68 獣人なりのアプローチ方法
アンナを除き、虹雷剣の皆んなが会議室から出た後。僕は、聞きそびれてしまったことをアンナに質問していた。
「そう言えば、さっきツカサに聞くの忘れてたんだけど、どうやってムーアを手に入れたんだ? あの惨状じゃ大会は中止だろうし、ムーアを手に入れる事は出来ないんじゃないか?」
「それは、ツカサがガンナーという男を国民全員を納得させて、王様にしたからよ」
「どういう事だ?」
「ムーアに住む者は皆、黒龍との戦いを見て貴方の強さを知り、王にふさわしいと知った。そして、ゼロが貴方と渡り合ったこともね」
「だから、ツカサはガンナーが自分より強いことを証明する為に国民全員の前で戦って見せたの」
あ〜何となく分かったわ。
「それで、国民がガンナーが王に成ることに納得して、ガンナーは王になったわ。そして、その作戦を実行する前にツカサはガンナーを王にする条件として、ルミナス商会の要望に出来るだけ答えると約束させていた」
やっぱりそう言うことか、ツカサも案外頭良いじゃん。
「と言う訳で、ガンナーと言う男を王にする事で、私達サンダーパラダイスがムーアに関わっていると感づかれる事無く、ムーアを実質的に手に入れられたのよ」
「へぇ~そうだったんだ。でもさ、アカキってどうなったんだ?」
そう言えば、アカキがどうなったかを聞いてなかったんだよな。クロエのお兄さんだし、今どうなってるかは知っときたいよな。
「アカキは、……亡くなったわ」
アンナは、暗い顔をしながらそう言った。
僕達は、互いの命を賭けた戦いをしてるんだから、しょうがないとは言え、クロエのお兄さんという事もあるから複雑だな。
「まぁ魔王に手を貸したんだから、しょうが無いよな」
「そうね」
「じゃあさ、クロエの事もあるから聞くんだけど、アカキのお墓って作ったのか?」
「えぇ、ツカサが厶ーアの近くにアカキのお墓を作ったらしいわ。クロエさんや他のご家族の人にも伝わってるみたい」
「そうか、なら良かった」
クロエとクロエの家族は、アカキが悪人になっても変わらず関わり続けようとしてたみたいだからな。
僕の目指す組織像は悪の組織じゃないんだし、流石に魔王に手を貸す組織の人間だからって、知り合いの家族相手にお墓さえも作らない訳にはいかないよな。
「ちなみに、クロエさんはルミナス商会が大陸全土に開通している馬車でヒストア王国に送っているから、数週間後にはヒストア王国に着くと思うわ」
そうそう、いきなりナイトサンダーズの人がクロエを連れてどっかに行ったから気になってたんだよな。無事に家に帰れそうで良かった。
「了解。馬車の運転手にはお礼を言っといて」
「えぇ分かったわ」
アンナは、優しい笑顔を浮かべていた。
「あっ、後1個話したいことがあった」
アンナは、ピンッと尻尾を立てて真剣な表情でこちらに視線を向けた。
「貴方が知っているか分からないけど、一応共有しときたい情報があって。どうやら、最近私達と似たような活動をする組織が現れたみたいなの」
「え? サンダーパラダイスみたいな組織って事か?」
「はい。調べた者によると、まだ規模としては小さいものの、白のコートを身に纏い、素顔を隠して村を襲いに来た魔物を倒したり、盗賊や直接ナハト教団関係者を暗殺したりしているらしいわ」
「う〜ん、確かにサンダーパラダイスの活動と似てるな。まぁ、まだサンダーパラダイスを自称しないだけマシだと思うべきだよな」
「そうね。我々サンダーパラダイスとの明確な違いも盟主がエルフなのと、獣人と魔族が仲間に居ないぐらいだし。ほんと、我々の活動の邪魔にならなくて良かったわ」
「じゃ、そろそろゼーレ達の所に戻るよ。待たね」
僕は、そう言いながら席を立ち、窓の方に歩いて行った。
「待って!」
僕が窓から外に出ようとすると、アンナが後ろから強引に腕を引っ張ってきた。
「ん? まだ何か報告があるのか?」
後ろを振り返ると、透き通るような白い肌、綺麗に手入れされた金髪と澄んだ色の黄色い瞳が月明かりに照らされ、まるで天使の様な風貌のアンナが居た。
「いえ、そうじゃないんだけど……」
アンナはそう言うと、恥ずかしそうにもじもじしながら、上目遣いで僕の顔を見てなにか言いたげにしていた。
「あの……今晩だけで良いから一緒に寝てくれない?」
「え?」
あぁー、アンナが僕のメイドを始めたぐらいから、毎晩一緒に寝てたから寂しかったのかな? 拒否したら可愛そうだし、別にゼーレ達の元に戻るのはギリギリで大丈夫だから、久しぶりに一緒に寝るか。
「ねぇねぇ、一緒に寝ちゃだめ?」
アンナは上目遣いのまま泣きそうな目をしながら、猫なで声でそう言った。
「ううん駄目じゃないよ。今日は久々に一緒に寝よっか」
僕がそう言うと、アンナの顔は一気に明るくなった。
「やったー!」
アンナはそう言いながら、僕の手を離して嬉しそうに小さくジャンプしていた。
「取り敢えず、お風呂入ってくるよ」
この前、神と天使の世界から拠点に帰ってきた時はゆっくりせずに帰ったから、僕が旅に出てから新しく出来たっていうお風呂屋さん。実は、気になってたんだよな。
「えぇ、分かったわ。着替えは用意してお風呂屋さんの人に渡しておくから、ゆっくり休んでね」
「うん、ありがとう」
僕はそう言って、大きな豪邸から出て、サンダーパラダイスの領地の中にある近くの小さな村のお風呂屋さんに向かった。
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「ライトニング様、お待ちしておりました。ごゆっくりお体をお休め下さい」
受付には、金髪ロングの青い瞳をしたエルフのお姉さんが居た。
お待ちしておりましたって、アンナに僕が来ることを伝えられてたんだろうな。アンナの奴、ほんと用意周到だよな。
僕は、エルフのお姉さんから服などを入れるロッカーの鍵をもらって男風呂に入って行った。
「ふ〜、今回は混浴じゃないからアンナ達に邪魔されることも無いし、こんな時間だから他の人もいないだろうから、久しぶりにゆっくり一人でお風呂に浸かれるな」
僕はそう言いながら、お風呂場に入る為に扉を開けた。
扉を開けると、目線の先にはお風呂に浸かっていたリアムが飛び上がり、驚いた表情で僕を見ていた。
「っ! ライトニング様!!」
「相変わらず奇麗な茶髪だな」
「ありがとうございます。僕の所属している班には女の人しかいないので、よく髪をいじられているんですよ」
リアムは、嬉しそうに尻尾を勢いよく横に振りながらそう言った。
まぁサンダーパラダイスの男女比って大体6対4で女の人の方が多いらしいからな。
てか、水がバシャバシャ飛んでるぞ。まぁ犬の獣人あるあるだからしょうがないけど。
「へぇ~、大変だな。まぁ君は顔も雰囲気もどっちかというとかわいい系だもんな。女の子達の気持ちも分からんでもない」
僕はそう言った後、一通り体をシャワーで洗い、数十分程お風呂を堪能し、パジャマに着替えてお風呂屋さんを後にした。
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「ふぅ~、久しぶりの自分のベッドだ」
僕は、自分の部屋に着いて直ぐ、ベッドにダイブした。
「グフフ〜。最っこうだ!」
数分後。
「入るわよ」
ベッドに顔を埋めていると、アンナが扉をノックしながらそう言った。
「どうぞ」
僕がそう返事をすると、アンナは扉をゆっくりと開けた。
「なっ! その格好、足寒くないか?」
僕の目線の先には、下には尻尾により後ろの部分が少し捲れている丈の短い白いスカートを履いていて、上は白とピンクのモコモコのパジャマを着ているアンナが居た。
「にゃ、ニャ〜」
アンナは両手を軽く握り、顔の近くまで持ってきて、少し照れながら猫のポーズをしながら、猫なで声でそう鳴いた。
「っ!? どうしたんだ急に」
僕がそう言うと、アンナは恥ずかしそうにしながらこちらに歩み寄ってきて、僕から目を背けて話し始めた。
「ど、どう? ホノカから、貴方はこういうのが好きだって聞いたんだけど……」
あ〜、昔ケモ好き同士で色々と語り合った時があったな。そん時に話した事を漏らされたのか。
僕は恥ずかしさと後悔で、思わず頭を抱えてしまった。
「服も似合ってるし、その……可愛いと思うよ」
「あ、ありがとう。それじゃあそろそろ寝ましょうか」
アンナは頬を赤らめながら、僕の手を握ってそう言った。
「うん」
そうして、僕達は僕のベッドに腰掛けた。
それから数秒間。僕達は、お互いに顔を合わせることができなかった。
「そうだ。そういえば、僕がナイトサンダーズの人に会議室に連れて行って欲しいってお願いした娘って今どこなの?」
僕は、ルナの事を皆んなに説明しようとしていた事を不意に思い出し、アンナに質問した。
「あっ! ライム、貴方がルナさんを勝手に仲間にしたからみんなビックリしてたわよ」
アンナは僕の方を向きながら、頰をぷくっと膨らませて怒り顔をした。
「まぁそうだろうね。てか、ルナが黒龍だって事はバレたのか」
「えぇ、一緒にここまで来てた娘達に自分は黒龍王ルナだって自慢しまくってたらしいわよ」
ルナの奴、あれだけ言ったのに結局自分がルナだってことを言っちゃったのかよ。
「それで、その子達が会議室で私達虹雷剣に説明してくれたから、私達の方で他の構成員に説明しといたわよ」
おぉー、じゃあ僕が説明をする手間が省けたのか。なら、結果オーライなのかもな。
「ディストラの件があったから、多少はマシだったけど、最近うちに新しく入った子達の説得は大変だったんだから」
アンナは、腕を組んでほっぺたを膨らませながらそう言った。
「ごめんごめん」
「まぁ、もう皆んなと仲良くなって、一応、サンダーパラダイスに新しく入った他の人達と同様に今は軍に入ってもらってるわ」
そう言えば、サンダーパラダイスに新しく入った人は、ホノカの軍に入る決まりだったな。一応、明日様子を覗いておくか。
「うん、それが良いだろうね」
「ねぇ? そろそろお布団の中に入らない?」
「うん、入ろっか」
布団に入ることにした僕達は、先ず僕が布団に入った後にアンナが入り、僕はアンナに布団を掛けてあげて布団に入った。
布団に入った僕達は、お互いに顔が見える方を向いた。その状態のまま無言の時間が数秒間続いた。
ヤバい。アンナと寝るの久しぶりだから何を離せば良いのかわかんない。てか、僕のベッドってシングルだから少し狭くて顔が近いんだよな。正直緊張する。
僕がそんな事を考えていると、アンナがさっきよりも更に恥ずかしがりながら話し始めた。
「あ、あの……これもホノカから聞いたんだけど、良かったら猫吸い? っていうのもやって見る?」
「え!? ……うっ、うん……やらせて下さい」
僕がそう言うと、アンナは目を瞑った。
アンナが目を瞑ってから少しして、僕はアンナの髪に顔を近づけて匂いを嗅いだ。
うわぁ、やっぱ猫吸いって心が落ちくな〜。僕も猫だけど。
「あ、あの、猫吸いってどうなの?」
僕が暫く匂いを嗅いでいると、アンナがそう質問してきた。
「お風呂に入ったばっかだから、シャンプーとアンナの匂いが混ざって、すごく落ち着く匂いがして、最高だったよ」
「そ、そう。なら良かった」
アンナはそう言いながら、嬉しそうに笑みをこぼしていた。
「じゃ、じゃあそろそろ寝るか」
「えぇ、そうしましょうか。明日って何時に起きるの?」
「明日は、ゼーレ達がいつ起きるか分からないし、一応5時に出ようと思ってるから、4時半頃に起きるよ」
「分かったわ。その時間には私も起きて着替えとか出しておくわね」
「えぇ、悪いよ」
アンナは、サンダーパラダイスの実質的トップだから色々やることがあるだろうしね。
「いえ、久しぶりに貴方のメイドとして働かせて頂戴」
アンナは強い意志を持った真剣な眼差しでそう言って来た。
「うん、分かったよ。でも、無理はしないでね」
「わかってるわ。それじゃあおやすみなさい」
「うん、おやすみなさい」
こうして、僕達は目を瞑り、アンナとのドキドキタイムは終わりを迎えたのだった。




