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ツインズバインド  作者: クダラレイタロウ
第四章・涙
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パイオエー

「でも」

電話で話しているだけだから、望みは薄いけど、もし僕が涙の原因を拭えるのなら、と思った。

泣いているエンを慰めるのは、昔から僕の仕事だったから。何が彼女に涙させているのかをまず、知りたかった。

『違うの。ごめん、るんの声が、懐かしかっただけなの。……家を出ておいて勝手かも知れないけど、私、るんだけは唯一の家族だと思ってるから』

拍子抜けした。呆れかえってしまう程に。心配して損したと、そう思うのに、今度は僕が泣きそうだった。

こんな言葉をかけてくれる人が、家族が、僕にもまだいたんだ。

今まさに、家族をかなぐり棄てようとしている僕には、あまりにも勿体無い言葉だった。

エンが何かに悲しんでいる訳ではなかったことに安堵しながら、僕は言う。

「元気なんだね」

言いながら、落ちていく涙の熱さを地肌で感じていた。

エンに倣い、僕も泣いている事実を隠さずに、声を漏らす。

僕の唯一の家族に対する、唯一の素直さ。涙が何に由来するかまでは、勇気が出せず、語れなかった。

このままの調子で、電話を切りたい。最後の最後、僕はエンに甘えてしまった。

涙の粒は、道筋を作りながらも、顎から落下し、薄い胸を経由して、軽く突き出していた膝にまで落ちていった。

シャワーから上がり、一糸纏わぬままに電話を受けていた僕の身体は、いよいよ冷え始めていた。



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