37 至福の晩餐
僕が鉱山に戻ると、すでにレイラは勇者パーティーに加入していた。
「それじゃあ、僕達は宿に戻りますか」
「そう言えば、外はもう暗くなってる時間ね」
「うん、結構寒かった」
ライムは自身の腕をさすって暖めていた。
「そうなのか。てことでまた明日来るから、レイラさん」
ゼーレは、レイラの方に手を振りながらそう言った。
「さん付けしなくて良い。今も一応仲間なんだし」
「そうか。じゃあまたな、レイラ」
「うん、また明日」
レイラはそう言いながら、ニコッと笑った。レイラの透き通った白い肌と綺麗な青色の髪が月明かりに照らされて宝石のように輝いていた。
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レイラと別れた僕達は、宿屋に向かって歩いていた。
「なぁなぁ、夜ご飯どっかで食べないか?」
「いや、宿屋の人が用意してくれるって言ってたじゃん」
「急に変更したら迷惑よ」
勇者パーティーだからってノリ悪くね?
まぁ関係ないかもだけど。
「大丈夫! 急用は宿屋の人にそのことを伝えることだから」
「なんだ、そのことを早く伝えるために急いでたのか」
「本当に自由ね」
ハルカは呆れた表情を浮かべてそう言った。
まぁ、実際にはシエルにお願いして宿屋の人に伝えてもらったんだけどね。
「それじゃあ、どこに行こうか?」
「それも、もう決まってるよ」
「準備が良いわね」
「まぁね」
実はシエルから、ユキネが偽名を使って設立したルミナス商会が、僕が元いた世界のある食べ物を再現して大陸全土に店舗を出したって聞いたんだよな。
何を再現したのかは内緒だったけど、僕がアンナ達に教えた前世の食べ物は、どれも好物だし、この世界には無いっぽかったから楽しみだなぁ。
「おっ! 見えてきたな」
そのお店には、ラーメンと書いている暖簾があった。
まじか! ラーメンは僕が一番好きな食べ物なんだよ。
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時は遡り、僕達が6歳ぐらいの頃。
僕がいつものように森で筋トレなどをしていると、アンナがやって来た。
「66、67、68、69、70」
「ねぇライム、今良いかしら?」
「ん? どうしたの?」
僕は筋トレを止め、水を飲みながら応えた。
「あのね、貴方が一番好きな食べ物を教えてほしいんだけど良い?」
「え? 別にいいけどなんで?」
「最近、小さい子達がご飯に飽きてきちゃったぽくて新しいご飯を作ろうと思うんだけど、どうせなら私達の知らないような料理を作りたいと思って」
アンナは少し照れくさそうに話した。
「それなら、この世界にないものも知っているライムに聞けばなにか教えてくれるかなぁって。後、偶にこの料理僕の好きなあれに似てるなぁとか言ってるから食べさせてあげたいの」
アンナは真っ直ぐな目でライムを見つめていた。
「まぁーいいけど、作れないと思うぞ」
「なんで?」
「だって僕の一番好きな食べ物はラーメンって言って、結構手間もかかるし、この世界の食材や調味料で再現するのは難しいから」
「それでも貴方の一番好きな食べ物なら、何とかして作るから教えてよ」
アンナは食い気味に近づきながら言って来た。
「もう分かったよ。え〜っと作り方は確か……」
僕は、前世の記憶を頼りに知っていることと、妄想を掛け合わせて説明した。
「ふむふむ、凄いですね」
アンナは僕の話を聞きながら真剣にメモを取っていた。
こうして僕は、アンナにラーメンの作り方を教えたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時は戻り、現在。
僕は、アンナ達からのサプライズに少し涙が出た。
僕達は暖簾をくぐり、お店に入った。
お店の中は、村のお店にしては広く、店員は色々な種族が働いている。
「いらっしゃいませ……。っな!」
店員は、僕達を見るやいなや奥の厨房へと向かっていった。
「わ〜色んな種族の人が居るわね」
「獣人なんて、ライム以外初めて見たよ」
そう言えば、お店はルミナス商会のお店だから、店員は皆んなサンダーパラダイス所属だから色々な種族が働いてるってシエルが言ってたな。
すると、お店の店長をやっているドワーフがこちらに向かってきた。
「ご注文が決まり次第お呼びください」
「はい。ありがとうございます」
すると、店長さんは僕の耳元に来た。
「申し訳ございませんが、お帰りの際に一度厨房に来ていただけますか?」
「うん、良いよ」
「ありがとうございます」
お店に居るお客さん達がざわつき始めた。
『ねぇねぇあの人って勇者よね』
『確かそうよ』
「ん? なんかざわついてるな」
「そりゃあ、貴方は今や大陸全土に知れ渡っている有名人なんだもの。いきなり現れたら普通びっくりするわ」
「ふぅ~ん。そういうもんなのか」
ゼーレはまんざらでもない様子で鼻の下を伸ばしていた。
「おい、それより早く決めようぜ。ほらこれがメニュー表だ」
僕は10数年ぶりのラーメンを食べられるので、興奮が抑えきれなくなってきて居た。
「もう、わかってるって」
「じゃあ僕はこれにしようかな」
「私はこれにするわ」
「ライムはもう決まってるんだよな?」
「うん、決まってるよ」
「それじゃあ店員さんを呼ぶか。すみませ〜ん」
ゼーレが店員さんを呼んだ。
「はいっ! ご注文をお伺いいたします」
店員さんは、エルフだった。
「じゃあ僕から頼むよ」
最初に僕が頼んだ。
「えっと、僕は豚骨ラーメン大とチャーシュー丼を1つで」
次は、ゼーレの番だ。
「僕は、塩ラーメンを1つで」
最後にハルカが頼んだ。
「私は、この野菜たっぷりラーメンを1つ」
「ご注文は以上で宜しいでしょうか?」
店員のエルフは、ペンを止めて確認をした。
「「「はい」」」
「では、ご確認いたします。豚骨ラーメン大が一点、チャーシュー丼が一点、塩ラーメンが一点、野菜たっぷりラーメンが一点でお間違い無いでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「それでは、少々お待ち下さい」
そう言って、エルフの店員さんは厨房に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
5分ほど待つと、ラーメンを持った店員さんがやって来た。
「こちら豚骨ラーメン大とチャーシュー丼です」
まずは、僕の頼んだ物が来たみたいだな。
「ありがとうございます」
僕はラーメンを受け取った。
「凄い美味しそうだな」
「時代はどんどん進んでるのね」
少しして、二人のラーメンも来た。
「こちら、塩ラーメンです」
「ありがとうございます」
ゼーレは、ラーメンを見て目を輝かせていた。
「こちら、野菜たっぷりラーメンです」
「ありがとうございます」
ラーメンを僕達に渡し終わった店員さんは別のお客さんの元へと行った。
僕達は割り箸を取り、ラーメンを食べ始めた。
「いっただっきま〜す」
「いただきまーす」
「頂きます」
僕達は、ラーメンを勢いよく啜った。
「ん〜、さいっこうだ!」
「こんな食べ物食べたことありませんよ」
「私も長く生きているけど、初めて食べたわ」
僕達は、ラーメンの美味しさに感動した。
結構あやふやに作り方を伝えたのにちゃんと美味しくなってる!
しかも、ちゃんとこの世界の食材で再現できてるってやばくないか。
やっぱり僕の組織は天才ばかりの最強組織だな。
そして、ラーメンもやっぱり最強だ。
僕達はあっという間に食べ終わり、店を出た。
「ちょっと僕は行くところがあるから先に宿に帰ってて」
「またこのパターンか?」
「本当に協調性がないわね」
「ごめんって」
ライムは、申し訳無さそうに顔の前で手を合わせた。
「まぁ、良いわ。ゼーレ、帰りましょ」
「そうですね」
そう言って、ゼーレ達は宿に戻っていった。
「それじゃあ僕は厨房に行きますか」
僕は、他のお客さんにバレないようにお店の裏から厨房に入った。
中に入ると、店長が待っていた。
「引き止めて申し訳ございませんライトニング様。アンナ様から感想を聞くようにと言われておりまして」
「他にやることもないし良いよ」
ライムはそう言いながら椅子に座った。
「ありがとうございます」
「それで、私達が再現したラーメンという食べ物は如何でしたか?」
ドワーフの店長に緊張が走った。
「ラーメンはね……。さいっこうだったよ!」
店長や店員達はホッとした表情をした。
「それはありがとうございます。具体的にはどんな所がよろしかったのですか?」
「まぁまず、ラーメン以外の所も完璧だったのが良かったよ」
「と言いますと?」
店長は紙とペンをポケットから取り出して質問をした。
「例えば、お店の外観だったり、接客の仕方とかだね」
「そうでしたか、ありがとうございます。外観は、ライトニング様が描かれた絵を再現させていただきました」
「それで、料理についてはラーメンとかは完璧に再現できてたし、チャーシュー丼もすごく美味しかったよ」
ほんと、この世界でここまで美味しいラーメンが食べられるとは、素材が全然違うから最初は心配してたけどそんな必要は無かったな。
「ありがとうございます。料理に関しては私共で試行錯誤いたしましたので、喜んでいただけてすごく嬉しいです」
店長は紙とペンを机に置いた。
「それと、開店直後かつ、エルーリ山脈から遠すぎるということもあり、まだお出しできませんでしたが、実はエルーリピッグの豚骨ラーメンやチャーシュー丼も御座いますので、また旅の途中にでもルミナス商会のラーメン屋に立ち寄ってくださいね」
店長は少し早口でライムに話した。
「すっげえうまそうだな」
「はい。エルーリピッグは厳しい山に生息しているので皮膚がものすごく硬くて基本は防具などに使われますが、脂肪をたくさん蓄えているので、とろけるぐらい柔らかくて物凄く美味しいそうです」
「へぇ~」
早く食べてみたいなぁ。
「それでは、感想などはこのぐらいでしょうか?」
「うん」
「それでは、お帰りになってもらって宜しいので宿屋にお戻りになって、どうぞごゆっくりして下さい」
店長や近くに居た店員もライムに深くお辞儀をした。
「うん、ありがとうね。ほんとに美味しかったよ」
「「「ありがとうございます」」」
店長や店員達は口を揃えてそう言った。
「あっそう言えば、ルミナス商会は他にも色々なライトニング様が教えてくださった神智を続々と商品化しておりますので、宜しければお立ち寄りくださいとユキネ様からの伝言でございます」
「うん、ありがとう。時間があれば寄ってみるよ」
そして僕は、店を出て宿に帰った。




