表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/35

嵐の後に

バリーーーン!!


雷の衝撃か、地震の衝撃か、どちらともつきませんが、突然ガラス窓が割れました。

「きゃー!!」

「うわっ!」

「うわー」

三者三様の叫びが響きます。


割れたガラスの場所を見ると、だいぶ派手にいきましたねー。

庭に面して一面のガラスだったのが、ほぼまるっとなくなっています。

そして、そのガラスがあった場所で、ひっきりなしに走る閃光に照らし出されるシルエットが二つ。


すらりと背の高いのと、こじんまりしたの。


「あ~。やっぱりか」


思わずため息とともに声が出ました。

その声に反応したのか、私の姿を見つけたシルエットさんたち、特に背の高い方は素早く、私に駆け寄ってきました。

もはや言うまでもなく、ショウくんとメグちゃんです。


「リサっ!! 無事か!!」


ショウくんにぎゅううっと抱きしめられますが、何度も言うように打ち身が地味に痛いです。

「ぐふっ! ショウくん、苦しい!! それに痛いから、ちょっと緩めて!!」

抱きしめる腕をバシバシ叩きながら、ショウくんに抗議します。

「どこが痛いんだ? 見せてみろ! 誰にやられた?」

完全にお怒り発動中のショウくんは、矢継ぎ早に聞いてきます。

「ちょっといろいろ打っただけだから、大丈夫!」

手を緩めてくれたら仕舞いな話なんですけど?

「リサ? 大丈夫だった? 何もされなかった?」

メグちゃんも、傍に来て私にあちこち触れながら聞いてきます。うっ、そこ打ったところだってば。

「だ、大丈夫よ」

苦笑いになるのは許してください。




しばらく私にぺたぺたと触りながら無事を確認していた二人でしたが、


「お前か?! 二人を拉致してきた犯人は!」


ショウくんが、私たちの後ろに立ちすくんでいたロベルトさんに気付きました。

まあ、ショウくんとメグちゃん、派手な登場の仕方だったので、ロベルトさんもジュリさんも呆気にとられていたのでしょう。すっかり傍観者になってましたね。気配が消えてました。

ショウくんは、ギラリ、と睨みつけてます。

メグちゃんは、人差し指を唇に当てて、何やらお考え中のようです。


「ああ、二人を連れてくるように言ったのは僕だ」


あらー、ロベルトさん、正直に言っちゃいましたよ。それ、多分今、言っちゃいけない一言だったと思うんですけど……


「ふざけやがって……」


低い声でショウくんが言いました。ぎらっと目が光ったようですよ。なんか殺気がどんどん増してきてます。ヤバいです。

ショウくんは、おもむろに私から右手を離し、ロベルトさんに掌を向けました。

するとそこに白い光の球がどんどん膨らんできました。


ショウくんの必殺攻撃魔法。


この光に吹き飛ばされたら、跡形もなくなっちゃうんです。

大抵は魔獣退治の時に発動するもんなんですがね、今日はどうやらお怒りマックスなようです。

しかし、そんな危険な魔法を人に向けちゃあいけないのですよ! 人として、です!

でも、メグちゃんも止める様子がありません。

「ショ、ショウくん!! この人は悪い人じゃないの!! ちょっと冷静になって?」

仕方ありません。こうなったら止められるのは私しかいません。

光の球が大きくなりつつある手を握って、発動を阻止します。

ついでにもう片方の手で、ショウくんを抱きかえしておきます。

「なんだよ、庇わなくてもいいんだ! しかもジュリさんまで人質にとりやがって」

ムッとしながら私に言うショウくん。あ、そう言えばジュリさん、ロベルトさんに抱きついたままでしたね。人質ときましたか。


「じゃなくて! あの人がロベルトさんだったの!!」


ショウくんに冷静になってもらうべく、ちょっと大きな声で叫んでみました。


「え? ロベルトさん?」

「そうだよ。ロベルトさんなんだよ。ジュリさんのこと見つけたから、お迎えに来たんだって。……ちょっとお迎えの仕方に問題があっただけで……」

最後の方はちょっと都合が悪いので、ごにょごにょになってしまいましたが。


すると、


「あ~、そう言えばアケルナルの王子って、ロベルトっていうのがいたわね~。2番目か3番目だから、すっかり忘れてたわ」

先ほどまで何やらお考え中だったメグちゃんが、ポンと手を打ちながら言いました。


「もう! メグちゃん! 思い出すの遅すぎ!!」

「ごめんごめん。アケルナルって、うちから遠いし、そんなに転生者を送っていくこともなかったから、縁遠いっていうか……ね? あはははは☆」

笑って誤魔化そうとしています。

ショウくんは気が抜けたのか、ロベルトさんに向けていた手を下し、再び私に巻きつけてきました。




「で。この天変地異はメグちゃんとショウくんの仕業よね?」


私は今や、先ほどの嵐はいずこへ、元の光あふれる青空を見ながら言いました。

アケルナルによる拉致監禁疑惑が晴れたと同時に、外の嵐も天変地異も、ピタリとやみました。

まあ、そもそも誰の仕業か、私には判ってましたけどね?

「ショウったら怖いのよ~。リサの居場所がわかったと同時に二人で家を飛び出してきたんだけどね、着いた途端に嵐を呼んじゃったのよ~。雷もドッカンドッカン落としまくるし。あ、でも安心して。天変地異はお城限定で、街はまったくなんともないから♪」

メグちゃんはあっけらかんと言ってますが、その『お城』(ここ)は大変なことになっています。

火事・3か所、石壁崩壊・5か所、落雷による土のえぐれ・無数。ガラスの割れた個所・プライスレス。←違う

お城はすっかり半壊状態。いくらなんでもやりすぎでしょ。


しかし、お城だけ嵐に見舞われてて、それ以外は青空って、シュールです……。


先程見た、衛兵さんのような格好の男の人が、庭やら廊下やらを右往左往しています。きっと復旧作業に追われているのでしょう。

「オレだけじゃないでしょ。メグさんだって地震を頻発させてたくせに」

「あら。雷もやったわよ」

「二人で落としてたんじゃ、そりゃばんばん落ちてくるわけだわ」

まあ、要するにこの拉致騒動は、メグちゃんとショウくんの逆鱗に触れたってやつですね。

メグちゃんとショウくんは「オレの方がたくさん落とした!」「いや、私よ!」とまだ言い合ってますが、放置しておきます。


「大変申し訳ないことをした。リサ殿が貴殿たちの逆鱗スイッチとはつゆ知らず……」


青い顔で深々と頭を下げるロベルトさん。

逆鱗スイッチて。


「部下には、ジュリという娘を連れてきてくれ、と指示をしたのだが、リサ殿とジュリの区別がつかず、両方連れてきてしまったようなのだ。手順を踏まずにジュリを連れてこようとしたのが間違いだった。本当に迷惑をかけた。すまなかった」

「そうよ。リサはうちの宝物なんだからね。気を付けて頂戴。それから、今度から求人があるのなら、ちゃんと手順を踏んで、私に申請しておいて頂戴」

いくらなんでも宝物は言いすぎでしょう。聞いてるこっちが恥ずかしくなるから、やめてメグちゃん。

メグちゃんは、王子様相手でも、あくまでもメグちゃんです。しっかりと命令口調です。

ドSでしょうか? あ、関係ないですね。


「で、ジュリさんはこれからどうなるんですか?」

今だショウくんに抱き込まれたままの私は、なんとか顔をジュリさんとロベルトさんに向けて聞いてみました。

「ジュリは私の婚約者として、ここに一緒に暮らします。まあどうせすぐに式は挙げますけどね」

ジュリさんを抱く腕に力を込めながら、ニッコリと言うロベルトさん。

「でも、第二、第三とはいえ王子くらいの身分なら、こっちに婚約者がいるんじゃねーの? ほら、親が決めた政略結婚みたいな?」

ショウくんが素直な疑問を口にしました。

「ああ。僕は小さい頃から自分は転生者で、ジュリという娘がこちらに転生してくるはずなので、その娘と結婚すると言っていたんだ。こちらの世界では、前世の記憶持ちの転生者なんてざらにいるからな。王太子でもない僕の意見は、すんなり通ってきている」

優しく目を細めて、腕の中のジュリさんを見つめるロベルトさん。その視線に、頬を赤らめつつも嬉しそうに見つめ返すジュリさん。見ていて本当に相思相愛なのがわかるんだけど……


「……ジュリさんが、こちらに転生してこないかもしれないって、思わなかったんですか?」


そこまで信じ切れるんでしょうか? 「もしも」は考えなかったのでしょうか?


「思わなかったですよ。ジュリはきっと僕の元に来てくれるんです。約束したんですから」


自信満々の表情で言い切るロベルトさん。

それを満足そうに見ながら、自分も自信を持って肯くジュリさん。


二人の深い絆が見えた気がしました。


今日もありがとうございました(^^)


ワタシ的頻出単語「嵐」。どんだけ好きやねん?(笑)いや、否定はしません、むしろ大好きです☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ