47 死後の世界
ライトニングが放った世界そのものをも破壊する爆裂神技『稲妻之超新星爆発』により、宇宙の原初の姿、"無"へと変貌したオリードを作り直そうとゼイト様が奮闘していた頃。
ブラックホールに吸い込まれて死んだライムは、2度目の死後の世界に来ていた。
「ハッ! 久しぶりのこのなんとも言えない感覚は、やっぱり僕死んだのか」
意識を取り戻したライムの眼の前には、灰色の霧が漂う世界が広がっていた。ちなみに僕は仰向けの体制で寝転がっている。
僕が意識を取り戻すと、突然眼の前に白い瞳をした白髪ロングのお姉さんが現れた。
純白のローブのみで真っ白な素肌を隠しており、胸は絶壁。
際どすぎる服装をしているのにも関わらず、神々しさしか感じない程に、手の届かぬ存在と思わせる圧倒的なオーラを纏っている女神。
「そう、此処は魂が集まる世界『ラスル』。君はブラックホールに吸い込まれて死んだんですよ」
お姉さんは、屈みながら笑顔でライムに話しかけた。
くそっ、魔力で自分とディストラを守って自爆せずに済んだと思ったのに、結局爆発の後に起こったブラックホールに吸い込まれて死んじゃったか。
そりゃあ、あの技の元は超新星爆発だけどさ。
まさか、"無"にもブラックホールが現れるなんて思わなかったよ。
ま、あのブラックホールは、時空を破壊した副産物だから、"無"にも存在できる様な効果が付与されてたんだろうな。
まぁ、これからは最強の自爆技として運用していこう。多分もう使わないだろうけど。
「ですが、流石はライムさんですね。もし、あの技で自爆していたら魂まで破壊されて、私でも復活させることはできなかったので、魔力で自爆を防いだのはナイス判断です」
「それはどうも有難う御座います。まぁでも、結局ブラックホールに吸い込まれて死んでるので実質自爆技ですけどね。てか、お姉さんってもしかしてアニマさんですか?」
ライムがそう聞くと、お姉さんは僕の手を優しく握り起き上がらせた。
「よいしょっと」
そして軽やかなステップで少し距離を取り、話し始めた。
その時に、色々と見えそうになっていて、ライムは反射的に目を逸らした。
「ふふ〜ん、正解! 私の名はアニマ。魂を司る女神様だよ」
明るい声色で話しながら、満面の笑みを浮かべている姿には神の面影は無く、ただ少し不思議なお姉さんの様だった。
まぁそりゃあそうだよな。
「それでその感じだと、僕とディストラは生き返れるっていう解釈で大丈夫なんだよね?」
「うん、そうだよ。お姉さんに任せなさい!」
アニマ様は平らな胸に右拳を当て、自信満々に言った。
「あっ! でも、ゼイトの方があと数時間掛かるみたいだから、それまでお話しでもして待ってる?」
アニマ樣は、首を傾げながら聞いてきた。
ていうか、アニマ樣は動きの激しい女神様何だな。
楽しいから別に良いけど。
「まぁ〜他にすることもないしそうするか。てか、ディストラはどこに居るんだ?」
「ディストラ君なら、いつも通り君の影で寝ているよ。まだ夜じゃないし、死んだことにも気付いてないんじゃないのかな?」
ウソだろ、宇宙を破壊する技だってだいぶデカい音がなってたんだぞ、起きてないなんてこと有るわけ無いよな。
僕は、恐る恐る影に向かって話しかけた。
「おーい、ディストラ起きてるか?」
だが、返事が返ってくることはなかった。
「あぁ~こりゃ完全に寝てますわ、もう爆睡ですわ」
僕は、ディストラの危機感の無さに呆れた。
「まぁ、偶にはこういう日もあるよな」
それからライムとアニマとで、ゼイトがオリードを元通りにするまで雑談を交わした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから数時間後。
「おっ! ライム君、オリードが完成したみたいだよ」
アニマ樣は突然立ち上がり、話し始めた。
「お〜、やっとか。それじゃあアニマ樣生き返らせてくれ」
「うん、オッケー。あっでも、生き返る場所は死んだ所と同じだから落下には気をつけてね」
アニマ樣は人差し指を立て、僕に向けながら真剣な眼差しで話した。
「はい分かりました」
「うん、それじゃあいっくよ~」
アニマ樣がそう言って両腕を上に挙げると、アニマ樣の周りに膨大な魔力が集まり始めた。
「じゃあライム君、また何処かで会おうね」
アニマ樣は、ニコっと笑っていた。
「いや、アニマ樣と遭う時は死んでるってことじゃないですか。あんま嬉しくないですよ」
僕がそう言うと、アニマ樣は不思議そうに首を傾げながら話し始めた。
「いやいや何言ってるのライム君。神は無条件で宇宙と宇宙、世界と世界を移動できるんだよ」
「あっ! そう言えば、僕がオリードを壊そうとしてる時も神様達は自分で移動してましたね。確かにそれなら、また何処か出会えたら良いですね」
僕は、少し笑顔を浮かべながら優しい声色で話した。
「うん」
アニマ樣は、元気よく頭を縦に振って返事をしてくれた。
そして、僕の眼の前は魔力で覆われ、意識が遠退いていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次に目を覚ますと下の方に、ゼイト様の力によって元の姿に戻ったオリードがあった。
「うわぁ~ヤバイ、久々の体だから上手く魔力が出せない!」
僕は慌てた。魂だけの存在になってから数時間が経っていたので、いざ魔力を使おうとすると上手く扱えなかったのだ。
「くそっ! 黒雷無双も使えそうに無いし、これは一か八か賭けに出るしか無いな」
僕はそのままオリードに向かって落下して行った。
「うぉぉお! 此処だ!」
僕は右手に魔力を集中させて拳を振り上げた。
『落雷之衝撃!!』
僕は、地面と衝突する瞬間に拳を地面に叩きつけた。
僕が地面に衝突すると同時に、ものすごい雷鳴が辺りに響いた。
「何だ何だ?」
「何の音だ!」
付近に居た神や天使達がざわついている。
そして少しすると、砂埃から漆黒のコートに身を包んだライトニングの姿が出てきた。
「なっ! あれって俺達が邪神に襲われてた時に現れた、ライトニングとかいう奴じゃないか?」
「あぁ、きっとそうだ!」
神や天使達は、僕の姿を見るやいなや別の意味で騒ぎ始めた。
「あれ? 服とか剣とかも元に戻ってるじゃん。いや〜本当にゼイト様には頭が上がらないな。いつか会って、直接お礼したいなぁ」
そんな事を話していると、遠くの方から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。
「お〜い、ライム〜。無事か〜」
「なっ! おいフライム、この姿の時にその名で呼ぶなよ!」
「あっごめんごめんつい本名で呼んじゃった。てへペロ」
フライムは舌を少し出し、軽い感じで誤ってきた。
「いや、てへペロじゃねぇんだよ」
僕はフライムの頭を軽く叩いた。
「わぁ〜ん痛いよぉー、助けてレイー」
「私は知りません」
レイはそっぽを向いて、冷たい態度を取った。
「えぇ~。じゃあマリンは慰めてくれるよね?」
「いえ、ライム様の気持ちを考えれば妥当かと思います」
マリンは、真顔で淡々とライムの援護をした。
「え? 二人共本当に余の従者なんだよね?」
「「はいそうですよ」」
2人は息ぴったりの返事をした。
そして、そんな事をしていると、辺りはまた別の意味でざわついていた。
「え? ライトニングの正体って、最近話題のライムなのかよ」
「こりゃあビッグニュースだぜ」
はぁ~、せっかく神達を救った陰の実力者を演じれてたのに、フライムのせいで台無しだよ。
まぁ、正体がバレたのが神と天使だったのが救いかな。
僕がそんな事を考えていると、マリンがフライムに話しかけた。
「フライム様。そろそろ神殿にいかなくては行けませんよ」
「うんそうだね。それじゃあ行くよ、ライトニング」
「今更変えても意味ねぇっての」
こうして、僕はフライム達と共に神殿へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
神殿の最上階に着くと、ヘルト様が待っていた。
「おぉ〜ライムよ、良くぞこられた。さぁさぁ座りたまえ」
僕達は用意されていた椅子に座った。
「先ずは礼を言わねばならんな。ライム殿この度は我々の世界であるオリードを守って頂き誠に感謝いたす」
ヘルト様はそう言いながら、頭を下げた。
「いやいや、顔を上げて下さいヘルト様。僕は、自分のやりたいことをやるために戦っただけですから」
「いや、それでもこの世界を守ったことは、今ある世界全てを守ったと同じと言っても過言では無いのじゃ。だから、お主にはこれを受け取ってほしい」
ヘルト様がそう言うと、近くに居た女神が布を被れせられた何かを持ってこちらに歩んできた。
女神は僕の近くまで来ると、布を取った。
そこには、何かの液体が入った瓶が入っていた。
「え? なんですかこの怪しい液体の入った瓶は」
「それは、生命を司る神の力が宿った神樹から取れた液体で、それを飲めば生命力がみなぎり、寿命が伸びるのじゃ。お主達獣人は、大体寿命が100年じゃからライムの場合は、これを全て飲めば大体500年は生きられる」
てことは、これを飲めば大体400年寿命が伸びるのか。
僕は気分が高揚し、顔が明るくなった。
「え!? この液体やばすぎだろ。でも……」
僕は少し顔を曇らせた。
それに気づいたヘルト様が話し始めた。
「あっ! お主、今永遠の命じゃないのかぁ〜って思ったじゃろ」
「えっ、いやぁ〜そんな事無いですよぉ」
僕は慌てて言い訳を探した。
「すまんな。この液体は神樹からしか取れず、しかも一滴取るのに、100年に一回のペースでしか取れんから、今あるのはそれだけなのじゃよ」
ヘルト様は、申し訳無さそうに話した。
「え! 本当ですか。ならめちゃくちゃ貴重じゃないですか! そんな物を頂けるなんて光栄です」
「フォッフォ、良いんじゃよ。その液体は儂らには必要ないからのぉ」
「確かにそうですね。それではお言葉に甘えて飲ませて頂きます」
僕はそう言って、瓶に入った液体を飲み干した。
飲み干して少しすると、僕の体の変化が起き始めた。
「なっ! 何だこれは!」
僕の体は、白い光に包まれ、まるで体の芯から浄化されているような気分だった。
少しすると、僕の体から光が消えた。
「ふぅ~、なんか凄え体が軽くなったよ」
「へぇ~、その液体を飲むとそんな感じになるのかぁ」
フライムは興味津々に僕の体を観察してきた。
「フォッフォ、お主の力がより一層濃くなったようじゃな」
こうして、僕は獣人では有り得ない程の寿命を手に入れたのだった。




