みんなでハンバーグ
「ビシデー、ハンバーグー♡」
「まずは、『ただいま』だろ、スットコドッコイっ!!」
馬車から降りるとケティアは開口一番そう言うなり、出迎えたビシデに飛びついた。
ビシデのエプロンから漂う、今しがたまで料理中だったハンバーグの香りがケティアの鼻腔をくすぐる。
「おおっ!!いい匂いがする!!」
「犬か、あんたは…」
「おばさん相手だと、なんでオカンってああなんだろうな…?」
「いつも、楽しそうだよね…」
はしゃぐ母に、ちょっと恥ずかしい、やれやれ顔の兄と妹。
そんな親子の微笑ましい様子に、エーシエは楽しそうにクスクスと笑った。
ケティアをやっとの思いで引き剥がすと、ビシデは馬車の横でおずおずといたたまれないように佇む、イアールと目が合った。
ビシデは、イアールへと歩み寄る。
思わず身構えるイアールの頭をビシデはわしゃわしゃと豪快に、頭を撫でた。
「ボウヤも大変だったろうが、もう大丈夫。今日はお腹いっぱい食べていきな」
そう言って、豪快にニカっと笑って見せた。
「ビシデー、私もー♡」
「あんたはさっさと、怪我人を医療院に連れていきな!!」
「おばさん相手だと(以下略)」
「いつも(以下略)」
はしゃぐ母に、ちょっと恥ずかしいやれやれ顔な兄と妹。(2回目)
そんな親子の微笑ましい様子に、エーシエは思わず声を出して笑い出すのだった。
ハンバーグの誘惑に、医療院への怪我人の移送と、入院の手続きを爆速で済ませると、ケティアはエルモンド邸まで自慢の瞬足を飛ばす。
そして、玄関を開け放つや、いなや…
「ビシデっ!!駆けつけ3枚!!」
「手ぇ洗ってきな!!」
――ハンバーグの駆けつけ3枚って、何…
ユービス、アイエル、エーシエの心の声が重なった。
手を洗い、ようやく食卓に着くと、お待ちかねのビシデ特製の3段重ねハンバーグがケティアの前に運ばれてくる。
「それじゃ、アイエルお願い♡」
アイエルに早速、切り分けをオネダリするのだった。
ハンバーグに夢中なケティアに、目を丸くして驚くイアール。
ケティアは既に5枚のハンバーグをたいらげていた。
「いつ見ても、すごいよね」
ケティアの健啖ぶりに呆気にとられるイアールに、エーシエはクスクスと笑いながら話しかける。
「ええ…いつもこうなんですか…?」
「まぁ、割といつもかな…」
一方で、イアールは食べる手が進んでいない様子だった。まだ、1枚目のハンバーグがまだ半分ほど、皿の上で冷めてしまっている。
イアールは、とても食事を楽しめるような気分にはなれなかった。
「口に合わなかったかい?ボウヤ」
イアールを見かねて、ビシデが話しかける。イアールは、その言葉にブンブンと頭を振った。
「今は、まだ食事を楽しめるような気持ちになれないんだろ?」
「えっと…ごめんなさい…」
「謝る事じゃない、色々と事情は聞いてるからさ」
頭をわしゃわしゃと撫でると、ビシデは言葉を続けた。
「辛いのは、心がちゃんとしっかり動いてる証拠。動いているなら、きっと癒えるから大丈夫」
ビシデは、ケティアたちの方を見て目を細める。
「今は、元気を出せとは言わないさ、でもね、安心はしな。ここなら独りじゃないさ」
その言葉にイアールは、少しずつゆっくりとハンバーグを食べ始めた。
「そう、ゆっくりでいいんだよ」
「ビシデー、おかわりー♡」
「あんた!!もう少しゆっくり味わいな!!」
その様子に、クスクスと笑い始めたイアールを見て、ビシデは満足そうに目を細めた。




