで行くぞ」
馬使った移動は、どうしてもその足音から魔物に襲われやすくなる。
それに、馬は優秀な移動手段だが、その維持にコストがかかる。金の獅子団は正式な団員は50人に満たない、小規模の傭兵団。保有している馬は、7騎しかいない貴重な移動手段だ。
「今回は、俺とケティア、ユービス、アイエル、エーシエでの5人で先行する。後は馬車で後を追わせる事になる。商人連中にも話は通した」
ジエスにしては、だいぶ無茶な遠征だ。かなり切迫した事態が起きているのだろう。
「準備が出来次第出発ぞ」
「はい、急ぎ用意します」
ケティアの瞳は、まだ見えぬ戦場を見据える。
「目的地は?」
「要塞都市オブリラだ」
チッチョルから馬でも1週間はかかる街。
1週間後は、ちょうどアイエルの誕生日だった。




