44 適材適所って大事だよね
僕はオリードにて瀕死の重傷を負ったが、間一髪の所で最高神ヘルト樣に助けられた。
一方その頃、サンダーパラダイス本拠地がある混沌の大森林にシエル達が到着していた。
シエルは戸を叩いた。
「失礼します」
「どうぞ」
シエル達はアンナの居る部屋に入った。
「何かあったのね?」
アンナは真剣な眼差しをしている。
「はい。つい先程、謎の者が3名我々の前に現れ、ライトニング様がその3名と共に何処かへと行ってしまわれました」
「なんですって!」
アンナの綺麗な黄色い魔力が高まった。
「落ち着いて下さいアンナ様。まだご報告がございます」
アンナは深呼吸をし、落ち着いた。
「取り敢えず最後まで聞くわ……」
「有難う御座います。他の報告というのは、我々がずっと情報操作を行っていた魔将軍が倒されているという情報が魔界に流れていたという報告です」
「え? まずいじゃない! 何処から漏れたのかしら?」
「それは……、話せないとのことでした」
シエルは、アンナの顔色を伺いながら恐る恐る報告を進めていた。
「そうなのね。じゃあ取り敢えず、スパイ班に報告しとくわ」
「それともう一つ……」
「まだあるの!?」
アンナはため息を付き、疲れた表情をした。
「魔将軍ゴウエンについてですが、ライトニング様からゴウエンは既に魔界へ到着していると言われました」
「え!? どうやって! 私達の包囲網は完璧だったはずよ!」
「それも詳しくは話せないと言われました」
「まぁ、彼が放ったらかしにしているのを考えると、きっと大丈夫なのね。分かったわ、その情報を元に今後の方針を決めていきましょう」
「「「はい」」」
シエル達は真剣な表情で返事をした。
「それと、貴方達は彼が帰ってくるまでは新しく設立した軍の教育係をしてもらうわ」
「えぇ~、やだぁ〜」
アイは、赤ちゃんの様に駄々をこねた。
「こら、アイ。シャキッとしなさい」
シエルがアイを叱った。
「私は戦闘が得意じゃないから辞退します」
カルラは、そぉ〜っとその場を後にしようとした。
「ちょっと待ちなさいカルラ」
「うっ」
シエルはカルラの服を掴んだ。
「貴方もやるのよ、カルラ」
シエルの顔は鬼のような形相をしていた。
「やだ〜」
カルラは、ぶんぶんと首を横に振った
「あら、カルラ。貴方はアンナ様に逆らうのね」
「いや、そういう訳じゃ……」
カルラは、アンナを見ながらしどろもどろになりながら言った。
「だったら、やるわよね」
シエルからは、圧が凄いオーラが出ていた。
「はい……」
カルラは渋々頷いた。
「カルラ。私は貴方達が彼の戦いを直接見た数少ない人材だからお願いしたの。だから貴方が戦闘に自信がないとしても、彼の戦闘を見て得た知識を皆んなに教えてあげてくれないかしら?」
アンナは優しい声でカルラに話した。
「わかりました」
カルラは、嬉しそうに顔を赤らめながら返事をした。
そうして、シエル達は訓練場に向かった。
「はぁ~、これからどうしよう」
シエル達が出ていった後、アンナは直ぐにため息を付いて机に顔を伏せた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
舞台は戻り、オリード。
僕達は、最高神ヘルト樣に案内されて、神殿に入っていた。
「やっば!」
僕はオリードに来てからやばいbotと化してしまっていた。
そのぐらい、オリードが別世界なのだ。
「フォフォフォ、やはりお主は良い反応をしてくれるな」
ヘルトは孫を見るような優しい瞳でライムを見ていた。
「やはり?」
「お主が知らぬのも当たり前じゃが、お主の名はオリード全土に広がり、神や天使の注目の的なのじゃ」
「なっ! まさか!」
僕はフライムの方を向いた。
フライムは口笛を吹きながらそっぽを向いた。
やはり、フライムが噂を広めたんだな。
はぁ~、陰に潜みたい僕的には辞めてほしいんだけど、今の状況だとありがたいのかな?
僕達は、ヘルト様に連れられ王の間にやって来た。
ヘルト樣は玉座に座り、話し始めた。
「先ずは謝罪を申し上げる。此処は神々が住まう世界にある星の中でもいちばん重要な星『オルド』そして、奴は破壊神デスラント。奴もお主を殺そうとしている邪神の一人なのじゃよ」
ヘルトは椅子に座りながら、ライムに頭を下げた。
「いえいえとんでもない。治してもらっただけでありがたいです」
「それにしても、破壊神の一撃を食らって生きていたのは驚いたぞ。半分諦めながら降りていたからのぉ」
「まぁ、生半可な覚悟で最強を目指しているわけじゃありませんので」
ライムは強い眼光でヘルトに答えた。
「フォフォ、そうじゃったな」
ヘルトは嬉しそうに笑っていた。
「さて、お主フライムから話を聞いてここに来たということは、強くなる覚悟があると受け取っても構わないのじゃな?」
「えぇもちろんです。是非とも私目に厳しい修行を言いつけて下さい」
「うむ、宜しい。さぁお主達連れていきなさい」
「はっ!」
ヘルト様がそう言うと、レイとマリンが僕を案内した。
「それでは最高神樣。私もライムに着いていきます」
フライムは、僕らの後に着いていこうとした。
「待てフライム。お主とは話したいことがある。なんてことはない、すぐに終わる話だ」
ヘルト様は真剣な目をしていたが、柔らかい声でフライムを引き止めた。
「了解しました」
ヘルト様にそう言われたフライムは、その場に留まることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕はレイ達に連れられ、闘技場のような所に来ていた。
「うわぁ~、こんなとこまであるんだな。マジでやべぇよオリード」
僕は目をキラキラさせながら興奮気味に言った。
「ライム樣、興奮している所悪いのですが、早速特訓を開始したいのですが宜しいでしょうか?」
レイは、オリードの凄さに興奮している僕に淡々と話しかけてきた。
「うん、もう準備はできてるからいつでも良いよ」
「それでは、この方達と戦って頂きます」
レイがそう言うと、闘技場の扉が開き、中から3人の神が出てきた。
そして、赤髪ロングにオレンジの瞳をした筋骨隆々な男と青髪ウェーブロングをセンター分けにし、水色の瞳をした色気漂う女性と片目を隠した長い緑髪に黄色い瞳の背の低い男の子がライムの前に移動した。
「ちょっと待ってくれ! もしかして同時に3人と闘うのか?」
「はい、そうですよ。フライム樣曰く、こちらの3人を相手に出来なければ、神の中でもトップクラスの強さを持つ魔王の側近を倒すことは出来ないからとのことです」
「あっちなみに、何の神かは闘ってからのお楽しみです」
レイはニコッと笑っていたが、ライムには悪魔の微笑みに見えていた。
「はぁ~、どんだけ強いんだよ魔王の側近とやらは」
僕はこれから先の旅のことを考え気が遠くなった。
「まぁ、先のことを考えてもしょうがないよな。さぁ、早速始めようか!」
僕が覚悟を決めている間に、レイとマリンは闘技場の上に上がっていた。
「それでは、ライム樣を鍛えようの特訓。スタートです!!」
レイがそう言うと、マリンがゴングを鳴らした。




