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みんなでお食事

「ハンバーグのおかわりをお願いいたします♡」

ケティアのハンバーグ、おかわり4皿目のオーダーが入る。

店の看板娘であるウェイトレスも、他の客たちも、ケティアのその小柄な見た目にそぐわぬ食べっぷりに目を丸くしていたが、金の獅子団のメンバーにとってはいつもの事、顔色1つ変えずにいたのだった。


「こんなに美味しい食事は久しぶりです♡

このお店はいいお肉使われてるみたいですね♡」

その言葉は厨房の店主の耳にも届いていた。

事実、この店のハンバーグは、毎朝、店主自らが市場で選びぬいた肉を使った、店の自慢の逸品。その違いを分かってくれる上客に、店主は料理人の幸せを噛み締める。


――ここまで喜んでもらえるなんて、こりゃあ、作りがいがあるってもんだぜ…


気合いを込めて、本日4枚目のハンバーグをひっくり返した。


「ママ、ほんとにお肉好きだよね…」

久々の豪華な晩御飯にはしゃぐ母の一方で、アイエルはげんなりとしている。

右腕の無いケティアの代わりに、既に3皿のハンバーグを切り分けていたのはアイエルだったからだ。

「お兄ちゃんも、たまには代わってよ…」

「ユービスは、アーンてしてくれないんですもん」

「するわけないだろっ」

まぁ、年頃の男の子が母親にそんな事をする訳がない。


つれない息子の態度に、母がブーブーと文句を言う中、看板娘がおかわりを持って現れる。

「ハンバーグステーキ、おかわりお持ちしました〜ごゆっくりどうぞ〜♡」

テーブルに置かれたハンバーグ、そして立ち上る湯気と共に薫る幸せな匂いに、ケティアは再度目を輝かせる。

「では、アイエルお願いします♪」

「は〜い…」

ハンバーグを前にウキウキしている母の笑顔に押し切られ、アイエルは4枚目のハンバーグにナイフを入れた。


「おう!!相変わらず、景気の良い食いっぷりだな!!」

声と共に3人のテーブルに、ジョッキを片手に持ってジエスが乱入してくる。

機嫌よく上気した赤ら顔は、見たところだいぶ美味しく酒が進んでいたようだ。

ジエスの後ろのテーブルでは、他の団員たちも騒ぎながら楽しそうに酒を酌み交わしていた。

移動や野営の多い傭兵団では、今回のような店で酒を飲める機会は多くない。

みんな、この機会に大いに酒宴を楽しんでいるようだった。


「団長も、楽しく飲んでいるみたいですね」

「おう!!ここは良い酒置いてるぞ!!ケティア、お前もどうだ?」

「そうですね、日記を書いたら、私も後で御一緒させていただきます」

ガッハッハッと機嫌よく笑うジエスに、ケティアも口を拭くと上機嫌で席を立った。

「ご馳走様でした、とても美味しかったです♪」


――あんたも、最高に良いお客だったぜ…


部屋へと戻るケティアの背中に、店主は心の中でグッと親指を立てた。


部屋に戻ると、ケティアは日課にしている日記をいそいそと付け始めた。

今日は赤の魔石が出たり、アイエルが仕事ぶりを褒められたり、大好物のハンバーグがとても美味しかったり…

今日あった事をルンルンと上機嫌で日記に書いていたケティアだったが、不意にドアの向こうから騒ぎ声が聞こえてきた。

それに続き、アイエルの足音が急いでこちらに向かってくる。


――やれやれ、またですか…


「ママ!!お兄ちゃんが!!」

「今行きます」


階下では、ジエスになだめられながらも羽交い締めにされているユービスと団員たちを相手に、数名の酔客であろう男たちがいがみ合っていた。

「今回の原因はなんですか?」


諍いの原因を聞いたケティアに、アイエルは一瞬言いにくそうにしたが、赤面しながら、モニョモニョと原因を話し始めた。

「えっと…その…私がお酌するの断ったら…あの人たちが…私の、胸の事とかバカにしだして、そしたらお兄ちゃん怒っちゃって…」

今にも泣き出しそうな娘の言葉に、母の目は、すっと殺気を帯びる。

「それなら、お兄ちゃんは悪くないですね…」


アイエルは高い背丈をしており、その年齢には不釣り合いにスタイルが良い。

更にその大人びた容貌のせいで男性から性的な目で見られる事も多々あったが、今回は特にタチが悪いケースだったようだ。


一触即発の空気の中、ケティアはその中に割って入る。

「どうも、穏やかじゃないですね…」

ケティアの一言に、金の獅子団のメンバーたちはこれから起きる事を察した。

その言葉には、その目には、静かな怒りが満ち満ちていた。

「オカン!!そいつら、エルの事…」

「ええ、アイエルから聞きましたよ。後はお母さんに任せてください」


「おいおい、俺たちは、そこのねぇちゃんにお酌を頼んだだけだぜ…?それなのに、つれねぇよなぁ?」

酔客の男たちは顔を見合わせると、下衆な笑い声を立てる。

「それとも、このちっちゃなママちゃんが代わりにお酌してくれんのかぁ?」

ケティアをバカにしたその言葉に、男たちの下卑た笑いは一際大きくなった。

しかし、その様子にもケティアは顔色ひとつ変えずにいる。

「当たり前です、ウチの娘はそんな事はしませんので」


男たちは、ケティアの目に宿る物に気づく事なく、更に言葉を続けた。

「あんな良い体してんのによぉ、あれじゃ宝のもち…」

そう男が言いかけた次の瞬間、その体が壁に叩きつけられた轟音がホールに響いた。


ケティアの放った一蹴は、軽々と男を吹き飛ばした。


ホールに居た者は皆、一瞬、何が起きたのかが分からなかったが、起きた事を把握できると、酔客たちの中でも一際大きな男がケティアに殴りかかった。

「てめぇっ!!よくもっ!!」


だが、ケティアは何事でもないように男の拳を左手1本で受け止める。

男は、ようやくその目に込められた殺気に気づく。

しかし、それはもう遅すぎた。


「『よくも』はこちらのセリフです。『よくも』うちの娘に酷いことを言ってくれましたね」


そう言って、ケティアが左手で男の腕をひねると、屈強な男の身体は腕を軸に宙を舞い、いとも簡単に床に叩き付けられた。


「…タダで帰れると思わないでくださいね」

ケティアは残りの男たちを冷たく睨みつけた。

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