犬と少女と夢
「い〜ち、にぃ〜い、さ〜ん、よ〜ん、ごぉ〜お、ろ〜く、し〜ち、はぁ〜ち、きゅ〜ぅ、じゅっ……も〜ぅいぃ〜かい……」
「まぁ〜だだよ……」
「も〜ぅいぃ〜かい……」
「も〜いぃよ……」
何処か薄暗い建物の中で、かくれんぼをしているのだろうか…。
子供達の声が、建物の中を響かせている。
「皆んな、ちゃんと隠れたのね?」
「……………」
「う〜ん…返事が無いって事は、ちゃんと隠れたみたいね…。それじゃ〜張り切って皆んなを見つけるからね〜!」
どうやら鬼は、幼い少女の様だ…。
「それじゃぁ今から皆んなを見つけちゃうよ〜!先ずは此処からね〜!」
鬼となった少女は、一番近くの部屋を探索し始める。
「何処かしら?この部屋じゃ無いみたい…。それじゃ次の部屋!」
そう言って、向かいの部屋を調べる少女。
「何処?……此処かぁ!…あれぇ?此処にも居ない…」
向かいの部屋の、怪しい所を隈なく探すが、やはり誰も居ない…。
「何で何処にも居ないの〜!?ねぇ皆んな〜!ズルして動いてない!?ちゃんとルール守ってる?」
見つからない事で、堪らずそう言ってしまう少女。
「あらあらあら、ちゃんとルールは守ってるわよ…」
「あらあらあら、誰も動いちゃいないから…」
「あらあらあら、まだ見つけられないの?…」
また何処からか、声がこだまするかの様に聞こえて来る…。
「本当に?ねぇ本当に動いてないのよね?」
「あらあらあら、信じられないの?…」
「あらあらあら、誰も嘘は言ってないよ…」
「あらあらあら、ルールを破らないわよ…」
「………ブゥゥ〜…だよね…」
不貞腐れながらも少女は、返って来る返答に納得した。
「この広い建物の中、皆んなを探すのに疲れちゃった…。悪いけれど、ちょっとだけ休憩するね…。それじゃまた後で…」
そう言って、壁に持たれながら座る少女は、スースーと寝息を立て始めた…。
「あらあらあら、休むと言って、眠っちゃったわね…」
「あらあらあら、本当に眠っちゃったわね…」
「あらあらあら、しょうがないわね…。でも出来るだけ早く起きてね…」
「あらあらあら、早く起きないと大変な事になっちゃうわよ?…」
「あらあらあら、出来るだけ早く起きて、私達を見つけてね…」
「クスクスクス…じゃないと如何なるか分からないからね…」
「「クスクスクス…」」
隠れてるモノの声が、不気味にこだまする。
隠れてるモノが言った、如何なるか分からないとは一体…。
そんな疑問など抱かずに、寝息をたて、夢の中に沈んでいく少女。
ピクっとし、目を覚ます犬。
何かの気配を感じたのだろうか…。
目を覚まして直ぐ、キョロキョロと辺りを見渡す。
「あれ?何だこれ…。壊れてるのかな…?女の子が寝たと思ったら、突然映像が切り替わって、今度は犬が目を覚ましたんだけれど、何故映像が切り替わったんだろ…」
見知らぬモノが、映像場面が変わった事に対し、不思議そうに観ていた。
「何かさ、犬の夢と、女の子の夢がリンクしてるのかな?…う〜ん…このままじゃはっきりしないよね…。取り敢えずは、このまま観続けようか?」
そう言って、モニターに映る犬の観察が始まる…。
「ク〜ン…」
小さく一鳴きした犬は、喉が渇いたのか、水を飲みに行く。
たっぷりと水を飲んだ犬は、主人にダメだとよく叱られる、ダイニングテーブルに軽やかにジャンプし、飛び乗るのだ。
テーブルに置かれている、蓋をされた甘い香りのお菓子を見つけ、器用に蓋を開けて、パクパクと食べ始めるのだった。
全部は食べず、残りは後で食べようと考えた犬はテーブルから降り、また自分のベッドに向かうのだ。
「クァ〜〜〜ァ…」
満足したのか、大きくあくびをして、そのまままた眠りにつく犬だった。
「う〜〜〜ん…よく寝た〜」
目を覚ました少女。
「さぁ〜てと、早速皆んなを見つけなきゃね…」
未だ眠いのか、目をショボショボさせながら、かくれんぼの続きを再開する。
「皆んな〜!今から必ず見つけるからね〜!今度こそ、絶対見つけちゃうんだから、動かず待っててよ〜」
と、大きな声で宣言する。
すると…
「クスクスクス…そんな大きな声で言わなくても聞こえるわよ…」
「クスクスクス…分かったから、早く見つけて頂戴…」
「クスクスクス…じゃないと、大変な事になるからね…」
「「「クスクスクス…」」」
何やら嫌な言葉を語る、隠れるモノ達。
「えっ?大変な事…?何それ…」
眠る前にも言っていたのだが、今になって、“大変な事とは…”と思う少女。
「ねぇ、何その大変な事って…」
シ──ン…。
「ねぇ、一体何が大変なの!?教えてよ〜!」
シ──ン…。
「ねぇちょっと!誰も教えてくれないの!?何故黙ったままなの!?」
少女の問い掛けに返答する所か、何のリアクションも無い。
「ああんもぉっ!誰か教えてくれても良いじゃない!」
声を荒げてみるが、それでも返事は無かった…。
「誰も答えてくれないのね…。もう良いわよ!早く皆んなを探し出せば良いんでしょ!絶〜対見つけてみせるから!」
何も答えてくれない事に腹を立てた少女は、何がなんでも見つけてやると意気込んで、未だ探していない部屋をしらみ潰しに、次々と探索して行く。
広い建物の中に在る、数多くの部屋の探索は、少女にとって、とても大変な作業となった。
「はぁはぁはぁ…皆んな…本当どこに居るの…。も〜ぅクタクタ〜…」
あれだけ意気込んでいたのに、こうも広い範囲を探索すると、疲れが出始めて来た様だ。
更に、かなりの部屋を隈なく探しているのに、未だに誰も見つけられない…。
段々と、挫けそうになる少女。
「もぅつまんない!何で私だけ、こんなにしんどい思いしなきゃいけないの?降参して止めちゃおうかなぁ…」
何だか馬鹿馬鹿しくなってきた少女が、そう呟いた時
ガラガラガッシャ───ン…
突然大きな音を立てて、最初に見た部屋の方から、何かが崩れる音が聞こえて来た。
「キャ─────ッ!!」
耳を塞ぎ、その場に蹲る少女。
「な、何ー!?い、今のは何なの!?」
驚き震えながら、音のする方を見る。
止まらない震えをグッと我慢し、じっと見ていたら
「あらあらあら、だから言ったのに…」
「あらあらあら、だから早くって言ったのに…」
「あらあらあら、貴女が早く見つけないから、壊れちゃったわね…」
「「あらあらあら…」」
ずっと返事もしなかった、隠れたモノ達が、少女にそう言ってきた…。
「えっ…今何て言ったの…?」
辺りをキョロキョロ見ながら、少女が言うと
「あらあらあら、ちゃんと聞いて無かったの?…」
「あらあらあら、人の話はちゃんと聞くモノよ…」
「あらあらあら、そんなんじゃ、ダメじゃない…」
「「あらあらあら…」」
「「「クスクスクス…」」」
少女を嘲笑うかの様に、笑う隠れたモノ達。
「何で笑うの!?それに、今頃になって訳の分からない事言ってこないでよ!」
先程の恐怖を吹き飛ばすかの如く、隠れるモノ達に文句を言う少女。
文句を言われた隠れるモノ達が
「あらあらあら、それじゃ意味が無いじゃない…」
「あらあらあら、かくれんぼをしてるのよね?…」
「あらあらあら、だから何も言う訳ないじゃない…」
「「「クスクスクス…」」」
と、答えるのだった…。
「なっ…」
カチンとくるのだが、隠れるモノ達が言った言葉が、正にその通りだと反論出来なくて、言葉が出ない少女。
それでも
「今話してくれてるんだから、今は聞いても良いでしょ!どうなの!?」
未だ苛立ちが残ってる少女は、強気で言い放つ。
その放った質問に
「クスクスクス、今は良いわよ…」
「クスクスクス、今だけ特別よ…」
「クスクスクス、それで何が聞きたいの?…」
「「「クスクスクス…」」」
特別に聞いても良いと答える、隠れるモノ達。
「大変な事になるって、一体何なのよ!?何が大変なの?」
「あらあらあら、その事ね…」
「クスクスクス、それじゃ教えて上げる…」
「クスクスクス、ちゃんと理解してね…」
「「「クスクスクス…」」」
馬鹿にした様な感じで笑う、隠れるモノ達。
「何で笑うの!笑ってないで教えてよ!」
段々と怒りが爆発し、大声で言う少女。
その少女に
「喧しい!お前が怒り叫ぶなんて、おこがましい!」
激しい口調で言い返す、隠れるモノ達。
「ひぃっ!…」
余りにも強く言われた少女は、悲鳴を上げ、黙ってしまう。
「そもそもこのかくれんぼは、お前が始めたのだろうが!」
「そうそう、お前が我等に赦しを乞う為に、そう懇願したんだろうが!」
「それなのにお前は、自分勝手な発言ばかりして、我等が折角笑ってやっていたのに、それを蔑ろにして何様だ!」
怒りの声が、激しさを増す。
「お前が犯した罪を見せてやろうか!?」
「えっ…罪…?」
罪を犯したと言われ、何を言っているのか理解出来ない少女。
「何を惚けた振りをしている!惚けても無駄だ!」
更にキツく攻め立てる、隠れるモノ達。
「わ、私惚けて無いわ!ほほ、本当に分からないんだもん!」
精一杯の抵抗として、大声で叫ぶ様に反論する少女。
「わ、私が何をしたって言うの!?それに私から始めたって言ってたけど、唯見つけるだけの遊びじゃ無いの!?違うの!?」
隠れるモノ達の威嚇に、恐怖を覚えながらも、必死で問う。
シ〜〜…ン…。
暫し、沈黙が続く…。
「あらあらあら、この子本当に分からないみたい…」
「あらあらあら、どうやら記憶が無いみたいよね…」
「あらあらあら、思ってた以上におバカさんなのね…」
「「「あらあらあら…」」」
荒げていた口調が戻ったと、そう思った少女。
でも次の瞬間
「ふざけるなぁー!記憶が無くとも関係ない!」
「記憶が無くとも、お前のした罪は消えん!」
「記憶が無いからと言って、お前が赦されるとは思うなよ!この」
「「「クソガキがあ───っ!!」」」
隠れるモノ達の怒り狂う雄叫びに、少女は恐怖し
「キャ───ッごめんなさい!ごめんなさい、ごめんなさい!…」
涙をボロボロと流しながら、その場に蹲り、耳を塞いだ…。
それなのに
「何度も言わせるなあ!貴様の謝罪など聞きたくは無いわあ!」
「どれだけ謝ろうが、貴様の罪が赦されると思うなよ!」
「それ程の事を貴様はして来たのだ!この世の全てが貴様を赦す訳がない…この」
「「「クズがあ───っ!!」」」
鎮まる事のない怒声が、更に少女を打ち抜く。
「イヤア─────ッ!!」
頭を抱え、体を丸め、小刻みに震えながら蹲る少女。
ガタガタと震えて
“怖い、怖い、怖い、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…”
と、強く思うのだが
「何下手な小芝居をしている!貴様の下手な演技に反吐が出そうだ!」
「そうやって、我等全てを欺こうとしても無駄だ!」
「何時迄下手な演技をしている、この」
「「「罪悪人が───っ!!」」」
隠れるモノ達の怒りは増すばかり。
此処迄激しく隠れるモノ達に、怒りを覚えさせた少女の罪とは、一体何をしたのだろうか…。
その少女が
「ふ…ふふふ…あはははっ…ふぅ〜チッ!こんな芝居じゃぁ、通用しないかぁ…クソが…」
震え泣き蹲っていた少女が、そう言いながらゆっくりと、ゆらりと立ち上がる。
「おい貴様等、何時から気づいていた?何時から分かっていたんだ?私…いや俺の演技になぁ…」
ゆらりと立ち上がり、話し始めたと思えば、一人称が私から俺に変わった…。
その途端、少女の姿が醜い男の姿に変わるのだ…。
その姿になった時
「ようやく記憶が戻った様だな…」
「ようやく本性が戻った様だな…」
「ようやく自我が戻った様だな…」
「「「この罪人が!!」」」
罪人と言い捨てる、隠れるモノ達。
その隠れるモノ達に、男は
「あーあーあー…っうるせー!ギャーギャー喚いてんじゃねぇよ!さっさと俺の質問に答えなよな!悪ぃーがよ、どうも未だ記憶が曖昧なんだよ…。だからさっさと教えなよ、この役立たず共がよ!」
醜い男は、一つも悪びれる事も無く、平然と悪態をつくのだ。
そんな男に、隠れるモノ達が
「おやおやおや、この罪人、開き直ったみたいだな…」
「さてさてさて、此方としては、答える義務も義理も無いのだが…」
「はてはてはて、如何したものか…」
醜い男の言動に、呆れたのだろうか、隠れるモノ達は答えたくは無い口振りをするのだ…。
その口振りを聞き
「ざけんな役立たず共!さっきは答えると言っただろうが!テメェー等が言ったんだ!約束破ろうってんのかよ!?それじゃテメェー等の方が、罪人じゃねぇ〜かよ!このボケが!」
隠れるモノ達の言葉に、腹を立てた男が、怒りに任せて言いまくるのだ。
その悪態に
「クスクスクス、これは笑える…」
「クスクスクス、罪人が我等を罪人呼ばわりするとはな…」
「クスクスクス、此処迄くると、最早滑稽だ…」
「「「クスクスクス…」」」
滑稽だと笑う、隠れるモノ達。
「何笑ってんだ!?その気色悪い笑い方止められねぇ〜のかよ!?反吐が出そうだぜ…へっ!」
何処迄も、身勝手な悪態をつく男が、唾を吐き捨てた…。
その時
ガシャ───ン…ガラガラガラ…ガッシャ───ン…
また、先程迄探索していた場所から、大きく崩れる音が響いてくる…。
「ッ!?ななな、何だ!?こ、この音は、何の音何だ!?」
男は驚き、振り返ると
「あはははは、驚き青ざめてるぞ…」
「あはははは、滑稽、滑稽…」
「あはははは、とても愉快愉快…」
「「「あはははは、お前の今の姿、滑稽で笑えるなぁ…あはははは…」」」
高笑いをする、隠れるモノ達。
その隠れるモノ達に男は
「ななな、何なんだよマジで…。た、頼むから何が起きてるのか教えてくれよ…」
先程迄の威勢は無く、怯えた声で聞く。
「ワハハハハハハハッ!あれだけ威勢が良かったのに、今は完全に萎縮しているな…」
「アハハハハハハハッ!愉快愉快…これ程笑わせてくれるとはな…」
「ガハハハハハハハッ!笑わせてくれた礼に、特別教えてやろうか…」
「「「ワハハハハハハハッアッハハハハハハハッガハハハハハハハッ!」」」
余程、男の滑稽な姿が愉快だったのか、上機嫌な隠れるモノ達が、高らかに笑う…。
「崩れる音がしているのは、お前の罪を償う為の、お前の良心だ…」
「罪を重ねた割には、数多くの良心が残っていたみたいだな…」
「その良心が、お前が探索した部屋だ…」
隠れるモノ達が、醜い男に、そう教えるのだった…。
「りょ、良心…?」
「未だ数多く残っている部屋が、お前の残りの良心なのだ…」
「その良心の部屋が全て崩れ無くなれば、罪人としてお前は、救われない裁きを得る事になるのだ…」
「最後の良心の部屋が無くなる前に、我等を見つけなければ、お前の負けとなる…」
「それが最初に、お前が我等に懇願し、自らこのかくれんぼを提案したのだぞ?」
「此処迄言っても、未だ思い出せないのか?」
「もしそうなら本当に」
「「「残念な頭をしているのだな…馬鹿め…」」」
軽蔑を混ぜた、今回の騒動を説明する隠れるモノ達。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!お、俺が一体何の罪を犯したんだ!?それに、お前等に懇願してまで、このかくれんぼうをしようと、本当に俺が言ったのか!?」
隠れるモノ達の言葉が信じられないと、醜い男がそう聞くのだ。
その問いに
「…都合の悪い事は全て忘れた様だな…」
「…義務と義理は無いが、お前のした悪事を全て教えてやろう…」
「…有り難く聞くが良い…この」
「「「ゴミ屑がぁ!!」」」
「!!」
隠れるモノ達の怒りは、計り知れないみたいだ…。
あれだけ悪態を吐きまくっていた、醜い男が何も言えずに黙り込む。
「貴様は全てを欺き、殺し、そしてその全てを喰ったのだ!」
「そこに在るモノ全てを欺き、殺し、喰ったのだ!」
「その世界の全てを欺き、殺し、残らず喰ったのだ!」
「我等はお前を捕らえ、輪廻の輪の一部でも在る畜生界に落とし、更生させ様と慈悲を与えたのに、それでもお前は欺き、殺し、全てを喰ったのだ!」
「見るがいい、貴様の正面に在る扉の向こうをな…」
「そこには、貴様の悍ましい姿が在り、見る事が出来るだろう…」
「さあさあさあ、見るがいい…」
「さあさあさあ、お前の罪を…」
「さあさあさあ、悍ましき姿を…」
「「「さあさあさあ!」」」
隠れるモノ達が語る内容を聞き、記憶に無い悍ましき罪を知り、青ざめていく…。
そして醜い男は
「い、嫌だ…み、見たく無い…」
と、後退りするのだった。
だが、男の意志とは裏腹に、隠れるモノ達が導く扉に進んで行く。
「な、何故だ!?何故体が勝手に動くんだ!?嫌だ…嫌だ!見たく無い!止まれ!止まれよ!止まってくれ────っ!」
あれだけ高威圧で偉ぶっていた男が、どう言う訳か、導かれた扉の向こうを見る事を恐れ、嫌だと拒否する。
だが、それは赦される事はなく、自分の意志に反して、導かれた扉へと進んで行くのだった。
「嫌だ───っ!!扉なんて開けたく無い!扉の向こう何て見たくは無い!」
扉に近づくにつれ、段々と顔が青くなっていく…。
「た、頼む!頼むから、これ以上先に進めないでくれ!お、お願いだ!お願いだから、ど、どうか赦してくれ!なあこの通りだ!」
赦して欲しいと言うのに、言い方が未だ、上から目線で高圧的に感じる。
「やれやれやれ、赦しを乞う態度じゃ無いなぁ…」
「そうそうそう、もっと誠意を込めないといけないなぁ…」
「うんうんうん、お願いするなら、ちゃんとしなくてはなぁ…」
「「「クスクスクス…」」」
赦しを乞う男に、そう囁く隠れるモノ達。
「お、お願いします!どど、どうか赦して下さい!どうか、どうか───っ!!」
必死で赦され様と、隠れるモノ達に叫び乞う男。
だが…
「黙れこの外道が──っ!」
「お前には既に一度、赦しを施したのだ!」
「いや、一度では無い!何度も赦しを施した!」
「それも全て、お前は欺き殺し、我等の施しを裏切った!」
「そんな貴様の」
「「「赦しなど施してなるものか!!」」」
これ迄の比ではない、怒りの怒声が響く。
「ィギャ───ッ!嫌だ───っ!嫌だ嫌だ嫌だ─っ!頼む──っ!頼むから赦してくれよ──っ!!」
「「「知らぬわ!」」」
隠れるモノ達の怒りの頂点を超えた為か、完全に見捨てられた男。
「………クソがぁ〜…覚えておけよ…。扉の先を見た後必ず貴様等を見つけ出し、一人残らず殺してやるからなぁ…」
赦されないと理解した男は逆ギレし、次に殺すターゲットとして、隠れるモノ達に、そう言うのだ…。
そして男は扉の前に立ち、手を伸ばし、ドアを開けるのだった。
開けられたドアの向こうに見えるのは、眠る犬が居た…。
そして、その光景を見た男は、声も出せない程に驚愕する…。
何故男は、その光景を見て、恐怖したのだろうか…。




