66 竜と龍の違い
ムーア各地で起きていた争いが終幕を迎えていた頃。ムーア上空では未だ、ライトニングとルナの戦闘が続いていた。
「目前を穿て、『万雷フィスト!』」
ライトニングは、ルナ目掛けて、拳を放った。
「わっ! 危ない!!」
ルナは、服が微かに触れるギリギリで体を横に動かして避けた。
ライトニングは、漆黒の雷の広範囲魔法を使ってルナを圧倒し、ルナは、それを避けながらライトニングに拳や蹴りを入れる。
それが十数分続いていた。
「ハハッ、ここまで互角の戦いは早々ないからな。楽しいぞ!」
ライトニングは、漆黒の剣でルナの猛攻を躱しながら、嬉しそうにそう話した。
「あっそう、それは良かった」
ルナは淡白にそう言いながら、回し蹴りをした。
「っ!」
ライトニングは、漆黒の剣でルナの蹴りを受け止めたが、流石に元が龍の中でも最強クラスだった女の子の蹴り。魔力で身体強化をしているのにも関わらず、割りとあっさり吹き飛ばされた。
ライトニングは、空中に浮きながら体勢を立て直おす。
「ふぅ~、あんま空中戦をやって来なかったから不安だったけど、ある程度自由に体の制御が出来るようになってきたな」
「空中戦は流石にぼくの方が有利みたいだな」
「まぁ、そりゃあそうでしょ。でも、直ぐに慣れるさ」
「そうか。じゃあ今の内に倒しといた方が良いね!」
ルナは、猛スピードで殴りかかってきた。
「その怪力にも慣れてきたよ」
僕は、漆黒の剣で軽く受け流した。
「てかさ、本当に何でルナは人の姿になれるんだ?」
僕は、ルナと少し距離が空いたので、疑問に思っていたことを聞いた。
「それは、ぼくが龍神『アストラ』の子供の一人だからだよ」
ルナは両手を腰に当て、誇らしげにそう言った。
「へぇ~、これが本当の神の子か。いや待て、それだけじゃあ説明不足だぞ」
「まぁ確かにね」
そう言ったルナは、龍神について話し始めた。
「先ず、お父様は原初の龍で、龍の姿と人の姿の2つの姿がある。それが子供のぼく達にも遺伝したって訳」
てか、お父様呼びってお金持ちのお嬢様感があるな。多分お父さんとは言え、神様だからそう言ってるだけだろうけど。
「ふ〜ん。でも、僕の組織に居るツカサっていう竜人は、ドラゴンの姿になれないぞ」
「それは、そもそもお父様の子供が僕も含めて3人しか居ないから、姿を変えれるのは3人だけってのもあるし、そのツカサって子は、翼で飛ぶ竜が元だからね。お父様は翼が無く、空を浮いて移動する龍っていう違いがあるんだよ」
「そして、竜人はドラゴンの姿にはなれないんだよ。ちなみに、分かってるとは思うけど、他の獣人も元の生き物に姿を変えることは出来ないよ。君達獣人には、神が居ないから」
ふ〜ん、じゃあ僕が神に成っちゃおうかなぁ〜。なんつって。
「それじゃあ、聞きたいことは聞けたし、そろそろ終わらせるか」
僕は指パッチンの形を作った右手を前に出し、右手に体中の魔力を集め始めた。
「時空はあまり壊しちゃダメなんだろうけど。神の子が相手ならしょうがないよね。それに、規模は小さくするから、寛大な神様なら許してくれるでしょ」
僕は、自分を中心にルナの居る所まで円状に魔力の壁を作った。
「またブラックホールが出来るかもだけど、ツカサ達には多分影響無いし気にする必要はないかな?」
ライトニングが指に集めていた魔力が、凄まじい吸引音を出している。
「時空ごと彼の者を滅せよ、『スーパーノヴァ……』」
僕が技名を途中まで言っていると、慌てた様子でルナが話しだした。
「ちょちょちょっと待って! 君はさっきから何を話してるの?」
ルナは慌てて右手を前に出しながら、驚いた表情で言った。
「ぼくの聞き間違いじゃ無ければ、時空を壊すとか、あの神様なら許してくれるとかって聞こえたんだけど?」
ルナは身振り手振りを加えて、おどおどしながら聞いてきた。
「うん。聞き間違いじゃ無いよ」
「え? じゃあ、もしかして神々に勝てたりもするの?」
「うん。まぁ神というか、宇宙全部消せるかな。その場合は自分も死ぬけど」
その言葉を聞いたルナは、暫く黙り込んだ。
「……あのー、一回降りない? 話したいことがあるの」
「ん? 命乞いなら聞かないぞ?」
僕は笑顔で返した。
「違うよ。取り敢えず、降りようよ」
「まぁいつでも倒せるからいっか」
「ちょっと、聞こえてるぞ」
ルナは、ほっぺを膨らませながら言った。
そうして、僕達は地面まで降りた。
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地面に降りて少しすると、ルナはもじもじと手を動かしながら話し始めた。
「あ、あのー、今更過ぎるかもしれないけど、良かったらぼくを仲間にしてくれない?」
「は? 急に何言ってんだ?」
てか、やっぱり命乞いじゃないか。
「いやー、ぼくがここに来たのだって、シューゼ様の命令だから仕方無く来ただけだし、ぼく本当はこんな事をしたくないんだよね」
「へぇ~、その割には楽しそうだったけど?」
「そ、それは、久しぶりに封印が解かれて、体を動かせるからはしゃいじゃっただけで……」
国一つ消し飛ばしそうなブレスを吐こうとしといて、はしゃいでただけって感覚狂ってるだろ。
これだから後先考えないバカに力を与えちゃいけないんだ。僕も人のことを言えないかもだけど。
「でもさ、何で急に仲間になりたいと思ったの? 今のままだと、ただの命乞いになるんだけど?」
「それは、君が神を倒せるって知ったからだよ」
「何だ? 神のことが嫌いなのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだよ。だって、お父様の事は好きだし、他の神様も優しい人達なのは知ってるからね」
「じゃあ何で、仲間になりたいんだ?」
「ぼく、シューゼ様達邪神が嫌いなんだ。悪魔は悪であるべきとか、龍は人間達の敵であるべきとかさ、勝手に決めつけてそれを押し付けてくるのが。ぼくはただ楽しく生きたいだけなのに」
「そっか、なら仲間になっても良いぞ」
僕は即答した。
「えぇぇえ〜! そんなあっさり決めちゃって良いの? ぼく、今でこそ可愛い女の子の外見だけど、中身は普通に滅龍だよ!?」
「うん、別に良いよ。仲間になりたい理由が悪い方向性じゃないっぽいし」
「てか、今自分の事を滅龍って言ったか?」
「うん、言ったよ。巷では、『黒天の厄災』の黒龍王ルナで浸透してるみたいだけど、本当の分類は滅龍だよ。黒龍に王なんて居ないしね」
ほへぇ〜、ルナって滅龍だったのか。
ん? 待てよ。という事は……。
「あ、あのさー、もしかして、龍神の子どもの中に、白い龍って居る?」
「あ〜、ソルの事ね。ぼくの弟だけど、どうかしたの?」
あ〜、やっぱりそうだったのか。
え? でもあいつって確か封印されてなかったよな。イーサン達が封印を解いた後とかも無かったし。
「じゃあさ、何でソルは封印されてなかったんだ」
「あ〜、それは……」
ルナは、ばつが悪そうに話し始めた。
「ほら、ぼくって暴れたいタイプじゃん?」
ルナは拳を胸の位置まで上げて、首を傾げながら聞いてきた。
「うん、良く知らないけど多分そうなんだろうね」
「でも、ソルは大人しくて、暴れることがなかったから、魔王様も封印をしなかったんだよ」
「へぇ~」
まぁあ、龍程のデカさと強さを持つ生き物を封印をするのには、莫大な魔力と魔素が必要だろうし、あんまり封印は使いたくなかったんだろうな。
僕がそんな事を考えていると、ルナが僕の様子をうかがいながら、そっと話しかけてきた。
「で、でさ〜、本当にぼくが仲間になっても良いんだよね?」
「うん良いよ。まぁ正式に仲間になるのは、サンダーパラダイスの皆んなに許可をもらってからだけど、僕が話せば多分分かってくれるよ」
「竜人の子と話してたので大体わかってたけど、やっぱり君は強いだけあって、仲間の皆んなに信頼されてるんだね」
ルナは、ニコッと笑いながら言った。
「うん、そうだね。まぁ獣人の皆んなとは、子供の頃からの付き合いだし」
こうして、僕とルナの戦いは思わぬ形で幕を閉じたのだった。




