馬車に揺られて
チッチョルへと向かう馬車の中、緊張が解けたのだろう、馬車の心地良い揺れでアイエルはうつらうつらし始めると、コテンとケティアの膝枕でスヤスヤと寝息を立て始めた。
「アイエルちゃん、頑張ってましたからね」
エーシエは、アイエルとケティアの微笑ましい姿に、フフッと笑顔を浮べた。
母はゆったりと娘の髪を撫でた。
その寝顔に穏やかに微笑んだ。
そして…
「よし!!イアール君もおいで!!」
そう言って、左手をイアールへと差し出した。
突然の申し出に、イアールは驚きのあまり、あたふたと真っ赤に頬を染めた。
エーシエとユービスも目を丸くしている。
「えっ!?あ…いえ、僕は大丈夫ですので…」
その言葉に、ケティアはふわりと優しく笑いかける。
「全然、大丈夫って顔してないわよ」
ずっと、弟の安否を考えているのだろう、出立の時から、イアールの表情は重く沈んでいた。
それがどうしても、ケティアの中でずっと気がかりだった。
「ほら、アイエル起きちゃうから」
そう言って優しく手を差し伸べ、微笑むケティアに、イアールはおずおずとその手を握った。
「捕まえたっ!!」
ケティアはイタズラっぽく言うと、そのままグイッと引っ張り、左手でイアールを抱きかかえる。イアールはされるがままに、ケティアにもたれかかった。
「暖かいでしょ?アイエルみたいに、眠くなったら、眠ってもいいからね」
「はい…ありがとうございます…」
「暖かいでしょ。イアール君もゆっくり休んで」
ケティアはそう言って、今度はイアールの翡翠色の髪をゆったりと撫で始める。
イアールは安心したように、ゆっくりと目を閉じ、やがて眠り始めた。
スヤスヤと寝息を立てる2人に、ケティアは馬車に揺られながら、微笑む。
そんな中、エーシエと目が合ったケティアは、お互いにフフッと笑い合うのだった。




