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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
黎明編

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61 全てを貫く最強

 時は戻り、シューゼが魔王城を後にして、数時間後のゴウエンが任されている混沌の大森林近くの岩山。


 そこでは、長い臙脂色の髪をオールバックにし、赤く鋭い目つきをした、筋骨隆々で身長が3m近くあるゴウエンが、ドラゴン達と御飯を食べていた。


「なっ! シューゼさん。どうされたのですか?」


 ドラゴンと一緒に御飯を食べているゴウエンの元に、突如としてシューゼが姿を現した。


「いや〜、ちょっと頼みたいことがあってさぁ〜」


「っ! 何なりとお申し付け下さい。ゴウエンが可能な限り尽力いたします」


 ゴウエンは膝を付き、頭を下げてそう言った。


「うんうん、良い心がけだ。じゃ、頼みなんだけど、黒龍王ルナを連れて、武装国家ムーアを壊滅してきてよ」


「っ!」


 その言葉を聞いた瞬間、ゴウエンは冷や汗が止まらなくなった。


「もっ、申し訳ありません。ルナを起こすことは魔王様から禁じられておりまして……」


「何? 神である俺の言う事を聞けないっていうの?」


「いっいえ、そう言うわけではないのですが、龍王に名を連ねる龍達は、強すぎる制圧力故に、真っ向からの戦闘を好まれる魔王様がつまらないからと言って、半永久的な眠りにつかせたので、魔王様の許可がなければ封印を解くことは出来ません」


 ゴウエンは焦って早口になりながらそう話した。


「はぁ~、うるさいなぁ〜このクソ真面目が。知ってるんだぞ? 別に、魔王だけが封印を解けるわけでは無く、お前等魔将軍でも解けるのをよぉ〜」


 シューゼは頭を掻きながら、ゴウエンを見下してそう話した。


「っ!」


 ゴウエンには、さらなる冷や汗が出ていた。


「良いから封印を解け、2日後の夜。俺の魔法で、お前とルナをムーアに連れて行く。せいぜい頑張れ」


 シューゼはそう言って、闇の中に姿を消していった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 舞台は戻り、すっかり夜になった武装国家ムーア内にあるコロシアム。そこでは、今まさに大陸一の強者を決める試合が始まろうとしていた。


「皆様、たいへんお待たせいたしました。これより、大陸一の戦士を決める決勝戦を開始します!」


「今大会の決勝戦は何と、大会初となる獣人同士の試合となります!」


 実況のお姉さんがそう言うと、コロシアムの廊下から一人の戦士が歩いてきた。


「先ずご紹介するのは、魔力の無い最強と呼ばれ、タイマン無敗のこの竜人! ゼロ選手です!」


 実況のお姉さんがそう説明すると、ツカサが頭にハチマキを巻き付けながら廊下から出てきた。


「おぉ~い、ゼロ! 俺ぁお前の魔法を使わない戦法に惚れたんだ。だから、魔法がなくてもどんな奴にも勝てるってことを証明してくれよ!」


「あぁ、やってやるぞ! 見ててくれよ!」


 ゼロは、話しかけてきたおっさんやコロシアム全体に手を振りながら、コロシアムの真ん中まで歩いていった。


「続きまして、こちらもまた大注目の選手。先の戦いでは異次元の闘いを見せ、己が力をこれでもかと私達に知らしめた猫の獣人。もはや、その魔法は何を壊せない? 最強のダークホース、アシュラ選手!!」


「うんうん、最高の紹介だね。お陰で気分が更に上がったよ」


 てか、今日は満月か。最高のシチュエーションだな。


 アシュラは、狐の面の中でニヤニヤしながら、コロシアムの真ん中まで歩いていった。


「やっと戦えますね。成長した俺の実力を全部ぶつけるんで、約束どうりそちらも手加減無しでお願いしますよ」


「あぁ、もちろんだ」


「それでは、準備も出来ているようなので、早速試合を開始いたします!」


 実況のお姉さんがそう言うと、審判の人が爆発魔法を打ち上げた。


 その音と共に、ツカサは僕の方に拳を握りながら突っ込んできた。


「おぉー!!」


「ふっ、受け止めてやる」


 僕は、ツカサの拳を受け止める為、両腕を胸の前でクロスさせて腰を落として構えた。


「ふん!」


 だが、僕の眼の前まで来たツカサは、握った拳を地面に叩きつけて地面にヒビを入れた。


「っ! マジか」


 そこから、ヒビの入った地面は段々と割れ始めて、ツカサの前の地面は崩れた。


「オラ!」


 僕が体制を崩した隙に、ツカサは僕のみぞおちに拳を打ち付けた。


「くそっ!」


「くっ! 流石に硬いですね。でも、まだまだここからですよ」


 そう言ったツカサは、もう片方の拳も握り、連打を繰り出した。


 くっ! ツカサは魔法を使わないから、次の攻撃が度のタイミングに来るのかを読むのが難しいんだよな。まぁ、僕が魔法を使う戦いに慣れすぎたのが問題なんだけど。


 僕は、足場の悪い中、何とか魔力での身体強化などでツカサの連撃を凌いでいた。


「俺、どうやったら魔法が使えなくてもライトニング様と戦って勝てるかを考えてたんですよ。その結果、やはり魔力がほぼ無限のライトニング様相手に消耗戦は無理なので、速攻で決着をつけることにしたんです」


「そうだな、それがお前の最善策だ」


「ですので、このまま凌いでいるだけではいつの間にか終わってしまいますよ?」


「それは困るな。なら……」


 僕はそう言って後ろに飛び、ツカサから少し距離を取った。


「そっちがその気なら、俺も速攻で決めさせてもらう……。ついでに、そろそろ奴隷解放も始めるとするか……」


「己が最強を見せつけろ、『黒雷無双』!」


 アシュラはそう言いながら、魔力を一気に開放した。僕の周りには、漆黒の雷が漂っている。


「ハハッ、やっと本気になってくれましたか」


「まぁ、別に黒雷無双を使ってないからって本気じゃない訳じゃないんだけどな」


 アシュラはそう言いながら、左腕を前に出した。すると、コロシアムの上空に、大きな渦を巻いた雲が出現し、その雲の周りにも漆黒の雷が漂っていた。


「我が漆黒の魔力により全てを貫く神雷を受けてみよ。これぞ我が神技が一つ、『雷神器之黒衝撃ケラウノス・インパクト』!!」


 アシュラが人差し指を下に向けながらそう言うと、渦を巻いている雲の中心が一瞬光った。……と同時に一本の細い漆黒の雷が、ゼロ目掛けて一直線に落ち、激しい雷鳴がムーア中に響き渡った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 アシュラが、『雷神器之黒衝撃ケラウノス・インパクト』をコロシアムに落とした直後のスラム街のとある大きなビルの廃墟。そこでは、ライトニングが落とす黒い雷を待機していたシエル達『ナイトサンダーズ』総勢200人が、獣人やエルフなど、種族問わず居た。


「あっ! シエル、黒い雷が落ちたよ!」


 漆黒の雷がコロシアムに落ちるのを見たアイは、シエルにその事を元気よく報告した。


「そのようね。それではこれより、ライトニング様の命による奴隷開放を開始する。各員作戦通りに動くように」


「ハイッ!」


 シエルの言葉を聞いたナイトサンダーズの面々達は、返事をした後、素早くムーアのスラム街各地へと散らばって行った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ナイトサンダーズ達がスラム街各地に散らばった数分後。


 とある倉庫にて。


「ひっ! なっ、何なんだコイツラは」


 倉庫内には、男達が数名居て、武器を持って臨戦態勢に入っていた。


「ふざけんな! エルフがなんでこんなところにいるんだよ!」


 そう言う男は、アシュラがこの前出会った小太りした金髪の男だった。


 そして、男達の眼の前には、満月の月明かりに照らされ、顔がはっきり見えないが、全身に黒基調で所々に雷のデザインが入った服を着ているエルフ達が立っていた。


 男達は、奴隷達を檻の中へと入れている最中だった。そこに、シエルとエルフ数名が扉を壊して入ってきたのだ。


「それを貴方達が知る必要は無いわ」


 そう言う彼女の目は冷たく、なんの慈悲も躊躇もない目をしており、男達はこれから自分達に起きることを予感できてしまった。


「ギャャ!」


 シエル達は、なんの躊躇いもなく、倉庫内に居た男達を切り刻んでいった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数分後。


「貴方達、もう大丈夫よ。だから、震えないで」


 シエルはそう言いながら、アシュラがこの前、小太りした金髪の男と共に見かけた、黒髪黒目の女の子に近寄って目線を合わせて頭を撫でながらそう言った。


 しかし、女の子達はずっと震えたままだった。


 そう、何故ならシエル達の綺麗に透き通った純白の肌には、今さっき男達と戦って浴びた返り血が大量に付いていたのだ。

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