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与えられた家臣は梟雄でした  作者: 梅を愛でる人
富国強兵
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 光輝と香の口争いを聞き、メイソンが信じかねるように銃の威力を言い連ね参戦した。

 そして、豊はといえばエルルーンから困惑した視線を受け、持て余すように顔を背けていた。

 その豊への視線に弾正は鬱陶しそうにエルルーン眺め、直家に囁く。


「あのような戯れ言を信じたと思うか?」


「なに、信じなくてもよろしい」


 直家は微笑みをたたえ、声を低めて答える。

 訝しむ目で弾正が先を促すと、直家は笑みを深めて言う。


「あの小娘が蚊帳の外に置かれたのを知り、レッテリオに猜疑の目を向ければよい。あの男に連なる者は多く、それなりの勢力を持っておる」


「領主が疎んじ除こうとすれば、あの男が勝手に始末するか………じゃが、あの娘は無勢なのであろう。然れば、そうはなるまい」


 弾正が先々を見通して言うと、直家も軽く頷いて同意する。


「左様。あの男が小娘を殺せば助かるが、それは高望みでありましょうな。とりあえず、城手が分断されればよろしい」


「彼女はやっぱり殺さないと駄目かな? 情けを掛けるわけじゃないけど、本当に何も知らないみたいだ」


 豊がエルルーンに哀れみを感じて問うと、直家は目を閉じて首を振った。


「かの小娘の無知は関係ござらん。9領の者たちへの求心力が問題なのです。頼朝の例をあげるまでもなく、生かすのは危険でありましょう」


 惑うエルルーンを見やり、豊は憐れみつつも押し黙って頷いた。

 少しでも力をつけねば、弱者は呑まれ食われてしまうのは歴史が証明している。ようやく領外に兵を出した現状では、敵に情けをかけてやれるほどの余裕はなかった。


「みなさんは何故戦うのですか?」


 香の沈んだ声が響くと、豊ははっとして顔を上げ、小さな会議場には沈黙が広がった。

 誰も答えないのを見て取ると、メイソンが肩を竦めて言う。


「ここで王になれって言われただろう? オレは好きにやるし、邪魔するなら潰すまでだ」


「こっちも容赦しない。女神のお告げに従うまでもなく、オレの軍団の力を見せるさ」


 光輝が若者らしい傲慢さで答えた。

 ふたりの答えに、香は軽蔑したような溜め息を吐き、豊へと視線を転じた。


「おれはこの世界のことはどうでもいい。元に世界に戻してもらうのが望みだよ」


「あの、山名さん、元の世界に戻りたいんですか?」


 香は目を見張って驚き、不思議そうに尋ねた。

 光輝やメイソンも、元の世界に帰るつもりなどないと言う。

 地位に権力、軍事力まで手にした今、元の世界に戻って平凡な一個人となるなど考えられないと嘲笑った。


「おれは平穏な生活で充分だ。殺されないように抗って、機先を制して殺さなきゃいけない世界に魅力なんか感じない。おれのとこは女神なんかじゃなかったし、望んで来たんじゃないんだ」


「私のとこもお爺さんの神様でしたよ。元の世界では死んでますし、未練もありませんけど………戦争に否定的なのは同感です」


「おじさんがどう思おうと、もうこの世界で領主なんだしさ、もうちょいやる気みせたら」


 香が頷きを返すと、光輝が蔑んだ目で呆れたように言った。豊は表情を消して、薄笑いの光輝をじっくりと見据える。


(自信があるせいかずっと上から目線だけど、自分の死や敗北は想像してないらしいな。もっとも、あっちの5領の領主は承知の上でやる気みたいだけど)


 豊が視線を転じれば、メイソンは光輝と同じように薄笑いを浮かべているが、明らかに違う種類のものだと分かる。


(安逸より、刺激や支配欲を満たすのがお好みらしい。ど真ん中に位置する5領の領主だけに、身動きしづらいのが救いだけど。それも、どこも消極的なら当て嵌まらないか………)


 ちらりと窺い見た豊に気付いて、メイソンは不敵に笑った。


「実際の戦力は分からないけど、ある程度の情報は得た。同盟を結ぶべき相手はいるかな? おれとしては該当するのはひとりだけだ」


 豊が囁くと、弾正が目線で答える。視線の先を辿れば、豊の考えと同じくメイソンの姿があった。

 しかし、直家は首を振り囁きを返す。


「私は4領、もしくは2領と盟を結んで、あの5領の者を討つべきかと……」


 メイソンは後ろ手を組んで体を伸ばし、呑気そうに自分の従者と話していた。

 軽薄そうな笑みを貼り付けているが、三人の見るところ最も手強い相手だと思える。


「それもよかろう。奴とは大河を隔とるが、河さえ渡れば争える相手だ。奴が他を切り取る前に討つのも悪くない」


 直家と弾正の意見を聞き、豊としては考えざるを得ない。5領からの侵攻を防いで出来るだけ戦力に差をつけるつもりであったが、メイソンの領土拡大を手助けする羽目になることも考えられる。

 迷いを見せる豊に、弾正は気楽げに笑って言う。


「つまるところ、5領の領主を敵とするか味方とするかというだけだ。向こうが盟を拒めば、悩むだけ無駄な話よ。どうじゃ、ひとつ尋ねてみようぞ」


 豊も直家も口を開く間もなく、弾正の錆びた大音声が響いた。


「各領のご領主殿にお尋ね申す! 我ら8領と同盟される方はおられるか?」


 新領主たちは一斉に弾正を見たあと、お互いに顔を見合わせた。

 そして、誰かが口火を切るのを待つように、それぞれの従卒とひそひそと囁き合った。

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