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喪った命と
医療院へと向かうケティアたちを見送ると、ジエスは1人、宿のテーブルに着いた。
懐から、今回喪くした4人の遺品たちを並べると、その前に同じ数のグラスを置いた。
――フリュー、ニアッカ、ヒヴィン、クサン…
4人の顔を鮮明に思えば思うほど、ジエスの視界は涙で滲んだ。
『ふた首』以上との戦闘は、1つの『首』の時と比べ、格段に難しい戦場となる。
今回の戦闘では、延べ729人にものぼる命が喪われた。
教会では、今も死者を悼む祈りが捧げられている事だろう。
だが、この街は、そのうち、商隊の持ち寄る、金と物品たち。
そして、掃討戦で狩り取られた多くの魔石たち。
それらがもたらす好景気に、街の戦後復興は、瞬く間に行われ、癒える心に、人々は戦の痛みを忘れて去っていく。
この献杯は、そんな世界の営みにすり潰されていった者たちを悼む為の、せめてもの弔いの酒だった。
ジエスは、いつもの調子でなみなみと酒を注ぐが、その手は震えて、グラスからは茶色の酒が零れる。
「なぁ…すまんなぁ…つぐのが下手で…」
金獅子の、その茶色の瞳からも涙が零れ流れた。




