88 再会と暴露 今と昔を紡ぐ者達
「ら、ライトニング、貴方遂にエンペラーズにまで手を出したの!?」
アンナは、頭を抱えて呆れ顔で言った。
「大丈夫。この天才君は本当に天才だし、私も役立つ魂之力を持ってるから」
アカネはテンヤの腕を引き寄せて、恋人の様にぎゅっと腕を組んで自信満々に話した。
テンヤはびっくりした表情をした後、恥ずかしそうに腕組みを外そうとしていた。
「そう言う問題じゃ無いんです、アカネさん。今までは魔将軍とか魔王軍の最高戦力とかでしたけど、今回で本格的にナハト教団にも狙われかねないですよ!」
ミズキも続いてライトニングを叱る。
「いや、ナハト教団は、魔王軍の下についてる組織なんだから、もう敵に回してるだろ? 実際幹部の二人は倒してるわけだし」
ライトニングは苦笑いを浮かべて言う。
「それはそうですけど、そうじゃなくて……」
ミズキもアンナ同様、頭を抱えた。
「ハハッ、心配しなくても大丈夫だって、僕がなんとかするからさ」
ライトニングは胸を右手で叩き、啖呵を切った。
「それに、こいつ等はいずれ絶対に魔王軍を裏切ってたであろう奴らだ。味方に出来るならしといた方が良いに越したことはない」
「そう、ですね」
虹雷剣の皆んなはまだ警戒を解けずに居た。
そりゃあそうだよな。ディストラやルナの時もそうだったけど、いきなり敵組織の主力を仲間にする、なんて安心できないよな。
「どうせ今日明かすつもりだったし、さっさと僕達の前世について明かすか。2人共話してくれるか?」
「ん? あぁ良いぞ。そっちの方が繋がりも深くなって信頼度も上がるだろう」
「私も同意見よ」
虹雷剣達はいきなりの事で戸惑いを見せている。
「あっ!ルナも起こしとくか」
「え、ルナちゃんが居るの?」
アカネは顔が一気に明るくなった。
「うん。ほらあそこのソファーで寝てるよ」
「本当だ!」
アカネは今にも飛びつきそうな勢いで大きな声を出したが、なんとか我慢していた。
その後、ルナを優しく起こした僕は、テンヤとアカネの席を僕の近くの席に用意して座った。
「それじゃあ今から僕達の前世について話す。まぁ無理だと思うけど、落ち着いて聞いてくれ」
ライトニングは椅子に深く座り直して話し始めた。
話の内容は、ライトニングとテンヤ、そしてアカネの神話の時代に起きた事と地球での転生転移するまでの出来事や生き方、関係性まで事細かく話した。
テンヤとアカネが地球に居た頃の出来事などは、本人が語った。
途中まで話したあたりからは、他の皆んなは真剣に聞いていたが、ラビッシュだけは退屈になったのか机に寝そべって寝息を立てていた。
ライトニング達3人の話を最後まで聞いた虹雷剣の皆んなとディストラは、困惑と驚きが混ざったよくわからない表情を浮かべていた。
「え? 貴方が神話の時代最強と言われている始まりの魔王ディアブロ?」
アンナは身を乗り出してそう言った。
「確かに貴方程の強さなら納得だし、現に神を倒している。でも、そんなのってあり得る? いいえ、あり得ない。でも、ライトニングならあるいは……」
アンナは、暫くブツブツと独り言を喋りながら葛藤していた。
「いや〜、魔王様を裏切ったのに、まさかもう一人の魔王様に仕えていたとは、面白いことになってたんですね」
ディストラは腹を抱えて小さく笑った。
「ディストラは軽く流すと思ってたよ」
ライトニングからは、思わず安堵の笑みがこぼれた。
「当然です。どんな秘密があろうが、陰の実力者が無理に詮索することはありませんので」
ディストラは、真剣な眼差しで言った。
「ほ、本当にディアブロ様達何ですか?」
暫く黙り込んでいたルナは、ライトニングたち3人に恐る恐る歩み寄ってきていた。
「うん。そうだよ」
ライトニングが微笑みながら話すと、ルナは涙を浮かべながらライトニング抱きついた。
「あら? なんか知り合いみたいな距離感ですね」
ユキネは不思議そうにライトニング達を見ている。
「うん。ルナは、神話の時代に僕たちと共に神と戦った滅龍の姉弟の一人だからね」
虹雷剣達は再び困惑の表情を浮かべた。
「まぁそう言うことだから、テンヤ達をこれから宜しく。後、ごめん……」
僕は罪悪感から、アンナ達の顔を見ることができなかった。
「俺たちの方からも謝罪する。巻き込んでしまい申し訳ない」
「貴方達には関係の無い事なのに、本当にごめんなさい」
二人は続いて頭を下げた。
「どうして謝るの? それに、関係無いの意味が分からない」
アンナ達は次から次に意味の分からないことが続いてずっと困惑している。
「いや、君達は元々魔王を倒すのが目的だったのに。邪神を倒すという僕達3人の目標にも付き合わせてしまうことになるから……」
僕含め、会議室に居る者は皆しばらく黙り込んだ。
気まずい雰囲気の中、アンナが口を開けた。
「確かに、貴方があの始まりの魔王ディアブロだったなんて驚いたけど、それ以上に貴方の強さに納得がいったのが嬉しかったわ」
「そうか……」
「そう言えば、次の行き先は決めてあるの?」
アンナは、場を明るくしようと話題を変えた。
「うん、決めてるよ。まぁゼーレ達と決めたわけじゃないけど」
アンナは不服そうな顔を浮かべた。
「へぇ~そうなんだ。で? 何処に行くの?」
「当初の予定では、豪雪地帯を抜けたらラスファートに行こうかと思ってたけど、クレイエスに行ったんなら、予定を変更してヒストア王国に行こうと思っててさ」
「貴方、もしかしてクロエ王女に会うつもり?」
「流石アンナだね。そうだよ、敵意しか感じ取れなかったから仕方ないとは言え、僕達がお兄さんを殺したんだ。ちゃんと話がしたい」
「まぁ貴方がそう言うのであれば、止めはしないけど。エンペラーズの一人がヒストア王国に居るみたいだから、ついでに倒してくれない? また仲間にするんなら勝手にしたら良いけど」
ヤバイ! アンナさんの呆れゲージがマックスを向かえている。
「うん分かった、考えておくよ。テンヤとアカネの役割とかは、皆んなで話し合って欲しい」
「おう、分かった」
「分かったわ。いってらっしゃいライトニング……」
僕は勢いよく会議室の窓を開けた。
「行くぞ、『破滅帝』……」
漆黒の雷が辺りを漂う。
あっ、ヤベ! ヒストア王国への行き方聞いてなかった。まぁクレイエスでナイトサンダーズの誰かに聞けば良いか。
僕はヒストア王国への行き方をアンナに行こうかとも思ったが、カッコつけた手前引き下がれなかった。
ライトニングは虹雷剣達に見送られ、漆黒の雷を纏い、窓から飛んで白く輝く月へと姿を消していく。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ゼーレとレイラは病室のベッドで安静にしていた。
「やぁやぁ勇者君達じゃないか。調子はどうだい?」
扉を開けた僕は、ふざけた口調で話しかけた。
「やぁやぁって、ライムは相変わらず元気だな」
ゼーレとレイラは、呆れて微笑を浮かべていた。
「ふふん、僕は二人より素の力と体力が多いのが取り柄だからね。これからも、旅で疲れた時には頼ってくれたまえ」
「ふっ、あぁそうさせてもらうよ。肝心の戦闘には大体参加してくれないし、もうちょっと活躍してもらわないと困るんだけどね」
ゼーレは不敵な笑みを浮かべている。
「うっ!」
何も言い返せない。
「確かにそうね」
「えぇ~、レイラまでそっち側なの……」
少しの間を置いて、僕達はしばらくの間笑い合った。
「それで、何処に行くか決まったの?」
「へ?」
僕は思っても見ない言葉がレイラから発せられ、固まってしまった。
「いやな。レイラと話し合った結果、もうライムに旅先を任せた方が良いんじゃないか? って話になったんだよ」
「へ、へぇ~そうなんだ」
まぁ確かに、此処までの旅路をゼーレとレイラ視点で見たら、目的地全部に敵の重要戦力が居るんだから、そりゃあ僕に任せるよな。
ふっ、計画通りだぜ。
僕は、やりたい通りに事が運び、我慢できずに思わずニヤけてしまった。
「なにニヤついてんだ、ライム。気持ち悪いぞ」
「うん、気持ち悪いよ」
何か日を追うごとに二人の毒舌度が上がってってるな。
まぁ僕のせいなんだけど。
「じゃあ、二人共次の目的地はヒストア王国で良い?」
「うん。場所は知らないけど、ライムが言うならそこで良いよ」
「私もそれで大丈夫」
二人は即答してくれた。
「よし、決まりだな。二人共怪我も大したことないみたいだし、明日の昼頃に出発するか」
こうして、僕達勇者パーティーの次の目的地はヒストア王国に決まったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日の昼過ぎ。
僕達3人は昼までに旅の支度を済ませてビルを後にした。
目的地は大陸に近い港とは真反対にある東の港だ。
昨日の夜、カルラにヒストア王国への行き方を聞いたら、クレイエスの東側にある港から海を横断する方が大陸を横断するより早いって言っていたからだ。
それに、こんな機会じゃないと海の旅なんてせずに大陸の旅だけで済ませそうだったし。
結果的にはちょうどいいタイミングだったのかも。
僕達は港に着くまで談笑しながら歩いた。
「着いた。此処が東の港か、凄いな」
僕達の目の前には、幾つ物漁船やそこそこ大きな豪華客船が港に停泊していた。
西の港とは違い、こっちの方が海の面積が広いからか?
それにしても、豪華客船はやり過ぎだろ。
船旅をしようとしている者なら皆、豪華客船が目に入ってしまうだろう。
だが、僕の目の前には大きな豪華客船よりも目を引く船があったのだ。
それは、海賊船!
白い竜の船首に木造で全体的に茶色い船体。そして、巨大かつ赫色に染まった帆には、竜の頭に剣を串刺しにしたような絵が描かれている。
その全てが僕の好奇心を駆り立てた。
「あの船に乗りたい……」
気が付けば言葉が漏れていた。




