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【勇者が】残念なPT【最弱】  作者: かんちゃん
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第2話「人食い樹と泣き虫勇者」

最強のはずの勇者は封印の腕輪でレベル−100、泣き虫で剣も持てない。


国家随一の魔法使いはサディストで、仲間を実験材料扱い。


忍者はなぜか高確率でハト。


そしてそこに、何も知らない冒険初心者の少女――『初心者ちゃん』が加わった。




雑すぎる王国と、じわじわ崩壊していく世界の中で、


彼らは今日も笑って、泣いて、叫んで旅をする。




ゆるいけど危険、危険だけど笑える。


そんなドタバタ勇者パーティーの冒険譚が、今はじまります。

森の空気は湿っていて、どこか生臭い。

木々のざわめきが、まるで人食い樹の笑い声のように聞こえる。


「ひぃぃぃいいい!!!誰か助けてぇぇぇえ!!!」


勇者さんの絶叫が、鳥たちを驚かせて飛び立たせる。

彼のマントは逆さに垂れ下がり、ポケットからはポーションの瓶がぽとりぽとりと落ちていく。蔦はまるで生き物のように蠢き、彼の足を締め上げながら、ゆっさゆっさと揺らしている。


「わ、わぁぁっ! 勇者さんがオブジェみたいになってる!!」


私が叫ぶと、魔法使いさんは木漏れ日の中でにこりと微笑んだ。

その笑顔は、まるで美術館のキュレーターが“芸術作品”を紹介する時のそれ。


「ふふ……芸術的だろう? 哀れな勇者が逆さに吊るされた姿は、さながら“失敗作の人形”。……ねぇ勇者くん、生きてて恥ずかしくないのかい?」


「やめてえええ!!!」


勇者さんの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃ。

目はうつろで、口元は泡を吹きかけている。彼の手は空を掴もうと必死にばたついていたが、蔦がさらに絡みつき、指先まで拘束していく。


「クルッポー!」


頭上から聞こえる鳴き声に、私たちは一斉に見上げた。

そこには、ハトの姿になった忍者さんが、枝の上でやけに堂々と胸を張っている。

羽根をふくらませ、まるで「我こそが救世主」と言わんばかり。


「忍者さん! 地図も! 貴重品も! ついでに助けもお願いしますよ!」

「クルッポー……(気配を消しているつもり)」


……いや、見えてるし。


その間にも人食い樹の蔦は増殖し、今度は勇者さんの胴体をぎゅうぎゅうに締めつけ始めた。骨が軋む音が、森の静けさの中に不気味に響く。


「ぎゃあああ! 骨が! 骨が折れるぅぅ!」

「大丈夫かい勇者くん、それ以上折れる骨はあるかい?」

「そんなこれからは入れる保険みたいに言わないでぇえええ!!!」


魔法使いさんは指先に炎を灯す。

ぱちぱちと赤い火花が散り、彼のローブの裾が風に揺れる。

その姿は、焚火を囲む旅人というより、処刑を楽しむ狂気の芸術家。

まさか燃やすの!?


「ま、待って! 本気で焼いたら勇者さんごとですよ!」

「大丈夫さ、死んでも蘇生できるからね」


「笑顔で残酷なこと言わないでえええ!!!」


「こ、こうなったら私がやるしか……!」


私は木刀を振り上げ、気合いを込めて人食い樹に突撃した。


「えいっ!」


バシンッ!


……木刀は見事に跳ね返り、私の額にクリーンヒット。

星が飛び、視界がぐるぐる回る。


「いたぁぁぁぁっ!」 「ふふ……初心者ちゃん、君は生きてるだけで面白いねぇ」


「褒め言葉になってませんからぁ!」


人食い樹はギシギシと幹を軋ませ、さらに勇者さんを引き上げていく。

彼の姿は、もはや空飛ぶ干し魚。風に揺れるマントが、哀愁を誘う。


「たすけてぇぇぇ! 血が逆流して死ぬぅぅ!!!」


「安心して。頭に血がのぼっても、君は元から頭が弱いから変わらないよ」

「うわぁぁぁん!!!」


魔法使いさんの笑顔は、今日も変わらず残酷で美しかった。

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