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WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
3部 2章 バカンス
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宇宙博物館

 宇宙ステーションからワープを経てピアートへ向かう。

 前回までは、目玉のないド田舎の宙域だったのに、いまでは2隻の宇宙船が追従した。一隻は政府の運搬船で、もう一隻は私たちと同じく民間機だという。交易品や民間人を乗せているそうだ。

 最初の旅からは信じられない光景だった。

 ピアートは中央政府の電子ネットでHOTな惑星で、コロニー出身者や宇宙の旅人が永住希望をする星になったのだ。


 期待を胸に抱きながら1年かけてピアート宙域に着くと、これまで見たことない景色が広がっていた。

 青い星を囲むように、小さな光が各所に輝き、そこへ衛星オーリスから発射する一直線に伸びた熱が宇宙を切り裂いている。その熱は透明なレンズにより屈折を起こして、青い惑星へ伸びているのだ。

 近くには電子ネットによる宙域範囲制限されており、モニターには「オーリス軌道上注意」の警告が貼られた。

 感動しているところへ、一緒に航空していた政府の船から連絡がきた。

『こちら政府巡洋艦シロタ。君たちを本部に案内する。そのままついてきてくれ』

 補助席にいる私は、操縦席のミュートさんに思わず向いた。

「えぇ!? たまたま一緒に来たんじゃなかったの?」

「みたいだな。あいつらの仕事は運搬ではなく、俺たちの護衛だったらしい」

「これってついて行ってもいいんですか?」

「約束の日まで一週間の余裕はある。どうせ遊びに来たんだからいってもいいだろ」

 たしかに。

 運転手はミュートさんなのだ。私はそれに付き従おう。


 彼らが向かう先はモニターからでもわかる巨大な戦艦だった。それを拡大して検索をかけると情報が開示された。戦艦基地の名はトイロ。衛星オーリスの公転軌道の管理や、コアエネルギーの調整や維持、また周辺宙域の警備などを行っている。いわばピアートの生命線でもあった。

 中央政府が私たちを護衛しているのは気がかりだが、あの基地にはオーリスが液体コアを放出する情報があるのかもしれない。

 私たちが穴を開けた100年の歴史。それが見に行けるのかとおもうと少し興奮した。



 おぅ!

 わぁあ!

 どひゃー!

 マントル内部の図を見つめていた私は、驚きの声をあげる。

 我に返ると、ミュートさんが壁によりかかったまま、こっちを白い目で見ていた。

「ちょ、ちょ、なんか変態だとおもってませんか!」

「いや、普通に気持ち悪いだろ」

「あなたに言われたくないですよ!」

 ――私たちがいるのは、宇宙戦艦基地『トイロ』の中にある博物館だった。

 政府が管理している宇宙基地だが、宿泊施設や補給物資の売買ができる一般エリアがあり、そのなかには政府管轄の宇宙博物館もあった。


 展示内容は、おもに衛星オーリスが人工太陽となった歴史である。

 私たちが穴を開けた後、疑似太陽としてピアートへ光と熱を送る軌跡が描かれていた。

 始まりはトライズがオーリスの地底採掘を行った後からだ。

 政府の研究員たちは飛行データをもとに、内部の地図や地質、最適化ルートなどを研究した。洞窟内に吹き上げたガスの嵐、きらきらとした鉱石地帯にマグマの海。それらを探知しながら、安全なルートを改めて作り出した。

 彼らは無人偵察機を用いてガスやマグマの噴射口を特定した後、その直上、あるいは噴射口にある岩石や鉱石を爆破して塞いだ。さらに液体コアの最短ルートも新しく掘ったことなども記されていた。

 展示物の後半では、宇宙空間での苦難も紹介している。

 中央政府は惑星ピアートへ熱放射を維持するために、偏光レンズを設置した。

 最初期はコアエネルギーを惑星に直接向けていたが、氷が溶けて大地が露出したころになると、その熱量の多さを危惧し、レンズを透して放射量の調節をおこなった。おかげでピアートの地表は、四季を満喫できる大陸や、常夏のリゾート地などが増えたのだ。

 これらの調整はミレイヤさんがやったと推測する。隣人が紛れもない偉人になったことに深く感動してしまった。


 展示物を見終わると、博物館のグッズが並ぶ売店にいった。

 様々なお土産を眺めながら、一際大きなパンフレットを手にする。ぱらぱらと解説文をなぞるが、そこで確信に至った。

 やっぱり、違和感がある。

 近くでオーリスのレプリカをもっていた相棒を手招きする。

「ミュートさんは気づきましたか? 地底探索にいったのは、私とミュートさんの名前だけになっています」

 どの説明文のどこを読んでもケインさんの名前がなお。

 ケインさんもピアート復興の功労者だ。彼がいなければシード264の運搬もオーリスの脱出もできなかった。

「なんで名前が載ってないんですかね?」

「ツクモはどうおもう?」

 逆に質問されるんかい。

 私は顎に手を置いて悩んだ。

「これは憶測ですけど……ケインさんはピアートの未来人だからじゃないでしょうか」

「なるほど」

 ミュートさんは私の意見をバカにせず頷いた。さすがムービーマニアだけあって、理解が早い。

「ケインさんは何かしらの力でタイムスリップして、ピアートの歴史修正のために私たちと接触したんです。だけど、歴史に本人の名前があったら、タイムパラドクスが生じるからいないことにした」

「一理あるな……」

 ミュートさんは穴の開いたオーリスを覗き込んだ。

「ほかに何か考えられますかね?」

「……俺は他人を詮索するのは好きじゃない。ただ、こうなったのはあいつの思い通りなんだろうと感じている」

「ゴールドブラッドも持っていかれましたからね」

 あれだけは少し残念だ。

 液体コアと共鳴するってことは、内部に惑星コアの一部が入っているかもしれない。

「もしかしたら、未来に帰るためのエネルギーかもしれません」

 ミュートさんは静かにレプリカを戻した。

「未来人か。よくできたSFだな」

 およそ、自分の言葉を信じてないような口ぶりだった。


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