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アルデバランの城にて

気が付けばそこは立派なお城の門の前でした。

堅牢そうな高い石垣にぐるりと囲まれています。その石垣の向こうにお城のてっぺんが見えいているだけですが。


「ほへ~。お城だわ」


石垣を見上げながら私はつぶやきました。こんな立派なお城、地理の教科書でしか見たことないですからね! 呆気にとられてぽかんと口を開いてるのはご愛嬌ということでお願いします。


「ああ。アルデバランの城だな。……あ、フォーマルハルトさんいた」


抱き上げていた私をようやく地面に降ろしてくれました。ショウくんはフォーマルハルトさんを見つけたようです。


「フォーマルハルトさん。どうです? ちゃんと転移したでしょう」


彼に近寄りながら、ショウくんは声をかけました。ニヤリとしています。


「……ああ。本当だ」


まだちょっと半信半疑なのか、周りを確かめるようにぐるりと見回しています。


「じゃ、このまま召喚主に会いに行きましょう。それからどうするか決めないと」

「うむ。わかった」


話はまとまったようで、門衛さんのところまで行くことになりました。

何気にショウくんが私の肩を抱いてきますが、もう無視します。今日はやけにスキンシップ過多ですねぇ。どうしたんでしょうか?

そんなことを思いながらじっとショウくんを見上げていると、


「ん? 何? リサ」


私のガン見に気付き、問いかけてきます。


「いや、別に。今日はべたべたくっついてくるなぁって」

「いつものことだろ」

「まあ、そうだけど」

「ほら、行くよ」

「はーい」


くっと軽く肩を押され、前に進むことを促されました。




門衛さんに来城の趣旨を告げると、いそいそと謁見室のようなところに通されました。

廊下も部屋の床もふかふかの絨毯がひかれています。なんだかふわふわして変な感じですね。そこかしこに置かれている調度品は見るからに高級そうです。決して寄らないようにしましょう。そこかしこに高級感(そんな薄っぺらい表現でいいのか?!)が漂っているにも拘らず、どこか暗い翳を感じます。なんでしょうかね?

色々なところの豪華さに、一般庶民でしかない私は終始きょろきょろしていましたが、


「国王陛下のおなり~!」


という声が聞こえたので、慌ててそちらの方を見ました。

白銀の髪、白銀の口髭。がっしりした体格のナイスミドルなおじ様です。40代後半くらいですかね。若いころはさぞやおモテになったでしょう、な素敵加減です。いや、今でも十分に魅力的ですよ! ただ、おじ様は私の守備範囲ではないので遠慮しておきますが。

ショウくんとフォーマルハルトさんがお辞儀をしました。私も慌ててそれに倣います。


「ふむ。苦しゅうないぞ、面を上げい。そなたが我が国が召喚した勇者殿か」


ナイスミドルは豪華な王様椅子に腰かけると、おもむろに問いかけてきました。偉そうですね~。何様ですか。あ、王様でした。偉いはずです。


「はい。亜空間の森に出現しましたのでお連れしました」


ショウくんが面を上げ、答えます。


「そうか。ご苦労であった。……で、名はなんと申す」

「フォーマルハルトです」


それまで黙っていたフォーマルハルトさんが初めて口を開きました。でもなんだか無愛想です。まあ、そりゃそうですよね。突然訳の分からない世界に喚ばれたわけですし。


「フォーマルハルトか。で、早速であるが、我が国は今魔王の侵略の危機に瀕しておる。それをなんとか食い止めてほしいのだ」

「……いやだと申しましたら?」


無愛想なままフォーマルハルトさんが王様に言い返しました。不敬罪とかで捕まっても知りませんよ!!


「それは困る!! そなたの欲しいものは何でも与えよう。褒美でも装備でも、好きなものを所望してくれ」


慌てた王様は身を乗り出してきました。何でもって、限度があると思うのですが。


「例えば、王位でも?」


ニヤリ、とニヒルな笑みを浮かべるフォーマルハルトさん。悪そうですね~。勇者サマの笑顔とは思えませんよ!


「ああ、王位か!! 構わぬ!」


そんな無茶な要求なのに、王様はコクコクうなづきながらOKしちゃいましたよ! って、え?! いいんですか?! そんな簡単にあげちゃってもいいものなのでしょうか。思わず目を見開き、王様をガン見してしまいましたよ。隣にいるショウくんも同じ思いだったのでしょう、王様をまじまじと見ています。

驚きにあんぐりとなっている私とショウくんを尻目に、フォーマルハルトさんは、


「ふ~ん。えらい覚悟なんだな。王位をかけてまでも魔王退治してほしいのか」


不遜な態度で言い放ってます。恐いもんなしですか!! 側近の方々が睨んでますよ~!!


「ああ、それくらい切迫しておる」


魔王の脅威。


そこかしこに漂う翳の正体はこれだったんですね。


「わかった。魔王退治とやらに行ってやろう。その代り、準備はぬかりなくしてくれ」


どこまでも上から目線なフォーマルハルトさんです。あーこわ。

でも、一応魔王退治には肯首しました。


「おお! ありがたい!! 勇者殿、よろしく頼む!! 装備は何をご所望か?」


喜色満面。喜び勇んで王様は聞いてきます。さっきまで睨んでいた側近さんたちも、ほっとしたような顔をしています。


「剣と盾と。後はやはり仲間、か。サポートメンバーを。そうだ、お前。お前が来い」


唐突に彼は、ショウくんを振り返り指差してきました。


「は? オレ?」


ショウくんは突然のことに呆気にとられ、自分を指差しています。


「そうだ。お前からもオレの力と同じような力を感じる。これが魔力というものかどうかはわからないが、お前、かなりの力の持ち主だろう」

「いや、行かねーし? オレ仕事あるもん。アンタじゃなくてリサを守るのがオレの至上命題だからね。お生憎様」


あっさりと断りを入れるショウくん。しかし、


「ワシからも頼む。行ってはくれまいか?」


王様まで懇願してきてますよ。私はハラハラしながら彼とショウくんを見守っていることしかできません。


「オレは誰からも拘束されないし、命令もされませんから、行かないというものは行かないんですよ。そもそもこの人一人の力だけでも大丈夫だと思いますし。そういうことで、じゃ、リサ、帰ろう」


肩をすくめて飄々と言い切ったショウくんは、また私の肩を抱き御前から辞去しようとしました。


が。


「待て」


という、低い声に引き留められました。


「何? まだ何かあるの?」

「どうしても行かないというなら……」


という声が聞こえたと思ったら、


「?!」


私の身体が不意に、何か目に見えないものに縛られたような感じがしました。あれれ??

そして体が浮いたかと思うと、次の瞬間にはフォーマルハルトさんに抱えられてしまっていました!


「はへ?!」

「リサ!!」


ショウくんが手に拳を握り、歯を食いしばってこちらを睨んでいます。正確に言うと私を抱えているフォーマルハルトさんをですが。私は呪縛の魔法か何かをかけられているのでしょう、身動きが取れません。


「この娘はお前のアキレス腱とみた。この娘を無事に帰してほしくば、魔王退治の一行に加われ」

「って、私、人質ぃ?!」

「卑怯な!」

「では力づくで奪い返すか?」


相変わらずニヒルな笑みを浮かべているフォーマルハルトさん。

ショウくん、今めっちゃ怒ってますよ! 一撃必殺の攻撃魔法が繰り出されてもおかしくない状況なんですが、あれが繰り出されたらこのお城はひとたまりもないでしょうね。というか、フォーマルハルトさんに抱えられてる私も消えちゃうでしょう。

む~。ピンチです。


「アンタの魔力や実力はオレと変わりない。そんな力同士がここでぶつかったら共倒れは必至。そうすると魔王退治どころかむしろ逆に侵略されてしまう」


グッと怒りをこらえて、ショウくんが冷静に状況を判断しています。さすがはショウくん! 理系だけあります!←関係ある?!

握り込む指の関節がさらに白くなってます。


「そうだな。力だけでなく頭脳も持ち合わせているのか。素晴らしいな」

「褒めてもらってもうれしかねーよ。……わーったよ。行くよ。行きゃーいいんだろ」

「そうだ」

「行ったらリサ、返せよ!」

「魔王退治の暁には、な」

「くっそ~。人質なんかとりやがって!! それが勇者のやることかよ!」

「何とでも」


しれっと答えるフォーマルハルトさんですが、ワタシ的にはショウくんの意見に大いに賛成です!! 


私の眼には、フォーマルハルトさんの方が魔王に見えますよ!!


今日もありがとうございました(^^)


なんかショウくん、いつも怒ってますねぇ(笑)

本来は優しいお兄さんなんですが ( ̄▽ ̄;)

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