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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
伏竜編

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69 次なる目的地

 あっどうも、僕の名前はライム。猫獣人で雷鳴の猫王を名乗っている者だ。


 そんな僕は今、幼馴染の女の子と一緒にシングルベッドで寝ている。そう、シングルベッドで寝ている! 大事なことなので2回言わせてもらった。


 現在時刻は朝の4時。予定時刻より30分早く目覚めてしまったが、これを逆に利用して、余裕を持ってゼーレ達の元へ行く用意を始めようとしていた。


「くっ、やっぱりだめか」


 だが、家のアンナさんはそうさせてくれないらしい。


 どういう事かと言うと、今僕は、向き合った状態でアンナに抱きつかれているのだ。それも獣人は人間よりも数倍力が強いので、かなりの力で抱きつかれている。


 アンナの顔は幸せそうに緩んでおり、金髪と白い肌が朝日に照らされ少し眩しかった。


「はぁ~、本当にアンナは昔から甘えん坊だな。アンナが僕のメイドをしていた頃は毎日抱きつかれたまま寝てたっけ? まぁ皆んなの前ではビシッとしてくれるから別にいいけど」


 僕は小声でそう言いながら、アンナの耳を優しく触りながら、もう片方の手で頭を撫でてあげた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それから大体30分後。これからの事を考えながらぼぉーっとしていると、次第にアンナも起きてきた。


「う〜ん。……なっ!」


 アンナは目が覚めると、僕に抱きついていることを理解し、顔を赤らめていた。


「ご、ごめんなさい」


「別に気にしてないよ。それより、僕はそろそろ行くんだけど、一つ聞きたいことがあるんだけど良いかな?」


「えぇ良いわよ」


「実は僕達、次の行き先をまだ決めてないんだけど、なんかいい場所ってある?」


 僕達より、アンナの方が地形とかそこら辺には絶対詳しいからな。聞いといて損はないでしょ。


 僕がそう言うと、腕を組み悩んでいた。


「う〜ん。あっ! そうだ、厶ーアから海を北東進んだ先に突如として現れた島国があるのだけど、その島国は、科学と技術の国『クレイエス』と言われているの」


「突然現れた島国?」


「えぇ、経緯は分かっていないのだけど、ここ数年の間に急に陸地が現れて、そこに国が出来ていたのよ。そして、クレイエスには、『キサラギテンヤ』と言う天才科学者が居て、今までに無い魔法の使い方をしていて面白いらしいわ」


「なっ! アンナ! 今なんて言った!」


「え? なんの事?」


「いや、科学者の名前だよ!」


「あぁー、キサラギテンヤだけど、珍しい名前よね。もしかして、知り合いなの?」


「いや、違うけど……」


 おいおい、キサラギテンヤって完全に日本人の名前でしょ。この世界でそんな雰囲気の名前はなさそうだったよな。もしかして、異世界転移者か? だとしたらぜひ会ってみたい。


 特に理由は無いけどさ。なんかこういうのって興味湧いちゃうじゃん。


「それと、私達の調査によって、クレイエスには、エンペラーズの一人、蒼の眼が居ることが分かったわ」


 おぉー、これでエンペラーズは3人目か。


「へぇ~、突如現れた謎の島国に天才科学者。そして、エンペラーズか。行く理由は十分にあるな」


「ふふっ、貴方ならそう言うと思ったわ。すでに、虹雷剣の中で手の空いていたミズキをナイトサンダーズと共に調査に向かわせているから、何かあったら頼って頂戴」


 相変わらず、手際が良いな。


「うん分かった。いつもありがとう。じゃあ、そのクレイエスって国にゼーレ達と行ってみるよ」


 僕はそう言うと、窓から飛び降りた。


「えぇ、行ってらっしゃい」


 アンナはニコっと笑いながら、手を振って送り出してくれた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 そう言えば、ゼーレ達の所に帰る前にルナの様子を見ようとしてたんだった。

 軍基地は確か、村の東方向に結構歩いた先にあるんだよな。


 拠点の近くを歩いていた僕は、そのことを思い出し、ホノカの軍基地に向かった。


 僕が軍基地の近くの柵から中を見てみると、軍基地では朝の筋トレが行われていた。


 まじか。まだ朝の4時半ぐらいだから、流石に起きてないだろうなって来てみたら、メチャメチャトレーニングしてるじゃん。ちょっとハード過ぎないか?


 僕がそんな事を思っていると、遠くからホノカの声が聞こえてきた。


「ルナさん。今はトレーニング中ですよ。たとえ貴方が黒龍王だからって容赦はしないからな」


 そう言うホノカの視線の先には、木の枝の上で居眠りをしているルナが居た。


「は〜い」


 ルナはホノカにそう言われたので、木の上から飛び降り、筋トレに参加した。


 ふっ、ここに来てまだ一日もたってないのにもうすっかり馴染んでるな。


 僕はルナ達の姿を見て安心したので、姿を表すことなく、その場から離れた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ハッ! ……貴方はライトニング様ですよね?」


 軍基地を離れた後、僕がゼーレ達の元に行く前に村をもう少し歩いていると、腰まで伸びた艶やかな黒髪と正気に満ちた水色の瞳を輝かせる小さな女の子に話しかけられた。


「ん? そうだけど……って思い出した! 君って確か、厶ーアで金髪の男に踏みつけられてた娘だよね?」


 ムーアで見た時は長い髪もボサボサで服もボロボロだったから分かりにくかったけど、ちゃんと整えたら別人かってぐらい可愛くなってる。

 しかも髪色と目の色的に、ザ・異世界美人って感じだ。


「はい、私の名前はエレナです。助けてくださった方から、ライトニング様が私達を助ける様に作戦を命じられた事を聞きました。私達を救ってくださり、本当に有難うございます」


 エレナが頭を下げると、綺麗な黒髪が揺れる。


「いや、礼なんて良いよ。僕も、奴隷とか人の自由を奪う行為は嫌いだから見過ごせなかっただけだし」


 僕の死生観的に、自分のやりたいことをやって、その結果死ぬのはしょうがないと思ってるけど、何かに自由を奪われて、人生を縛られたまま何も悪くない人が死ぬのだけは見過ごせないから。


「それでも、有難う御座います」


「まぁなにはともあれ、君が無事で良かったよ。これから色々あると思うけど、頑張ってね。それじゃあまたどこかで」


 僕はそう言って、拠点の方に歩き出した。


「はい。頑張ります」


 エレナはそう言いながら、ニコッと微笑んだ。


 少しして、エレナは僕の方に軽くお辞儀をして、何処かへ歩いて行った。


 エレナと別れた後、僕は全力ダッシュでゼーレ達の元へ向かって走り続けた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数十分後。僕は廃墟のゼーレ達が寝ている最上階の扉をゆっくりと開けた。


「良かった。ゼーレ達はまだ起きてないな」


 ゼーレ達ってたまにおじいちゃんおばあちゃんみたいに早い時間に起きるから、内心焦りながら走ってたんだよな。


 僕が自分のリュックの中身を確認していると、屋上に居たディストラが窓からそっと入ってきた。


「お帰りなさいませ、ライトニング様。帰ってこなかったので心配しましたよ」


 ディストラは少しお辞儀をして、小声でそう言った。


「ごめん、ちょっと外せない用事ができてさ。それより、荷物とゼーレ達の事を見といてくれてありがとう」


「そんな、お礼なんて良いですよ。元からこれが私の仕事でもあるんですから」


 ディストラがそう言いながら、少し微笑んでいると、ゼーレ達が起き始めた。


「っ! ディストラ。早く影の中に入って」


「はい」


 ディストラはそう言って、僕の影の中にスッと入って行った。


「おはよう。ゼーレ」


「ん? あ〜もう起きてたのか。おはようライム」


 ゼーレは、背伸びをしながらそう言った。


「ライム。レイラは……ってまだ寝てんのか」


 そう言うゼーレの視線の先には、僕のリュックを枕にして寝ており、青い髪が朝日に照らされているレイラの姿があった。


「まぁ昨日は色々あったんだからしょうが無いよな。なぁライム、朝ご飯食べようぜ」


「うん。レイラが起きたらこれからの旅のことを話すか」


 こうして、僕達は僕のリュックから、レイラが起きないようにそっと果物を出して食べた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数分後。レイラが起きたので、みんなで朝御飯を食べ、レイラとゼーレは交代して路地裏で水浴びをした。


「ふぅ~さっぱりしたぁ」


「ライム、貴方ちゃんと寝れたの? ずいぶん早く起きてたみたいだけど」


「うん、大丈夫だよ。それより、この国の人に教えてもらったんだけど、この国から海を北東に進んだ先にクレイエスって言って、面白い技術がある島国があるんだけどそこに行かないか?」


「ふ〜ん。まぁこの国では色々あったし、息抜きも大事かもな」


 ゼーレは、レイラの方を見ながら立ち上がってそう言った。


「そうね。魔王軍も目立った動きをまだしていないし、いい案だと思う」


 レイラも、立ち上がりながらそう言った。


「よし、それじゃあクレイエスに向けて出発だ!」


 僕が勢い良くそう言うと、レイラが話しかけてきた。


「で? 行き方はわかってるんだしょうね?」


「あっ、……」


 そう言えばアンナに聞くの忘れてたぁ〜!


「と、取り敢えず、こっから北東に進めばわかるでしょ」


「はぁ~、計画無しに進むのは危険なのに。本当に貴方は」


 レイラは頭を抱えてそう言った。


「ハハッ、本当にライムのそう言う所好きだなぁ〜」


 ゼーレは、お腹を抱えて笑いながらそう話した。


「笑ってる場合じゃないでしょ」


 レイラは、呆れた表情をしながらそう言った。


 こうして、僕達勇者パーティーの次なる行き先は、科学と技術の島国『クレイエス』に決定したのだった。

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