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緊急事態発生

『魔女☆メグの家』で一緒に過ごすことになったジュリさん。

断片的に覚えている記憶を、一緒に過ごしながらポチポチと語ってくれます。


彼女は元々貴族のお嬢様だったらしく、お稽古をたくさんしていたみたいです。

音楽に乗馬に社交ダンス。刺繍にレース編み。とっても器用で素敵なものを作り出されるのです。私みたいに『家庭科・2』(主に被服)『音楽・3』(主に譜面? 音痴じゃないけど楽譜苦手なんですよね~)ではありません!!

筋金入りのお嬢様です。

女子力ハンパネエです。


ちなみに、貴族のお嬢様方がいたさないような、炊事や洗濯や掃除のようなドメスティックなことはできないみたいです。あ~よかった~! 少しでも勝ち目があって☆

一応こちらに来てから、いつでも独り立ちできるように色々頑張ってきましたからね、私。

炊事洗濯家事育児。何でもござれ!! あれ? 育児は無理ですゴメンナサイ。盛りました。

ま、とにかくいつでも『一人暮らしバッチコイ』ですよ。

でもねー、なんでかねー、メグちゃんとショウくんが離してくれません。リサはもう20だから、村で一人暮らしでもいいんですけどね~。


おおっと。ジュリさんの女子力の話でしたね。

で、私も受付業務が暇なとき(しょっちゅう)に、ジュリさんから刺繍や編み物の手ほどきを受けています。手に職付けていれば就職なんかの時に役立つんですよね? そゆことを小耳に挟んだ記憶があります。いや、誰にも頼らず生きていくには『手に職』万歳ですよ。

外貨を稼がにゃ生きてはいけませんもの!




ちまちま、チクチク。

チクチク、ちまちま。


今日は奥のダイニングスペースで刺繍をしています。


ちまちま、チクチク。


……肩が凝りますね。


「ふふ、疲れてきました?」

刺繍の手を休めて、優しい笑顔でジュリさんが聞いてくれます。

「ちょっと肩が凝ってきました」

これ、長時間するには不向きです。私、こらえ性ないんですかね?

「ちょっと休憩しましょうか」

「はい」

そう言って、ジュリさんはお茶を淹れるために席を立っていきました。

お茶の作法もお稽古していたそうで、そりゃあもう美味なるお茶を淹れてくれます。

同じ茶葉使ってんのこれ? ってな具合ですよ。

本来は私がお茶を淹れて然りなんですけどね、美味さが違うので職務委譲です☆


コポコポコポコポ……


優雅な動作でお茶が注がれてゆきます。


「さ、召し上がれ」


そう言ってジュリさんは、私の目の前にティーカップを静かに置いてくれます。私のように「マグでドーン☆」ではありません。

何でしょう、この差は??

ちなみに彼女は15歳だそうです。こちらに来た時の私と同じ年齢です。

が。

なぜ、私よりも年上な感じがするのでしょう?? 態度? 優雅な身のこなし? 落ち着いた雰囲気??

私、完全に負けています……。




ジュリさんの淹れてくれた美味しいお茶と、キッチンから出してきたお菓子をモグモグしながら色々おしゃべりするのが日課になっています。


今日は、ショウくんは転生者を送って行って留守です。

メグちゃんも、例の『ロベルトさん』の情報を得るために街の方まで行っています。ついでに食糧も補給してきてくれるそうです。


「もうそろそろどっちかが帰ってくるかなぁ?」


入り口扉の方を見ながら、私は言いました。

「そうですね。お二人ともそろそろではないですか?」

ジュリさんも扉を見ます。


その時でした。


バターーーーン!!!!


いきなり入り口扉が開け放たれました。それはもう素晴らしい勢いで。

未だかつてこんなに勢いよくこの扉を開けた人物はいませんよ。

よほど気の立ったトリッパー様でしょうか?


「いらっしゃいませ。ええと、ご自分のお名前はわかりますか?」


癖とは恐ろしいものです。

いつものセリフがすらすらと私の口をついて出てきてしまいました。


入り口をすんごい勢いで開け放ったのは、四人の黒ずくめの人たちでした。


背格好からいって男の人だとは思うんですけどね、まだ声を発してませんから。

結構のほほんとした自分だと理解してるんですが、さすがにこの来訪者は非常事態だと、脳内の警報機がガンガン鳴ってます。

あんまりこんな人数でトリップしてくることなんてないですしね。


今この家に居るのは非力な娘二人。

かーなーりヤバい感じがバシバシします。


でもここは年長者! 脳内警報に従って、とっさにジュリさんを後ろにかばいましたよ! 褒めて褒めて☆

かばったところでどうってことないんですがね。残念。


「ジュリ様というのはそなたか?」


くぐもった声が聞こえました。私の方を見てるんでしょう。目だけ出ているので、目が合いました。

目だけじゃなくて口のとこくらいくり抜いておきなさいよ。聞き取りにくいじゃないですか。

誰です?この衣装作ったのは。デザイン力低い人ですねー。

いや、それはどうでもいいです。


「そんな人いません!!」

「えっ? 私?」


私とジュリさん、二人同時に応えてしまいました。


「「あっ!!」」


二人で顔を見合わせます。おいおいジュリさん、ばれちゃったじゃないの。


「後ろの娘御か」


またくぐもった声です。今度はジュリさんを見ているようです。

話してるのは先頭に立っている人だけです。他の3人はお飾りですか?


「違います! 私です!!」

「はい」


また同時。

……あの~。素直に返事しないでくださいます? いちお、年長者としてかばってるんですが? もっそい無駄になってますよ……。


「もういい。両方とも連れて行け!!」

「「「はっ!!」」」


イラッとしたのでしょうか、先頭さんはお飾りさんたちに命じました。

って、な・に・を・命じましたぁ??

私たちどこかへ連れて行かれるのですか?

メグちゃんもショウくんもいない今、私たち大ピンチじゃないですか!!


「「きゃーーー!!!」」


ジュリさんも私も、あっという間に芋虫完成です。

そのままどこかへと連れて行かれるようです。

口もぐるぐる巻きにされてしまったので、

「むぐむぐむぐ~~~!!!」

と呻く声しか出ません。呼吸はできるけど、苦しいです。

ああ、一巻の終わりです。




ちょっと! 私の居ない間にトリッパー様が来られたら、受付どーするんですかぁ?!


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