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俺たちの進む道には  作者: 風 桜月
2002年4月
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2002年4月 SIDE SAKUYA

 いつも、定時で帰れる仕事なのに、こんな時に限って欠員が出て、残業を命じられた。

 今日こそとーこを海に連れてってやれると思ってたのに。

 ため息をついて、愚痴たれながら仕事を再開する。

 十九時までにカタがついたら、今日こそ約束を守ろう。そもそも俺から言い出したことだ。その一言がずっととーこを期待させてる。

 疲れて寝てたって言い訳を怒らずに、身体の心配までしたオンナはとーこが初めてだ。心配してくれた時の、心がフワッと温かくなった気持ちは忘れられない。

 俺はきっと癒されたいんだ。

 実紗と上手くいってないから。

 もう、連絡が来なくなって一か月以上になる。それで、本当に付き合ってるって言えるのか?答えが出るのが怖い。俺が思ってるほど、実紗は俺のことを思ってるだろうか。

 それを知るのも怖い。

 そんな時とーこは便利だ。傍にいてほしい時だけ傍にいて、話を聞いてほしい時だけ聞いてくれて、他のオンナがおおよそ言いそうな我儘も、無理難題も言ってこない。

 きっとこの世界に慣れてないからどうして良いのか判ってないんだ。

 だから、楽だ。

 俺は完全にとーこを利用していた。

 けど……本当にそれだけの気持ちか?

 今まで沢山のオンナを口説き落としてきたけれど、その、どのオンナともとーこは違う。

 何が?

 そこが判らねぇ。

 グチャグチャと考えてたら、いつの間にか仕事は終わってた。

 二十時十八分。今から海に行くことだって出来る。昨日も断ってんだ。少々強引に誘っても、とーこは来るだろう。

 けど、明日もとーこは普通通りに仕事だろう。無理はさせたくない。

 何だ?この気持ち?

 強引に誘うより、守ってやりたいと思う。

 俺は携帯を開くとメールで気持ちが伝わるわけじゃないのに、出来るだけそっけなくとーこにメールを送った。

 本当は、もっと優しい言葉を使ってやりたかった。

 だって、とーこはきっと、そっけないメールですら、優しい言葉を返してくれる気がするから。

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