63 純粋たる最強
簒奪祭決勝最中だったコロシアム。そこには、月光に照らされた黒き龍が上空に浮遊しており、今にも武装国家ムーアに向けてブレスを吐こうとしていた。
「さぁ、一対一の舞台は整えた。今なら思いっきりブレスを撃っても良いぜ?」
僕がそう挑発をすると、黒龍は貯めに貯めていたブレスを僕目掛けて吐いた。
そのブレスは、黒い魔力で出来ており少し離れたところからでも凄まじいエネルギーを感じるほどだった。
「うぉ~。流石は龍だな。でも……」
僕は、黒龍のブレスを見てそう言いながら、右手に魔力を込めた。
「その程度では満足できそうに無いかな」
ライトニングは、そう言いながら不敵な笑みを浮かべて、右手を上に上げた。
「悪いけど、パクらせてもらうぞレイラ……『反射稲妻!!』」
僕はそう言いながら、右手を下に下げた。
すると、僕の頭上から無数の雷が落ち、僕の前に大きな壁を作った。
そして、黒龍のブレスがその壁に当たった。と同時に黒龍のブレスが黒龍目掛けて跳ね返っていった。
黒龍は何が起きたか分からず、避けようとすら出来ずに自分のブレスに直撃した。
すると、爆発によって出来た煙から、黒髪ショートと黒い瞳で幼い容姿をした女の子が現れた。
女の子は黒いフード付きマントを羽織り、黒い短パンを履いていて、平たい胸を白いサラシ一枚で隠しているラフな服装をしている。
「っ! 何処から現れたんだ!?」
僕は、急いで女の子の下へと飛んだ。
「フッ、騙されたな!」
僕が近づいて、女の子を受け止めようとすると、女の子は突然目を開けて拳を僕目掛けて放った。
「うわっ!」
僕はいきなり殴りかかられたので、反射的に拳を避け、女の子のお腹にパンチをしてしまった。
「ぐへっ!」
女の子は後ろによろけたが、女の子も浮けるらしく、地面に落ちることは無かった。
「いきなり何するんだよ!」
風でフードが取れ、素顔を露わにした女の子は、ダウナー系の大人な落ち着いた低い声で、苦しそうにお腹を抱えながらそう話した。
「いや、それはこっちのセリフだし。そもそもお前は誰だよ」
「ふふ〜ん。聞いて驚くな、ぼくはかの有名な黒龍王ルナ何だよ!」
黒龍王ルナと名乗る女の子は、誇らしげに控えめな胸に手を当てながらそう言った。
「……」
僕は聞き覚えの無い名前に固まった。
「え、まさか君、ぼくの名前聞いたこと無いの?」
「うん、聞いたこと無いね」
「えぇ〜、つまんないな〜。ぼくの想像では、僕が正体を明かして、君がめちゃくちゃ驚くはずだったのに」
ルナは、残念そうな顔でこちらを見てきた。
「それは、大変申し訳なく思ってます」
僕は適当に返事をした。
「はぁ~、もう良いよ。それで、これからどうするの?」
「どうするって何が?」
「いや、今は一時休戦みたいな感じになってるけど、これからまた戦うのか、君は別の戦場に行くのかどうする?」
確かに、何かノリで話してたけど、この女の子がさっきの龍何だよな。
「う〜ん。でも、此処でぼくが別の場所に行ったら、君も別の場所で戦うんでしょ?」
「まぁ、それがシューゼ様の命令だし」
「じゃあ、僕は此処で皆んなの戦いが終わるまで君と遊ぶことにするよ」
「ふ〜ん。じゃあ、ぼくもそうしよっかな〜。他の場所に行ってもつまらなそうだし」
ルナは、辺りを見渡しながらそう言った。
「じゃあ、始めようか。……というか、その姿のまま戦うの?」
「うんそうだよ。こっちの方が小回りも効いて動きやすいし」
ルナは伸びをしながらそう応えた。
「そっか」
こうして、人の姿へと変わった黒龍王ルナとの戦いが幕を開けた。
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時を同じくして、貴族エリアのとある路地。そこでは、シューゼの命により、勇者パーティーと接触したゴウエンと、ゼーレ、レイラが交戦していた。
「くっ! どんだけバカ力何だよ!」
そこでは、ゼーレがゴウエンの拳を剣で受け止めていた。
「ゼーレ、そいつとは正面から戦ってはだめよ。初めて私がコービアと戦ったときと同じ姿をしているの」
「ほう、その口ぶりからするに、やはりコービアは倒されたのか」
ゴウエンは更に力を強めた。
「くそっ!」
ゼーレは、ゴウエンの怪力に押されて建物まで吹き飛ばされた。
「大丈夫!?」
レイラは、ゼーレの方を見てそう言った。
すると、背後に大きな気配を感じた。
「よそ見してんじゃねぇ!」
「っ! 『反射水』」
背後から、ゴウエンが殴りかかってきたが、レイラは直前で魔法の発動をすることが出来た。
「くっ! 何だ? 押し返される!?」
ゴウエンは、レイラの水の盾により、力を反射されて、建物まで吹き飛んだ。
「ゼーレ生きてる?」
「うん、何とかギリギリでライムから教わった受け身をやったから大丈夫だったよ」
ゼーレは、瓦礫をどけながら建物の中から出てきてそう言った。
「くぅ〜。今のは、効いたぜぇ~エルフの嬢ちゃん」
ゴウエンも瓦礫をどけ、肩を回しながら、レイラの方を睨んでそう言った。
「くっ! 流石は魔将軍。あの程度では、致命傷にもなっていないみたいね」
「ほらほら、夜はまだ長いんだから、楽しもうぜ。なぁ?」
ゴウエンはそう言いながら、ゼーレ達に突っ込んでいった。
「こっちとしては早く終わらせてライムを探したいんだ。さっさと倒させてもらう!」
ゼーレは、剣をゴウエンに向けてそう言った。
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又々時を同じくして、コロシアムVIPルーム。そこでは、ツカサとアカキの激しい戦闘が起こっていた。
「オラッ!」
ツカサは、アカキ目掛けて拳を振った。
「くっ! 噂には聞いていたが、獣人と言うものは本当にバカ力だな!」
アカキは、ツカサの拳を紅い剣で受け止めながらそう話した。
「フッ、俺様はその中でも特殊だからな。素の力では、ライトニング様にだって負けないぜ?」
「そうか。だが、お前は魔力無しの最強であって、真の最強では無い。つまり、こちらが魔法を使えば、圧倒できる」
アカキは、そう言いながら剣に魔力を込めた。
「ハッ! それはどうかな!?」
ツカサはニヤリと笑いながら、拳に更に力を込めた。
「その余裕がなくなるのが楽しみだ。……地獄の業火に切り裂かれろ、『崩壊之地獄!!』」
アカキがそう言うと、剣から地獄の業火を彷彿とさせる至極色の炎が燃え上がった。
「っ!」
その炎をまとった剣は、ツカサの拳に少し食い込んだ。
「くっ! これでも斬れ無いか。なら……」
アカキは、そう言ってツカサから少し距離を取った。
「勢いをつけて斬れば良いだけの話しだ!」
アカキはそう言いながら、剣先をツカサに向けて、突きの構えを取った。アカキの剣には至極色に染まった業火が燃え上がっている。
「フンッ、何をしようとも、俺様の拳は剣などには負けない!」
ツカサは、そう言いながら左手を胸の中央に寄せ、右手を脇腹の辺りに付けて正拳突きの構えをした。
「行くぞ! 『獄炎之衝撃!』」
アカキはそう言いながら、ツカサ目掛けて突っ込んだ。
だが、アカキの突きはツカサに届くことは無かった。
「っ! このクソバカ力が〜!!」
そう、ツカサは右拳を突き出してアカキの剣と己の拳の間に空気の壁を作り、炎と剣に触れること無くアカキの技を正面から受け止めたのだ。
「フッ、これでわかっただろ? 魔力が無くて魔法が使えなくとも、相手の魔法に触れずに勝つことだって出来るんだよ。お前はもう少し、筋肉をつけたほうが良かったな」
「クソが〜!」
アカキは怒りと焦りにより、力任せに剣を前に突き出した。
「フンッ!」
ツカサは、足を踏ん張り、拳を更に前に突き出した。
すると、アカキの剣が粉々に砕け落ち、そのままツカサの拳はアカキの顔面に直撃した。
ツカサの拳が顔面に直撃したアカキは、コロシアムの壁を突き破り、路地に横たわった。
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ムーア上空。そこでは、人の姿に変わった黒龍王ルナとライトニングの激闘の真っ最中だった。
「ハァハァ、流石は龍王なのか? 僕とここまで殴り合えるなんて、タフだな」
ライトニングは息を切らしながら、頰の汗を拭っていた。
「ハァハァ、……フフン、君もなかなかやるじゃん。褒めてあげようか?」
ルナは、余裕そうに上から目線で微笑んだ。
「フッ、それは有り難いね。でも、遠慮しておくよ……」
「でも褒めるのは、僕の最強を見てからにしてもらいたいし」
ライトニングの右手には、漆黒の雷が漂い始めた。
「へぇ~、コロシアムで撃ってた雷魔法も中々だったけど、もっとすごい魔法があるんだ」
「あぁ、純粋な強さで言ったら『雷神器之黒衝撃』や『万雷之黒衝撃』の方が強いが、見栄えだけで見ればこっちの方が見惚れると思うぞ」
「ふ〜ん。それは楽しみだ」
「そうだ。これで死んでも文句言うなよ」
ライトニングは不敵な笑みをルナに向けた。
「ふふっ、大丈夫。避けるから」
ルナは自慢気に言い放った。
「いや、この技は避けれないと思うぞ?」
ライトニングはそう言うと、右手を前に出し、魔力を込めた。
すると、ライトニングの手の上に漆黒の雷で出来た野球ボールぐらいの大きさをした玉が出現した。
「へ?」
それを見たルナは、直感で今から来る魔法のヤバさを感じ、頭が真っ白になって恐怖で立ち尽くした。
「我が純粋なる魔力のみでの力技を体感せよ。『黒魔力之爆発!!!』」
ライトニングは、そう言いながら右手の拳を強く握りしめた。
すると、ライトニングの拳から漆黒の光が溢れ、次の瞬間ものすごい爆発音と共に、ムーア全体を強い爆風が襲った。
爆風で黒雲は消滅し、黒い夜空には月と星が輝くだけの広大な虚空が広がっている。




