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WANTED GIRL ~惑星をなおす少女~  作者: 野乃々
2部 序章 ブラックホール基地
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片思い

 二週間が経過した。

 事情聴取が終わったけど、ミレイヤさんは監視を続けている。

 もしケインさんから連絡が来たら私たちはトネリコを出発するだろう。そのときはミレイヤさんも一緒に来るかな――間違いなくついてくる気がした。

 どうにかできないものか。私たちより権力をもつ彼女を止めるのは難しい気がした。


 それ以前に、最近はタスクが増えすぎて人工太陽の計画が手つかずだ。

 本当ならすぐにでも出発してピアートを救いたいのに、日常に追われてまともに考えが浮かばない。


 唯一浮かんだのは戦争兵器だ。宇宙戦争では、シリンダー型コロニーを極太のレーザーとして転用していた。これの出力を調整し、地表に当て続ければ太陽の代わりにならないだろうか。

 だが問題は山積みだ。仮にピアートの地表の氷を溶かすことはできても、発射後の再充電に数十時間を有するため、太陽のように常時光を与えらられなかった。

 なにより運搬方法がない。大型レーザー砲は移動力に乏しく、ワープ装置より巨大なため転移できないのだ。ケインさんの技術でもシード264のサイズが限界みたいだから、ピアートまでもっていく術がない。そもそも、運んだところで半永久的に使っていいわけではないし。

 うぅ、相談できる相手といえば――やっぱりミュートさんしかいなかった。


 覚悟を決めて、みんながよく使う食堂へいくと、ミュートさんとリツキさんが隣同士で座っていた。

 ミュートさんは少し髪が伸びて、無精ひげもあるけど、瞳の色は少年みたいに澄んでいる。リツキさんはブロンドの髪をミュートさんの腕に置いたり、ときどき指を重ねたりして、付き合っているようなオーラが出ている。


 正直、直視できなかった。

 ミレイヤさんもそうだけど、どうして彼の周りは美人でスタイルのいい人ばかりなのだ。しゃれっ気のない芋女の私がミュートさんに会うのも気が引けた。

 自称深海魚のあの人だ。私みたいな海面魚を煩わしくおもうだけなんだ。

 あぁもう、やめようかな。一人だけで考えようか。

 だめだめ、弱気になるな。

 私はピアートで眠る人のために頑張らなきゃダメなのだ。

 心を鬼にしてミュートさんが一人になるのを見計い格納庫へ向かった。


 自動ドアを開くなり、見てはいけないものが視界に入った。すぐさま二台並んでいる探査艇の間に隠れる。

 堂々していいはずなのに、何やってんだ私は。

「最近やけにそわそわしてるじゃない。またこれで宇宙にいくの?」

 透明感のあるやんわりと綺麗な声が響いた。その声を聞くだけでウェーブかかった髪の美人を思い出してしまう。

「――――」

 返事がなかった。

 ふっと緊張感が切れる。相変わらずでよかった。てかなんで安心してるんだ……。

「次は私もつれていってよ。氷の星、見てみたいな」

 耳をくすぐるような甘い声が響いた。

 いやだ。

 声に出したかったけど、そんな権利ない。私は彼を間借りしていたにすぎない。

 好きにしろ。そんな声が頭によぎって苦しくなる。


「俺はあんたの宿り木じゃない。居場所は自分で見つけろ」

 ――――。

 息が、詰まった。瞳がやけに乾いていることに気づいた。

 スパイダー型AIの稼働音がやけに響いている。

 なんで、否定したんだろう?? 誰とも関わらず興味もなさそうな、自称深海魚のあの人が。

「あの子が好きなの……?」

 私の心臓がトクンとはねた。

 ドキドキしながら聞いている。

 好きっていわれたらどうしよう。ミュートさんに好かれてるなんて何も考えてなかった。

「あれは、探しているんだ。だから手伝っている」

「答えになってないよ」

 そうだよ……。

「俺は、誰かに縋るつもりはない」

 やんわりとした拒絶だった。


 ミュートさんが取られる安心感よりも、自分もそう思われる不安のほうが勝った。彼の性格はわかっているつもりだ。軽い世界にいられないこと。引力が強い場所じゃないと自分を表せないこと。チョコレートが大好きなこと。

 他人を傷つけまいと、穏便にすませようとすることも。


 ……私もいつかは拒絶されるのだろうか。


「ごめんなさい……いままで邪魔だったよね」

「あんたと俺は違う。それだけだ」

「ミュート、変わったね。あの子と一緒にいたから?」

 また、スパイダーAIの稼働音が漂う。今度は返事がなかった。

 いつものミュートさんだ。きまりが悪いとだんまりを決め込む。悪い癖だ。

 私は肯定してほしかったのだろうか。


「……あなたと一緒に宇宙を旅したら、そばにいられたのかな」

 いまにも泣き出しそうな声に、身体中の悪いものがぐるぐる巡る。

 恋をしている声だ。どうしようもなく彼が好きで、そばにいたいと願っている。

 ――でも。

 あの人とのロマンスはなかったし、すごい失礼な人だし、羨ましさがさっぱりわからない……。

 400年の恋だって一瞬で覚めるはずだ。

「時間もらって、ありがとうね。またミッションのときはよろしくね」

 作ったように高い声と、駆け出す足音が聞こえた。

 リツキさんは長い髪をなびかせて通路へ出ていった。泣いていた。一瞬目が合った気がしたけどきのせいだろうか。

 もしかしたら、私は恨まれるのかな。

 てか、どうしようこの状況。いま顔をだしたら盗み聞きがばれるし、でもずっと隠れているのも罰が悪い。

 その瞬間、不意にドアが開く音がした。

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