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かみさまのいるせかい  作者: MIH
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光の翼

長くなったので2分割

オレは今、昼食後のお茶を飲みながら何度か読み返した無頼毎日(ブライデー)をパラパラめくっている。

あれからもうすぐ半年になるが、最低限必要な装備などは2週間ほど前になんとか揃える事が出来た。素材をなんとか集め終わって作ってもらおうとしたら、合成に必要な魔石の品質が足りなくて、しかも売っていなかったので結局魔石のダンジョンも60階までクリアするハメになったのだ。間に合わないかと思ってヒヤヒヤしたが、さすがにそろそろタイムリミットだろう。事が動くまで各自自由行動という事にしてオレは毎日ずっと寝ている。

他の3人は仲良くショッピングとか食べ歩きとかしていて、今日はダンジョンのいろいろな層で蜘蛛糸素材を集めているハズだ。今オレが着ている無地のフツーの長袖シャツはお試しで作られたヤツだけど、オリハルコンとミスリルの合金をスパイダーシルクと錬金合成してそのまま服に縫製して軽量化や魔法防御など付与してある。着心地もさらさらで軽いがオリハルコンのフルプレートメイルより防御力が高い。なので最近はダンジョンに行く時はコレに同じ素材の帽子を被るくらいで出かけている。が、実際に防御力のお世話になったことがないので本当にすごいのかよく分からない。魔物を倒す戦法上今まで誰も攻撃を食らったことがないのだから。一応人形に服を着せて攻撃したりしてみたが、木製の人形が粉々になる攻撃をしても服にはキズが付いていなかった。服がどんなに頑丈でも食らっちゃダメな攻撃はダメな事は分かった。

ただ、女の子は飾り気のないただのシャツなど許されない。バトルドレスだとか下着だとか色々思考錯誤している最中なのだ。オレも前世知識を振り絞って可愛い下着のデザインを紙に書いて渡したが性犯罪者を見る目で睨まれた。それはそれとして可愛いデザインは気に入ったらしく色々作っているらしいが、いつか見せてくれる日はくるのだろうか・・・。


ぼーっと午後の睡眠に入ろうとしていると表が少し騒がしかったので窓から外を覗いてみる。住宅地の狭い路地を王家の紋章が入った馬車がゆっくりと動いていてウチの前で止まった。・・・。マジかよ。

玄関が叩かれているので、居留守を使いたい衝動をこらえて渋々対応する。

扉を開けるともちろんヴィルヘルム君が立っていた。後ろに4人の美女を引き連れて。PTフルメンバーできやがったぜ。

「やぁやぁ、ヴィルヘルム君おひさしぶり。今日は急にどうしたの?」

とりあえずとぼけてみる。

「ひさしぶりだね。今日はルルグ=アシュレイ討伐の同行をお願いしにきたんだ。」

うーん、直球勝負だね。まぁ行くのは確定してるんだけどとりあえず話を聞こうかな。

「まぁ、玄関にこんな美しい婦人を立たせておく訳にもいかないし、狭い家だけど上がってよ。お茶でも飲みながら話そうか。」

「すまないね。・・・本当は一人で来る予定だったんだけど、PTの重要な話だからと皆ついて来たがってさ。申し訳ないけどお邪魔するよ。」

「あー悪いんだけどご近所さんが驚いてるから馬車は冒険者ギルドにでも回して待っててもらってね。道も狭いからさ。」

青い髪の女性が素早く外へ出て御者へ指示を出してくる。オレは先導してリビングへお客様を通した。

椅子を用意してお茶を適当に淹れて出す。食材ダンジョンの20~25階層付近で出る木の魔物はお茶のティーバックをランダムで落とすのだ。だからお出しするお茶は味がバラバラなハズだ。美味しいからきっと大丈夫。

さすが貴族、目は笑っていないがにこやかに微笑んでいる。王族にティーバックはダメだったかなぁ。美味しいんだけどなぁ。

とりあえずのおもてなしを終えるとヴィルヘルム君が話を始めようとする。

「前会った時には紹介できなかったから、PTメンバーを紹介するよ。こちらが・・・」

「大丈夫。知ってるよ。オレは無頼毎日(ブライデー)の愛読者なんだぜ?」

表面上微笑んでいた顔が口元が大分ひきつっている。有名なPTなので無頼毎日(ブライデー)に時々ターゲットにされるのだ。

青い髪をポニーテールにした茶色い瞳のすらりとした美人はレジーナ=レグリット=サファイアさん。王妃様の姉のレグリット侯爵夫人がサクラ王女の教育係を務めていてレジーナさんは王女の側近となる為一緒に育てられた。王女が最も信頼している部下であり親友だ。聖騎士の他に姫騎士(プリンセスガード)という恩恵ももらった姫様大好きっ子である。王女がいないスキにベッドにもぐりこみマクラをくんかくんかしたと無頼毎日(ブライデー)に暴露されていた。

銀髪でマジックアイテムっぽい眼鏡をかけていかにも魔法使いっぽいローブの人がごちらも侯爵令嬢ルビー=フォア=クリムゾンさんだろう。魔王軍幹部を爆炎魔法で追い払って有名になった人だが、彼女は賢者の恩恵を持っている。爆炎魔法だけでなく多くの魔法を使いこなす魔法のエキスパートなのだ。しかし有名になった後に実は”アノ日”だったルビーさんがイライラして草原に爆炎魔法を適当にばら撒いていたら、たまたま隠れてナニかしようとしていた魔王軍幹部に直撃して勝手に勘違いした幹部が高笑いをしながら”今日の所は引いておこう!”とか言って去っていったと無頼毎日(ブライデー)に暴露されていた。

そして彼女は全国に周期を知られ、無頼毎日(ブライデー)に時々”そろそろだから周りの人は気を付けて!”とコメントを出されるのである。もちろんなにがとか一切書いていない。

赤髪の勇者、アリサ=フォーリンスは普通に田舎の平民だった。たまたま勇者に選ばれただけだ。学校の寮の近くで猫とにゃーにゃー戯れていたら無頼毎日(ブライデー)に勇者は固有スキルで猫と会話ができる!とか書かれていた。

ヴィルヘルム君はハーレムパーティーの突撃取材とか受けていてインタビューで”王女様は尊敬出来るPTメンバーで一介の男爵家子息ごときが寵愛を得るなどありえない。(キリっ)”とか答えて王女が無表情になった所までが楽しく記事にまとめられていた。

王女はさすがに当たり障りない小ネタくらいだけど、みんな無頼毎日(ブライデー)にあることないこと書かれていて思う所もあるだろう。

「ヴィルヘルム君の親友にして心の友、アルク=カーバンクルです。よろしく。」

「あまりいい趣味ではありませんわね。」

王女は微笑みながら圧をかけてくるが、ライフワークはやめられない。


「それで、実はここだけの話なんだけど・・・」

仕切り直すようにヴィルヘルム君は本題に入る。

「北の前線の砦がルルグ=アシュレイに落とされてね、王様から至急の討伐指令を受けたんだ。」

知ってる。無頼毎日(ブライデー)に書いてあったから。

「王都がパニックになったら大変だから誰にも言わないでくれよ?」

明後日くらいになったら多分みんな知る事になるんだけどね。

「半年前はああ言ったけど、本当はボク達だけで行くつもりだったんだ。王様や冒険者ギルドのバックアップも全面的に得られたし、ボク達も大分強くなった。ダンジョンの50階のボスをなんとか倒したし、装備もミスリル以上、マジックアイテムも出来るだけ揃えた。王家から過去の勇者が使ったオリハルコンの聖剣も貸与されたんだ。でも今朝母上から至急の伝令が届いてね。絶対にアルのPTを連れて行くようにと厳命されたんだ。」

「あまり乗り気じゃないみたいだし、他のPTはAランクやBランクになるから後ろから付いてきてくれるだけでいいと思うんだけど・・・どうかな?」

「連携に穴が空くのはよろしくないので後ろで雑用係でもやっていなさい。」

王女の好感度はマイナスっぽいが正直すぎるだろう。それにしても・・・だ。


「王様や周りから情報や指示はなにかなかったの?」

「成功の時の報酬だとか派遣してもらう騎士団の話はしたけど?」

「ナーラさんの伝令は他になにか言わなかったの?」

「ないね。絶対にアルのPTを連れて行くように。だけらしいよ。何か分かったなら教えてくれればいいのに。」

うーーーーーーん。丸投げかー。

・・・。。。

「ヴィルヘルム君はそれでいいの?」

「?それって?」

「討伐は失敗するけどそれでいいの?って聞いてるの」


部屋の中が凍り付いたように空気が重い。聖女が立ち上がって”ホーリージャジメント!”とか打ってきたらどうしよう。死んじゃう。


「これ以上は不敬罪とかで死刑になりたくないからヴィルヘルム君とだけで話がしたいんだけど・・・。」

「・・・・・・どのような言動でも罪に問わないと約束します。」

「もしも失敗するのなら、なおさら全員聞かなきゃいけない。アル、母上からなにか聞いているのかい?」


「うーーーーん。とりあえずさ、この明後日発売(・・・・・)無頼毎日(ブライデー)をみんなで読んでよ。18禁だけどエロい訳じゃないから。」

「え・・・明後日発売なのになんであるの?」

勇者がいい所をつっこんでくれる。

「蛇の道は蛇ってね。発売日前の入荷雑誌をナイショで売ってくれる店があるのさ。」

「18禁なのになんで買えるの?」

「泣いてどげ・・高度な交渉によってなんとか手に入れたんだ。もう一回手に入るか分からないから(年齢的に)それはあげられないよ。」


誌上初18禁無頼毎日(ブライデー)をイヤそうな顔で女性陣は眺めているがヴィルヘルム君が意を決して開いていく。内容に大分驚いている。レジーナさんは途中の願いが叶うホーリークリスタルペンダントが欲しそうだった。関係ないページですぐ飛ばされてしまったが。

待っている間にホットウーロン茶を飲み終わったので次のティーバックを淹れてみる。これは・・・よく分からないけどオレンジペコーかな?美味しいからなんでもいいんだけどさ。


袋とじまで読み終わったようなので声をかける。

「レジーナさんは王女さまのマクラをくんかくんかしたの?」

「!!??!ねねねもはもない誹謗中傷だ!」

無頼毎日(ブライデー)はウソも混ぜるけど8割ほどはホントの事しか書かないよ。」

王女が少し怪しげな目でレジーナさんを見ている。

「さっき言った通り、この雑誌は明後日王様の許可の元で発売される。明日には出発する予定なんでしょ?」

ヴィルヘルム君はまだ話の先を計りかねている。

「王様含む国の上層部はね、結構深刻に捉えてるんだよ。王女様含めて全滅するかもしれない。けれど、本物の勇者を投入するんだから魔王はなんとか相打ちで仕留めてくれるかも、って期待してる。期待しながらダメだった時の次の手を進めてるんだ。多分時間を稼いでいる間に王都の守りを固めるつもりじゃないかな。」

「お父様はそのような人ではありません!」

「王女様のお父様はそんな人じゃないかもしれないけど、王様はそういう事を決断できなきゃダメなんだよ。可愛がっている、聖女でも”第三”王女なんだから国の危機には切り捨てるよ。上層部は手をうって、どう転んでもいいように動くから細かい情報や指示なんかが与えられなかった。」

「騎士団を同行させてくれます!」

「どれくらい?」

「精鋭の第3騎士団100騎を!」

「5万以上予想されるゴブリンを迎えうつ為に多分国中から兵を集めて3万とかで防衛すると思うよ。・・・王都まで来た時の予想だからキミ達が行く頃なら3万よりは少ないと思うけど・・・。」

無頼毎日(ブライデー)の記事を読んで3万のゴブリンが押し寄せる想像をして王女の顔が青くなる。

「3万でも5万でもウチの魔法で全滅させたる!」

「そうならない為に広範囲にばらけてるって書いてあったでしょ。多少削ったって全滅はムリだって。」


「ナーラさんはゴブリンの情報も上層部の決定も知っていて、仕方なく何も伝えずに伝令を出したんだよ。オレ達の役目は他が全滅してもヴィルヘルム君だけは生きて連れて帰ってくる事だね。」

「騎士団100騎にAランクPT2つ、BランクPT4つ。その中にはAランク勇者PT烈火の大剣とBランク勇者PT賢人への道が力を貸してくれる。それでも・・・勝てないと?」

「最高に上手くいって勇者死亡で王女取られるかな。悪い予想はPTメンバー全員ルルグくんに凌辱されて他は全滅だね。ヴィルヘルム君はさ、そうなった時に神様から勇者か魔王に誘われて頷かない自信はある?勇者になっちゃったらどの道いつか魔王と相打ちで死ぬ事になるし、神様はそういうドラマチックな筋書きが好きだから強力な力を得てルルグ=アシュレイは倒せるかもしれないけど、ナーラさんはそれが許容できないから勇者になる前に眠らせて連れ帰る事になるよ。たぶんナーラさんに聞いた一番強いスキル”おならギアス”を使って勇者や魔王になれないようにするんじゃないかな。アレ結局本人の了承が必要だからね。」

「それで、ヴィルヘルム君はそれでいいの?」

「・・・・・・キミ達なら・・・あの時のようにキミ達ならルルグ=アシュレイを討ち取れるのかい?」

「まさかまさか!魔王を倒せるのは勇者だけだよ。そういうふうに出来ているんだから。」

ウソだけど。

「でも。」

「勇者を含めてこちらの被害を出さずにルルグ=アシュレイを討つ事はできる。一応そのために半年準備してきたんだぜ?心の友よ。」

「ふざけた事を!Eランク冒険者になにが出来るというか!」

レジーナさんが怒っている、ヴィルヘルム君は考え込んでいる。ヴィルヘルム君はイイヤツだから情報を渡せば自分で判断できる。仲間の命がかかっているのだからプライドなんか軽く投げ捨てるだろう。


「まぁまぁ、決断は少しおいておいて、ちょっと雑談しようよ。聞きたい事があったんだよ。」

ヴィルヘルム君が返事をする前に玄関から声がする。ちょうどみんな帰ってきたようだ。




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