表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
3部 2章 バカンス
57/72

 博物館の展示が見終わった後、私たちは役人の案内で指令室にたどり着いた。

 そこは講堂みたいな斜めに降りていくオフィスだった。座席は等間隔に設置され、それぞれ専用の操作端末があり、老若男女キーボードを打ち込みながらモニターを睨んでいる。

 階段を降りて全体を見渡される最下部にいくと、白髪に白髭の軍服男性と、華奢で褐色肌を男性が直立して待っていた。

 私服姿の私たちに、業務を行っていた彼らが手を動かしながらこっちを見ている。

 ――なんか、やけに視線を感じるな。


「お時間をとらせてすみません。私はピアートの宙域の総督ゴルグです」

「補佐官のオシヤと申します」

 私たちもおずおずと頭を下げた。

 褐色の男性である秘書官のオシヤさんは、人懐っこい笑みを浮かべて、

「お会いする時間が遅れて申し訳ありません。展示物はどうでしたか?」

「どれもすごく楽しませていただきました!」

「それはよかったです。我々としては、先人を切った二方の後追いにすぎません。ここにいる誰もがツクモさんとミュートさんを憧れておりますよ」

 全員に聞こえているのか、周囲の作業員さんが一斉に立ち上がって私たちに会釈した。

 わわわ! 滅相もない!

 慌てておろおろするが、彼らは冷静に業務に戻った。

「もしトネリコの業務が終わった暁には、この基地に務めることもお考えください。重要なポストを約束しますので」

「え、あ――」

 まったく考えていなかった。返答に困っていると、ミュートさんが前にでた。


「何の用で呼んだ?」

「これは失礼しました。お二方へのおもてなしです。ピアートへ行く前に、こちらでごゆっくりされてはどうかと。くつろげるお部屋と、些細なものですがお料理をご用意しております」

 私はミュートさんの脇から顔をだすと、

「何の仕事もしてないんですけど、いいんですか?」

「もちろんですとも。お二人は大切な客人です。セレモニーまでお楽しみください」

 私はミュートさんの顔を見上げると、表情が強張っている。偉い人の前だから緊張しているのだろうか。でも、そんな性格かなぁ。


「ところでピアートにはいつ来訪されますかな?」

 総督であるゴルドさんが髭をなでながら訊いた。真っ白い、ハの字の立派な髭!

「ピアス政府から2週間の接遇を受けている。ただ、国費を食いつぶすだけだから、一週間前に入国して式典後に帰るつもりだ」

「……みたいです」

 いつもなら私が説明するのに、わざわざミュートさんからいうなんて珍しい。

 そもそも、今回の100周年セレモニーの招待はやたら私に情報が少ない。ほとんどのことはミュートさんに伝わっているのだけど、そのことを尋ねたら、

『ツクモにサプライズがある。楽しみにしておけ』

 というのだ。

 ミュートさんのことは信用しているから何も訊かないけど、気分はお姫様気分だ。


「あとで入国予定日をオシヤ秘書官にお伝えください、そこからピアス政府にお伝えしておきます。私は業務に戻るので、これにて失礼します」

「ツクモ様、ミュート様。どうぞこちらへ」

 オシヤ秘書官は丁寧に頭を下げた後、出入口まで階段をゆっくり歩いた。通路脇で業務をしていたデスク担当は、謎のデータやオーリスの映像を見つめている。すごい、いっぱい調べてるなぁ。

 廊下にでて視線がなくなると、オシヤさんが手をだして握手を求めた。

「すみません、正直お二人に会えるとはおもってもみませんでした。私の名はオシヤ・バージニア。じつはいうとミレイヤの親戚にあたるのです」

「そうだったんですか!」

「はい。ミレイヤ様は多大な多大なご貢献をされていたと、我々も認識しております。その御友人と会えるとおもうと感動でなりません」

 私とミュートさんは呆れながら目を合わせた。

 たしかにミレイヤさんとは友人の仲だけど、最初の頃は敵対視してたよなぁ。

「あの人は元気でやっていたでしょうか?」

「私の伯母でしたが、直接の指導は受けておりませんでしたが、大変気配りができた方と記憶しております」

 そっか……。トネリコにいるときと変わらずに生きていたんだな。

 少し悲しいけど、ミレイヤさんが健やかに人生を全うできて嬉しくなった。


 廊下を歩く途中、人気がいなくなったときにオシヤさんが立ちどまった。

 道に迷ったのだろうか。暢気にそうおもっていると、振り返って厳しい顔つきを向けた。

「ツクモ様、ミュート様。一つだけ、忠告いたします」

「な、なんでしょう……」

 うぅ、怖いな。失礼なことやっちゃったかな。

「いまは世相が荒れております。くれぐれもお気をつけください」

「物騒だな」

 ミュートさんも険しい表情に変わる。

「仕方ありません。住める土地があると多くの欲望が動きますので。ただ、あの方が生きていれば、さぞ嘆いておったことでしょう」

 オシヤさんの瞳が曇った。

 それからまた踵を返して、客室に案内してもらう。

 

 私は胸のうちのわだかまりを消化したくて、隣を歩くミュートさんの腕を取って立ちどまらせる。

 ん? と、不思議そうにこっちを見る彼に、私は背伸びをして耳打ちした。

「――なんで人は宇宙の暮らしに満足できないんだろうね?」

「俺に聞くな。俺は海底か地底に住んでいたい」

 尋ねた人を間違えたか。

 まぁ、私も細かく分類すると人類でなくフェアリーだ。人の気持ちがわからないものかもしれない。

 人が争う理由をちっともわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ