未知との遭遇
少し歩くと、尾が胴体の三倍ぐらいある魚の形をした潜水艇を発見した。頭部には掘削作業ができるドリルと、頬の部分に砲身がついている。これで氷を割ったのか。
たしかに全長は龍みたいな形だ。装甲に触れると材質は硬く、トライズの潜水モードに似ている。これなら酸の海も泳げるだろう。
うぅ、龍だとおもっていたのに……。この星に生命がいなかったことが悔しい。
潜水艇の隣には、二翼がついた一人乗りの航空機が着陸している。
なんだろう、トライズみたいに空と海を移動できるタイプなのだろうか。
暗がりを進むと大きな両扉が現れる。ミュートさんが境目にあるボタンを押すと、扉は重い音をたてて開き、中央に線がある車両用の通路が奥まで伸びていた。
「電気が生きているからまだ大丈夫だが、浸水していたらすぐに引き返すぞ」
「わかりました」
この地下都市が、中央政府の生まれる前にあったものか、歴史の闇に葬られたかわからない。ただ、科学技術は確かなものだ。
脇の歩行路を歩いていると小道と大通りに分岐する。
どちらに向かおう。
そのときだ。左脇の細い通路から眩い光が灯った。咄嗟にミュートさんも懐中電灯を照らす。互いの光が交差して、目の前の空間だけが輝いた。
何かが近づいてくる!
生き残りか。あるいは警備AIのライトか。
まいった、何も武器を持ってない。レグダで購入すればよかったかも。
ミュートさんはライトを消すと両手を上げた。接触を試みるつもりだった。
緊張で身体が熱くなり、ツナギの奥から汗が浮かんでいるのがわかる。
発光する視界の中、足音が近づいてくる。
光が消え、非常灯の明かりから短髪で額が見えた。身長はミュートさんと同じくらいでやや筋肉質。目は大きく私たちを見て驚いている。頬にしわがあり、ミュートさんより一回りほど年がいってそうだ。
「tgbほk、vswg」
すぐに言葉が理解できなかった。宇宙政府の管轄にない言語。独自で生まれた文明か。
チャンネルが合うまでしばらく音声のやりとりが必要だ。私たちフェアリーズは培養液の中で教育され、多数の惑星言語を耳や脳に馴染ませている。ことばは文法と抑揚と固有名詞で構成されるため、類似パターンを計測しチャンネルが合えば大体使えた。さすが、優秀な遺伝子でうまれたというべきか(まぁ、政府公認の翻訳機を使えば同じことができるけど)。
「んhjきゅp、運命ということか……」
不意に言語チャンネルが合う。テラ語? この惑星も陰の転換点の影響を受けたのか。だとしたら話は早い。
「すみません。私たちはこの星の海に生物がいるとおもって宇宙から来たんです。いろいろあって水中都市を見つけてたどり着きました」
男性は私がテラ語を使ったことに驚きつつ、ふむ、とひとりごちた。
「ありがとう。私はこの星の住人ケイン。誰か来たらコールドスリープから目覚めるようプログラムしたんだ」
ケインさんはにこやかに笑みを浮かべた。
「私が眠ったのは2000年前のことだ。この間、宇宙で何があったか教えてくれるかな?」
私とミュートさんは互いに顔を見合わせて頷いた。




