35 森林破壊は重罪です
街から出た僕達は、村を目指して更に北東に歩いていた。
「ここの道は舗装されているわね。前来た時はこんな道じゃなかったのに」
「前って、いつの話だよ」
ゼーレがハルカにツッコミを入れた。
「確か50年前よ」
「そりゃあ、そんなに経てば道も変わるだろ」
「確かにそうね」
「僕も知らなかったよ」
この道が舗装されているのは、僕たちの目的地をホノカから聞いたアンナが、ジョンさんに無理を言って、従業員総出で早急に作らせたのをさっきシエルに聞いたんだよな。
「知らなかったってことは、この道を使ったことがあるのか?」
「いや、無いよ」
「あっそうなんだ……」
「ライムが何を考えてるのか、分からなくなったわ」
ゼーレとハルカは、僕の発言を理解することを辞めた。
てか、この道なら寄り道することもなさそうだし、シエル達の出番は無さそうだな。
ダンジョンも、村の向こうまで無いらしいし。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃のシエル達は、何も起こらないので、暇を持て余していた。
「あぁーもう暇すぎる〜。ハムハム」
アイは、文句を言いながらお菓子を食べていた。
「こらアイ、今は任務中なのよ。本当にもうカルラもなんか言ってやってよ」
「ハァハァ、疲れたからちょっと休憩して良い?」
カルラは、木の枝を杖にしてフラフラになりながら、シエルにそう言った。
「もう、カルラ。本当に貴方は体力がないわね。そんなんじゃ私の班から外されるわよ」
シエルは、アイ達を諭すように話を続けた、
「私の班は虹雷剣が発足された後、虹雷剣の皆さんに代わってライトニング様をお助けする新しい精鋭組織、ナイトサンダーズ何だから、役に立たないと思われたら最後よ」
「ハァハァ、わかってるって」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕達はそれから、お昼に鹿を狩ったりしたものの、それ以外は特に何も起きずに村の近くまで来た。
村の近くまで来ると、近くの山の頂上が何かが爆発したかのように無くなっているのが見えた。
「うわっ、なんで山の頂上が無くなってるんだ?」
「さぁな。でもあれをやったのは魔将軍の中でもトップのやつだろうな」
「えぇそうね。気をつけていきましょう」
僕達は気になったので、穴が空いている山に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うーん、やっぱり山の頂上付近で何かが爆発したみたいだな」
「そうね。それに、木の焼け跡からして最近の出来事だと思うわ」
「流石はエルフだな」
「まぁね」
ハルカは自慢気にしていた。
そうして、僕達は夕方までには村に着いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
村は山に囲われていて、幾つか鉱山のある村だった。
「それじゃあ私はレイラの情報を集めてくるから、荷物をよろしくね」
ハルカはそう言いながら僕に荷物を渡して、村に入っていった。
「じゃあ、僕達は取りあえず宿屋に行くか」
「そうするか」
村を少し歩いていると、近くに居た緑髪に緑目の男の子と黒髪ロングと黒い瞳のお母さんが話しかけてきた。
「あの、お兄さんってもしかして勇者ゼーレさんですか?」
「あぁーそうだぜ」
「息子がいきなり話しかけて申し訳ございません。勇者様」
男の子のお母さんは何度も頭を下げながら申し訳無さそうにゼーレに誤った。
「いえ、別に大丈夫ですよ」
ゼーレは笑顔で対応した。
「本当に勇者様って居たんだ。ねぇねぇ、僕も勇者になれるかな?」
そう言う男の子の目は、キラキラと輝いていた。
「あぁ、努力すればなれると思うぞ」
ゼーレは、真っ直ぐな瞳でそう言い放った。
ほんとにゼーレって、口調の変え方が上手いよな。
まぁ僕も、ライムとライトニングの使い分けをしてるから人のことを言えないか。
親子と話していると、段々と村の人達が近づいてきた。
「おぉー、勇者様じゃ」
「ちょっと、勇者様かっこよくない?」
「確かに。でも勇者様を狙うなんて流石にできないわね」
「そうだよね〜。でも勇者様と一緒に居る獣人もなかなかだよね」
「まぁそうだけど、私はやっぱり勇者様のほうが良いわ」
くそっやっぱり勇者の肩書は強いな。
まぁ、別に悔しいとかそんなんじゃないけどな。
サンダーパラダイスの皆んなには、かっこいいって言われてるし、別にいいもんね。
「そうだ、おじいさん、宿屋って何処にありますかね?」
僕はひとまず、おじいさんに宿の場所を聞いた。
「宿屋なら、ここから突き当りまで真っすぐ行って左に曲がった先にありますよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
すると、また男の子が話し始めた。
「宿屋に行くってことは、この村に滞在するんだよね!」
「そうだぜ。仲間にしたいやつが居るはずだからな」
「まさか、僕のこと? いやー勇者様の耳にまで僕の強さが伝わってたのか~」
「いや、違うぞ」
「なっ!」
男の子はしょんぼりした。
「じゃ、じゃあせめて僕に稽古をつけてよ」
男の子がそう言うと、男の子のお母さんが申し訳無さそうに話した。
「すいません勇者様。この子は昔から勇者になりたいと言っていて、なんとかお願いできませんか?」
ゼーレは、少し悩んだ。
「うーん、まぁ特に急いで村をでないといけないわけじゃないし、良いですよ」
「ライムも良いよな?」
「うん、良いよ」
「やったー!」
「勇者様方、息子のためにありがとうございます」
「でも、取りあえず荷物を置きたいし、そろそろ夜になっちゃうし、明日の朝からでも良いか?」
「うん、じゃあ明日の朝9時に村の噴水で待ってるよ」
「了解」
ゼーレは、男の子に優しい笑顔を向けて笑った。
「それでは、私達は家に帰ります。本当にありがとうございます」
「じゃあねー。絶対来てねー」
「わかってるよー」
そして、親子は家へと帰っていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後、僕達は宿屋に入った。
部屋は僕達とハルカの部屋の2つ借りた。
「こちらがお客様のお部屋です」
部屋の造りは木製であまり広くないが、ベットも2つあるので十分だ。
「ありがとうございます」
「ごゆっくりおくつろぎ下さい」
宿屋のスタッフさんは、そう言って扉を締めた。
「ふぅー、やっと二人きりになれたな」
「そうだな。ハルカが加わってから旅でも旅館でも一緒だったからな」
「なぁハルカが帰って来るまで、ハルカが居たら話せないこととか話そうぜ。レイラが加わったらまた話せなくなるし」
「良いぜ」
僕達は、それからハルカが帰って来るまで、男子ノリ全開で話すことにした。
「そう言えばさ、ハルカって最初会った時は男っぽかったけどいつの間にかお嬢様みたいな口調になってたよな」
「どっちが本当のハルカなんだろうな?」
「さぁな。でもわざわざ変えたってことはお嬢様っぽいほうが素何じゃないか? ゼーレだって使い分けしてるだろ?」
「まぁ確かにな」
僕がそう言った後。扉の開く音がした。
「えぇその通りよ」
「わっ! ハルカか。早かったね」
「まぁね、エルフは早々旅に出ないし、情報を集めやすかったわ」
「まぁ、それもそうか。てか、やっぱこっちが素だったんだな」
「えぇそうよ。私、舐められるのが嫌いだから、旅をしてる時は基本男勝りな性格を演じてるのよ」
ハルカは少し怒った表情をしながら話していた。
「だから、最初の狩りの時に思わず素が出た時は焦ったわ。でも、最初話したときから貴方達なら大丈夫だと思ったから、素で居ることにしたのよ」
「そうだったんだ。でもやっぱり素で居るのが一番だもんね」
「えぇそうね。貴方達と居る時は楽だわ」
「それは良かったよ。なぁライム」
ゼーレはライムに同調を求めて話を振った。
「うん、本当に良かったよ」
いつの間にか口調が変わってたから、距離を取られてるのかと思ってたからな。
「そうそう、それでレイラの情報って何が集まったの?」
「集まった情報は、まずレイラはまだこの村に居ること、そして、レイラを貴方達の仲間にするのは難しそうだということが分かったわ」
「え? 何でなんだ?」
「何でも、4日前に近くの森で大きな爆発音が聞こえたから、村の警備をしている人達が見に行ったらそこに杖を構えたレイラが居たらしいのよ」
そう言うハルカの表情は暗く、気分が沈んでいる様に見えた。
「だから、森林破壊の犯人として捕まって森を壊した罪として、村長さんに鉱山での100年間の労働を言い渡されたらしいわ」
「まじかよ」
「確かに森を壊す罪は重いからな。勇者パーティーへの勧誘だとしても、仲間にするのは難しそうだ」
てか、エルフって森の守護者みたいな感じだってユキネから聞いたんだけど、それなのに森を壊すってことはなにか目的があるのか?
僕は少し考え、一つの真相にたどり着いた。
もしかしたら山を壊したのは、そこに僕達の武器となる物、それこそ勇者の剣とかがあったのかもしれない。
この世界には、勇者が残したという、魔王に対抗するための剣があるらしいし。
だとすると、レイラは僕達の敵ということになる。
てことはこれって、サンダーパラダイスが暗躍できる絶好の機会なのでは?
僕の考えたシナリオはこうだ。
レイラはすでに魔王軍に入っていて、僕達が勇者の剣を手に入れるのを防ぐために勇者の剣があった山ごと剣を破壊した。
だが、勇者の剣は壊れていなかった。
それならばと、レイラは直接勇者を倒すためにわざと捕まり、村に滞在する理由を作った。
勇者の剣がある場所に来ないわけがないからね。
そんなことが裏で起きているとは知らない勇者一行。
だが、それに気づいた者達が居た。
それこそが我らサンダーパラダイス。
サンダーパラダイスの盟主ライトニングは仲間と協力し、真相にたどり着いたのだ。
そして、黒幕レイラを倒し、勇者の剣を取り返した。
真夜中、月光が世界を照らす時、勇者の寝ている部屋の扉から何かを置いた音がする。
それに気づいた勇者が扉を開けると、目の前には勇者の剣、そして歩き去っていく漆黒に身を包んだ男が居た。
よし、完璧だ。
後はこのストーリーを進行するために早めにシエル達と打ち合わせをしないとな。
そんな事を考えていると、ゼーレが話し始めた。
「まぁでも、やった所は誰もみてないんだろ? それなのに悪者に決めつけるのはよくないと思う」
「確かに、爆発音が聞こえてから行ったってことは、本当にやったかはわからないわね。そもそも、エルフとして生まれたことを誇りに思っているあの娘が森を壊すわけ無いもの」
「じゃあ取りあえず、レイラが居るっていう鉱山に行こうぜ。ライムもそれで良いよな」
「うん、真実を確かめようともせずに決めつけるのは嫌だし、行こうか」
流石は勇者、正義感あふれる考え方だ。
こうして、僕達は村の近くにある鉱山に向かう為宿屋から外に出た。
「それじゃあ、行くぞ」
ゼーレは先頭を歩き始めた。
「ちょっと僕は行くところがあるから、先に行ってて」
「おう分かった。早く来いよ」
「うん、すぐ行くよ」
皆んなと別れた僕は、ライトニングの服に着替えてシエル達が居る村の近くの山に向かった。
「おはよう。シエル、アイ、カルラ」
「ライトニング様おはようございます」
「ライトニング様ー、おはようなのだ〜」
「おっおはようございます。ライトニング様」
シエル達は、各々のテンションでライムに返事を返した。
「あのさぁ急なんだけど、僕達は取りあえず明日まではこの村に滞在するから、別の任務をしてほしいんだけど良いかな?」
「はい、サンダーパラダイスの四か条の最重要規約にライトニング様の言葉は絶対というものがあるので、何でもおっしゃって下さい」
アンナ達は、なんてものを作ってるんだ。
まぁ助かるけど。
「そうか、それじゃあ。僕から3人に2つの任務を与えよう」
ライトニングは真剣な表情で話し始めた。
「まず1つ目は、この村でレイラと言う名のエルフの情報収集。そして2つ目は、深夜になったら僕と一緒に敵と戦う任務を言い渡す」
シエル達はライトニングの話しを静かに聞いていた。
「それと、この任務は極秘任務だから、アンナ達にも知らせちゃ駄目だよ」
「はい、わかりました」
「りよーかいなのです〜」
「了解しました」
シエル達はそう言うと、組織の正装から私服に着替えて、村へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は、鉱山に行く途中でゼーレ達と合流し、鉱山の採掘場に到着した。
「ここが鉱山か。なんかワクワクするな」
僕は、初めて生で見る鉱山に興奮していた。
「それじゃあ聞いてくるわね」
ハルカは、休憩をしている人に話しかけに行った。
「すみません。今お時間よろしいですか?」
ハルカは、筋肉質だが何処となく優しそうな短い緑髪のおじさんに話しかけた。
「ん? おぉーエルフに話しかけるなんて初めてだぜ。今は、休憩中だし大丈夫だぜ。何を聞きたいんだ?」
「そうですか、ありがとうございます。この鉱山に100年の労働を言い渡されたエルフが居るはずなんですが、今はどこに居ますか?」
「あぁー、あのレイラって言うエルフか。レイラならあと少しで休憩に入るから、ここで待ってな」
「はい。教えてくださりありがとうございます」
「良いってことよ。ってか、あんたらは誰なんだ?」
おじさんは、優しい口調で質問した。
「あっまだ自己紹介をしていませんでしたね。私はハルカです。この二人をレイラの所まで案内しているだけなので、勇者パーティーでは無いです。そしてこちらの二人は、まず人間の方は勇者ゼーレです」
「初めまして、ゼーレです」
ゼーレは一歩前に出てお辞儀をした。
「おぉー勇者様だったのか。これは失礼なことをしたな」
「いえいえ、こちらこそ名乗るのが遅くてすみませんでした」
ゼーレがそう言うと、ハルカは話しを続けた。
「そして、こちらが勇者パーティーのライムです」
「どうも初めまして、ライムです」
ライムは軽く会釈をした。
「こちらこそ、初めましてライムさん。そうだ、一応俺も名乗らないとな。俺はこの鉱山を任されている、ヘンリーだ。よろしくな」
その後は、ヘンリーさんと僕達でレイラが帰って来るまで、僕らの旅のこと等を話した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いやー、色々旅のこととか聞けてたのしかったよ。それじゃあ俺は休憩時間が終わるから戻るよ」
「はい、レイラのことを教えてくださりありがとうございました」
「おう、じゃーなぁ」
ヘンリーさんはそう言って、ツルハシを持って鉱山の奥へと向かって行った。
「楽しい人だったな」
「そうだな」
「レイラのことも色々聞けたしね」
ヘンリーさん曰く、レイラはクールオーラが出まくっている上に、あまり感情を表に出さないから、村の皆んなに怖がられているらしい。
だが、一緒に働いている奴らは皆んな、レイラを子供のように甘やかしており、レイラが山を壊すような奴ではないと感じているとのことだった。
だから、ハルカがレイラのことを聞いても気軽に答えてくれたのか。
てことは、レイラが犯人じゃない可能性がぐんと上がったってことだよな。
「レイラを仲間にできる希望が見えてきたな」
「うん」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから2分位が経った。
「来ないわね」
「来ないな」
「てか、レイラってどんな見た目なんだ?」
ライムは水を飲みながらハルカに話しかけた。
「さぁ、前会ったのが50年ぐらい前だから変わってるかもしれないし、本人を見たほうが早いわ」
「そっか」
そんな話をしていると、後ろから足音が聞こえてきた。
おっ、やっと来たか。
「よいしょっと」
ゼーレは立ち上がり、休憩所に来たエルフに、レイラ本人か尋ねた。
「貴方がレイラさんですか?」
「はい、そうです。初めまして勇者さん」
そこにはヘンリーさんの言う通り、クール系だと一目でわかるぐらい落ち着いた立ち姿。
身長はライムたちと比べると、やや低めのロリ体型。
胸は控えめで、青髪ショートボブに黄色い瞳。
服装は頭に青いウィッチハットを被っていて、青と白基調のローブを羽織り、中に白いシャツと短めの白いスカートを履いているエルフの女の子が、青い水晶を先端には嵌めた趣のある魔法の杖を持って立って居た。




